第24話 ヨルムンガンド ☆挿絵あり
「仕方ない、お前が話し辛いのなら俺が話そう。繋げ。」
「ハッ!しかしパスが通っているのは私と魔王様だけなので私を介してと言う事になりますがよろしいでしょうか?」
「それなら結局お前が話してるのと変わりなくないか?」
「ハッ!その通りなのですが主様の言葉を伝える事に注力いたしますので何卒!」
「やれやれ、分かったよ。繋げ。」
「ハッ!」
暫しの沈黙。
「魔王様、お久しぶりでございます!アスモデウスでございます。」
「おお、アスか元気しとったか?」
魔王もアスモデウスの事をアスと呼んでいるのか。女性の声だな。
「はい、私も配下の者も、あっ!」
「ん?どしたんじゃ?」
「いっ、いえ!何でもございません。配下の者たちも元気でやっております。」
嘘は良くないぞアス。そいつらもういないじゃないか。まあ、消したのは俺だが。
「そうかーそれなら良いんじゃ。して、お主から呼ばれるのは初めてじゃが何かあったのか?」
「はい、実は喫緊にご相談したい案件がございまして・・・。」
「なんじゃ、ヌシが言葉を濁すなど珍しいのう。よいよい。言うてみよ。」
「はい、実はワルプルギスの夜を開いていただきたいのです。なるべく早急に出来る事なら、ひ、一月以内に。」
「駄目じゃ。まだ早いわ。アス、声が震えているぞ?どうした?ワルプルギスを開いてまで相談したい事とはなんじゃ?」
話が早くて助かるな。
「はい、単刀直入に申し上げます。トーナメントを開いていただきたいのです。」
「トーナメント?8柱を決める時にやったあれか?」
「そうです!今一度の開催をお願いしたいのです。」
「なんでじゃ?理由が聞きたいのう?」
「そ、それは・・・」
「最強を決めたい。そう言え。」
「誰がディスペアで1番強いのか知りたいのです。」
「妾じゃが?」
即答したな。それほどの差があると言う事か。
「そっそれはそうなのですが!?2番目!2番目が知りたいのです!」
なんだそれ。
「メフィストではないのか?」
「は、はい!そうですね。」
駄目だこいつ。
「私のご主人様はお前より強い!言え。」
「はいい!?ちょっ!それは・・・」
「ん?どした、側に誰かいるのか?」
「いえ、た、ただの独り言です。あの、魔王様」
「なんじゃ?」
「わっ、私のご主人様はお前より、強い。」
緊張で声が裏返っているぞ。
「・・・・・・」
沈黙。
「今、何と?すまんがもう一度言うてくれんかのう?」
「私のご主人様はお前より強いと言ったのです!」
「フフフ、ハハハハハハ。アスお前の主人は妾であろう。笑わせるでないわ。」
強者の余裕だな。
「メスガキが。調子に乗るなよ?・・・言え。」
少しからかってやろう。
「メスガ・・・!?えっ!?そ、それは流石に・・・」
俺には言ったよね。軽く殺気。
「はうっ!?はっ!しっ、しかし(まだ根に持ってんのか・・・)」
「・・・アスよ。もう良い。近くにその主人とやらがいるのであろう?パスを繋ぐからソイツに触れよ。」
おっ、本当に話が早いな。
憔悴したアスが俺に触れる。
「ヌシがアスの言っていた主人か?」
「ああ、そうだ。悪いな、下僕をお前から奪う形になってしまって。」
「別に構わんよ、そんなポンコツ。」
「ポン!?・・・」
アスがショックを受けている。
「俺はアル・ディライト。人間だ。今ダンジョン攻略をしていてな、アスから面白い事を聞いて連絡したわけだ。」
「ワルプルギスで8柱を煽ってトーナメントまで持っていく算段のようじゃが無駄じゃぞ。」
バレてるか。察し良すぎだろ。
「強い奴と戦いたければ攻略を続ければ良いではないか。面倒なやつじゃの。」
「ならお前が俺と戦ってくれないか?死ぬ程退屈なんだ。」
「いやいやいや普通に話しているが妾ラスボスじゃぞ?戦えるわけなかろう。」
「話しの分かる奴だと思ったんだがなあ。仕方ない・・・。」
「何を考えておる?」
不穏な空気を感じたようだ。
「この世界をぶっ潰す。今までセーブしていたがもうどうでもいい。破壊の限りを尽くしてやる。根絶やしだ。ふふふ」
魔力を解放し殺気を漲らせる。
アスは岩陰で震えている。
「まるで魔王じゃな。気が狂っているのか?」
「そうかもな。で、どうする?俺は本気だぞ。」
「はぁ、分かった分かったテストしてやるわ。今から側近向かわせるからそいつとヤりあって勝てたら考えてやる。」
この余裕、絶対に俺が勝てないと思っているな。面白い。
しばらくすると空間が歪み中から巨大な竜が現れた。
名前 ヨルムンガンド
種族 古代竜
レベル 測定不能
魔王の側近。
相変わらず役に立たない鑑定スキルだ。
「おい!てめえか。魔王様に喧嘩ふっかけた奴ってえのはよう!」
啖呵を切って出てきた龍を観察する。
魔力量はアスと変わらないが第6感が警鐘を鳴らしている。こいつはヤバそうだ。
「何笑ってやがるサキュバス風情がよう!」
サキュバス?あぁ俺の事か。そういやコスプレしてたんだった。
気分転換がてら
異世界の書物で読んだ【こすぷれ】・・・他者の格好を模倣する。をしているのだ。
名前 アル・ディライト
装備 悪魔の角、ゴスロリドレス、悪魔の尻尾、黒のブーツ
「うるさいぞ、トカゲ。早くヤりあおうぜ。」
すると巨体はみるみる縮み普通の人間サイズになった。
赤髪短髪の目付きの鋭い男前が目の前に降りてくる。
俺を舐めるように見た後、
「俺が勝ったらお前は俺の物な。」
「はぁ?」
「生意気そうなツラが気に入った。わからせてやる。」
何言ってんだコイツ。
息が荒いんだが、別の意味で怖い。
「おい!アス結界を貼れ。最大級のやつだ。」
ヨルムンガンドが叫ぶ。
「はっ!はいいい!」
完全に小間使いだな。不憫なやつ。
アスが結界を張ってる間に奴が話しかけて来た。
「お前そんなヒラヒラドレスで戦えるのか?」
「心配無用だ。衣装にも魔力を通してあるからな。破れたりはしないぞ?」
チッと舌打ちが聞こえた。
「まぁ勝って堂々と脱がすから良いんだけどな。」
「さっきの話だけど。アタシが勝ったらどうすんの?」
服に合わせ口調を変えてみる。
「好きにしていいぜ。殺すなり奴隷にするなりな。」
凄い自信だ。
「けっ、結界張り終わりましたあ!」アスが叫び逃げて行った。
「さあ、始めようか。たっぷりわからせてやる。」
「・・・お手柔らかに。」
こうしてディスペア史に残る激闘が始まったのである。
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