第6話 帰ろう

「オラアアアアッ!!」


バッカスの斬撃がスケルトンの体を粉砕する。

攻略から5日目の朝。僕らは2層目にいる。

僕の持つ魔石を入れたバッグもパンパン、かと言うとそうでもない。

2層目へ向かうゲートの隣に換金所があり魔石を全部売り払ったからね。

2層目の攻略も順調に進んでいる。

今は周りの安全を確保して休憩しているところだ。


「おい、ハッス。レベル見たか?3つも上がってたぜ。」

「俺もだよ。前より索敵範囲の広がりを感じる。」


そうだ。これだけ魔物を倒したんだ。

きっと僕のレベルも上がっているんじゃないかな。

期待に胸を膨らませ、

ステータス!オープン!


アル・ディライト

Lv3

HP16 MP0

加護 底辺のゴミ

装備品 破れた上着、穴の空いたパンツ、ボロボロの革靴、錆びた短剣


・・・

へ?えっ待って。

変わって無い?むしろ入る前の方が高かったんじゃ・・・。


「ねぇ。レイナ。ダンジョン入ってからステータス上がった?」

焚き火に薪をくべているレイナに小声で聞いてみる。


「んー。上がってたよ。何か新しいスキルも覚えてたし。」


「へ、へえー、そっかー。良かったね。へー。」

「アル?」

「ちょっと薪集めてくる。」


ゴッ!

木に拳を打ち付ける。


「おかしいだろ。何で僕だけ変わらない?戦ってないから?」

いやパーティーを組んでいる限り経験値は入って来るはずだ!貢献度で違いはあるはずだけど0なんて事は無いはず。レイナだって戦闘は最初の頃だけだし。僕と何が違う。


「加護か。」


名前の通りいくら頑張っても成長出来ないのか。

そんな・・・。


膝をつき項垂れる。


何で僕なんだ。こんなんじゃ冒険者になるなんて夢のまた夢。何で!何で!


「うわああああああ!」

叫び、地面を殴った。


しばらくそうしていると雨が降ってきた。

迷宮内なのに凄いな、地上にいるのと何も変わらない。

はぁ、こんな事してても時間の無駄だ。 


「帰ろう。」


立ち上がりキャンプへ向かい歩き出す。この迷宮攻略が終わったら学園を去って村へ戻ろう。お爺ちゃん何て言うかな。


その時上空から地上に向かって眩しく光る赤い柱が木々の隙間から見えた。

光が消えた後


ドオオオオオオン!


と言う爆発音がして大地が揺れる。

キャンプ地の方角から火が上がっている!?


僕は全力で駆け出した。

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