第23話 トーナメント



アスモデウスを従え、と言うかアスモデウスに乗り2層の荒野を疾走する。もちろん近付く魔物はいない。

何の障害もなくボスフロアへ辿り着く。

フロアボスのケルベロス(3つの頭を持つ犬。)は俺とアスモデウスを見るなり戦意喪失。

秒で寝転がり腹を見せ服従のポーズを決める。

こんな攻略してたらまたテレサが癇癪を起こすぞと思い聞いてみると、


『アンタみたいな異常者に常識を当てはめようとしたワタシが馬鹿だったわ。もう好きにして良いわよ。』


だそうだ。釈然としない部分もあるが良しとしよう。


そんか感じでサクサク進む。

だがすぐ飽きてしまった。

何もしていないからな。


魂を揺さぶる闘争がしたい。


つまらん。今何層目かも分からない。

灼熱の溶岩エリアに入る。

暑さを感じないのは魔装のせいか?

魔装を切ってみる。

変わらない。これはスキル自己回復によるものだろう。

どの程度までダメージを受けたら死ぬのだろうか。気になるが試す術がない。


「アス(長いからこう呼んでいる。)、お前このダンジョンで上から数えて何番目に強いんだ。」

真下で疾走しているアスに尋ねる。


「ハッ!何番めかは分かりかねますが恥ずかしながら上位に入るのではないかと。」


「他の柱と戦った事は?」

「ありません。トーナメントで上位8人が選ばれただけなので。」


「トーナメント!そうか!その手があったか!詳しく聞かせろ!」


「ハッ!力が無ければ魔物を統べることは出来ません。強者を決める為トーナメントが行なわれました。」


アスの話によると8柱はダンジョン内の魔物を管理する為に作られたらしい。勢力争いなどの揉め事を治める事が仕事のようだ。


「しかしトーナメントか。敗れたモノの中にはアスよりも強い奴がいたかもしれんな。」

ニヤリと笑い呟く。


「ハッ!その可能性は否定できません!」

項垂れてしまう。


「嫌味で言ったわけじゃないから落ちこむな。実際ここまでの旅でお前を超える奴はいなかったしな。」


「ハッ!恐縮であります!」

尻尾をブンブン振っている。嬉しそうだ。


「おーい!テレサ!聞いてたんだろ!おい!テレサ!」


『あのねぇワタシはアンタの従者じゃないのよ!気安く呼び捨てしないで!』


「トーナメントやるぞ。全ての魔物に呼び掛けて参加者を募れ。」


『はぁ!?そんなの出来る訳ないでしょ!馬鹿なの?戦いたいなら先に進みなさいよ!』


もっともな意見だが否定する。

「進めども進めども強者が現れなくてな。退屈なんだ。それに何毎にも遊びは必要だぞ?8柱とやらも退屈でたまらないだろう。ガス抜きだよガス抜き。」


『そんな事ないわ。割りと楽しそうにやってるわよ?そいつだって城の中で毎日のように酒宴したり弱い魔物いじめたりして楽しそうだったわよ?』


「そうなのか?」


「いえ!あっ、あれは酒宴は部下との親睦を深めるためですし、弱いものいじめなんてとんでもない!仲良くやるよう諭していただけです!決して楽しんでいたわけではございません!」


「だそうだが?」


『はぁ。すっかり手なづけられてるわね。人間の顔色を伺う魔神てどうなのかしら。』


「クッ!」


「お前さっき俺のやりたい様にしていいと言ったよな?もう忘れたのか?」


『こんな事言い出すとは思わなかったのよ!想定外ってレベルじゃないわよ!』


「安心しろ。俺が勝っても報酬は要らないしまたここに戻してくれて構わない。」


『それ交渉してるつもり?頭痛くなって来たんですけど。絶望の名を冠した迷宮を楽しもうなんて異常よ!トーナメントは却下よ却下。はい、この話はお終い。ワタシ忙しいんだからつまらない事で呼ばないで。じゃあね。』

と言って話を切りやがった。


「まぁそうなるだろうな。想定内だ。おい、アス!」


「ハッ!」


「お前他の魔神と話したりする事はあるのか?」


「個別にはあまり。魔王様の開くワルプルギスの夜に8柱が集まるのでその時くらいです」


「魔王がいるのか!!」


「ハッ!我らの支配者として君臨しておられます!」


「いいじゃないか!いいじゃないか!アス!次のワルプルギスはいつだ?」


「前回が400年程前だったので次は600年後かと。」


「長い!待てん!今すぐ魔王に呼び掛け1週間以内に集合させろ!」

無茶振りする。


「ちょっ!?主様のお気持ちはわかりますが1週間と言うのは厳しいかと・・・。」


「流石に無理か?よし1ヶ月待つ!話をまとめろ。」


「き、恐縮なのですが私ごときの話では聞き入れてもらえるかどうか。」


「ああ。そうか。よし、ではこう言え。1ヶ月以内にワルプルギスを開け。さもないと私の飼い主がお前を潰すぞ!とな。どうだなかなかの煽りであろう。」


「!!いっいえ!私より主様におっしゃっていただいた方がスムーズに事が進むのではないかと愚考いたします!」


「えっやだよ。俺人見知りするタイプだし。」


「!!?はあ?魔神相手に凄んでおいて人見知りだと?・・・あっ!すみません!つい・・・。」

目を逸らす魔神。


「へえ、そんな風に思われてたんだ。悲しいなあ。」


「はっハハハ!ジョークでございます!」


「笑えねえよ?」


「!!すませんしたあ!」


しかし魔王がいるとはな。盛り上がって来たではないか。悪い顔をする俺を見てアスが小さな悲鳴をあげた。

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