初級チュートリアル その3



“ではこれから初級チュートリアルのその3を行いたいと思います。準備やお時間のほうは大丈夫でしょうか?”





 YES。






“今回は第四種エレメントである「聖光」と「暗黒」についてです。第三種エレメントのカードよりも少し手に入りにくくなっています。分かりますでしょうか?”







 YES。







“第四種エレメントである「聖光」は、光であるlightと、法律であるlawを指します。lightは狭義には電磁波のうち波長が380から760nmのもの、つまり可視光を指します。基本的性質としては均質な媒質の内部では直進し、異なる媒質の境界面で反射あるいは屈折、光が透明な媒質の境界面に当たったとき、その一部は境界面で反射するが、残りは媒質の内部を通過する現象、二つの光波が重なり合うことで光が強くなったり弱くなったりする干渉・回折、自然光と偏光、電場および磁場の振動方向が規則的な光の事を指します。無規則に振動している光は、非偏光あるいは自然光と呼びます。分かりますでしょうか?”






 光って思ってたよりも複雑。でもまあYES。






“lawは文字通り法律で、国家や連邦国家の構成単位の議会の議決を経て、statute、あるいは、統治者ないし国家により制定される、主に国民の自由と財産を制限する実定法規範を指します。詰まるとこruleです。分かりますでしょうか?”







“このゲームのルールはlawによって作られています。ルールなしではゲームはできませんからね?”





 まあ、そりゃそうかとYES。





“lightからは天国であるheaven、そして死、つまりdeathや大衆的であるpopが派生・分岐されます。至上の愛であるagapeも指します。神や天使などがいて、清浄とされる天上の理想の世界、キリスト教では信者の霊魂が永久の祝福を受ける場所、転じてそこで暮らす者にとって、理想的な世界のこと、もしくは、かくあるべきだとする究極の神の創造理想と定義できる世界を指します。何にわずらわされることもない、快適な環境もそうですね。『スペル・バインダー』では神様はいないという基本概念がありますが、まあそれはそれ、宗教がないと人は生きていけません。分かりますでしょうか?”







 ウチは仏教だったなとYES。







“詳しい事は専門チュートリアルを参照してください。でも知っていますか? 神様など概念でしかありません。宗教戦争は悲しいですよね?”





 YES。




“ちなみに楽園、paradiseも含まれています。分かりましたでしょうか?”





 YES。





“次にdeathですが命がなくなること、生命がなくなること、生命が存在しない状態を指します。何をもって人の死とするのか、その判定や定義は文化、時代、分野などにより様々な形があります。生物が死んでいくのは悲しいですね。あなたもそう思いますでしょう?”





 それはそうだなとYES。





“次にpopですが、大衆向きであるさま、また、時代に合ってしゃれているさまを指します。artと組み合わせるとポップアート、ポップなファッション、ポップな感覚の色彩、ポップな映像となります。いわゆる萌え絵もこれで作る事ができます。人間に猫耳をつけるなんて残虐ですが可愛いですよね?”





 猫耳っ娘は確かに可愛いけど残虐という意味がよくわからない。けどYES。





“次にagapeですが、キリスト教における神学概念で、神の人間に対する「愛」を表します。神は無限の愛において人間を愛しているのであり、神が人間を愛することで、神は何かの利益を得る訳ではないので、「無償の愛」とされます。また、それは不変の愛なので、旧約聖書には、神の「不朽の愛」と出ています。新約聖書では、キリストの十字架上での死において顕された愛として知られています。またキリスト教においては、神が人間をアガペーの愛において愛するように、人間同士は、互いに愛し合うことが望ましいとされており、キリスト教徒のあいだでの相互の愛もまた、広い意味でagapeの愛です。4分間ほどのお時間は大丈夫でしょうか?”





 暇だったのでYES。





“ではこちらをお聴きください。岡崎律子の「for フルーツバスケット」という曲です。”





 曲が流れてくる。優しい感じの曲だった。そして聴き終わってから涙が出た。YES。




“いかがだったでしょうか。大きく分けてlight、law、小さく分けてheaven、death、pop、paradise、agape、これらが「聖光」となります。分かりましたでしょうか?”




 YES。





“次に「暗黒」ですが混沌、つまりchaosと、暗陰であるdark、生命であるlife、地獄であるhell、popの反対であるclassic、上品な美しさであるeleganceを指します。あ、「暗黒」にlifeが含まれるのは変と思いがちですね?”




 そういえばなんでなんじゃろとYES。




“lifeは一般に生物及び生命体が生きていくための根源的な力を指します。文脈によって様々な定義がある語でありますが、基本的には「生きているもの」と「死んでいるもの」、あるいは物質と生物を区別する特徴・属性などを指す語、あるいは抽象概念です。伝統的に、「生き物が生きた状態」そのものを生命と呼んだり、生きた状態は目に見えない何かが宿っている状態であるとして、その宿っているものを「生命」「命」「魂」などと呼んでおり、現在でも広く日常的にそのような用法で使われて”います。言ってみれば異常状態であるbugです。分かりますでしょうか?”




 生きている事がバグ? よくわからないのでNO。




“バグだらけなのに走り続けるプログラムは何か? それは生命です。死んでいることが本来で、生きているというのは機械が故障しているような状態の事です。受け売りな言葉ですが。また癒しもlifeに入ります。分かりますでしょうか?”





 なんとなく分かるのでYES。





“話をchaosに戻しますが、区別が立たず物事が入り混じっている状態、もしくは、物事が無秩序で、まとまっていない状態をchaosと呼びます。空っぽの状態も含まれます。力学系の一部に見られる、数的誤差により予測できないとされている複雑な様子を示す現象を扱う理論も指します。ここで言う予測できないとは、決してランダムということではありません。その振る舞いは決定論的法則に従うものの、積分法による解が得られないため、その未来、および過去の振る舞いを知るには数値解析を用いざるを得ません。しかし、初期値鋭敏性ゆえに、ある時点における無限の精度の情報が必要であるうえ、数値解析の過程での誤差によっても、得られる値と真の値とのずれが増幅されます。そのため予測が事実上不可能という意味です。よくわかりませんね。でも、そのわからないという部分がchaosなのかもしれません。分かりますでしょうか?”




 本当によくわからない。でもYES。





“次にdarkですが、単純に光の無い状態のことを指します。思慮分別が無いこと、道徳的でない考え方や行いもこの語で表します。神話や宗教の多くで、闇と光を、死と生、悪と善の対立と見なしますが『スペル・バインダー』ではそうは定義しておりません。夜、暗くなる事で人は癒しや眠りに付く事ができます。また夜はポエムを書く時間ですね。ポエムを書いた事はありますでしょうか?”





 ドキッとした。あるわー。めっちゃあるわー。黒歴史だわーとYES。





“暗闇は本来は優しいものであると『スペル・バインダー』は定義します。分かりましたでしょうか?”




 YES。





“闇と光の対照は、自然的な対照を超え、時間の再生、死と再生の象徴と深い関係があり、重要なテーマを提起しています。世界の諸民族のほとんどの神話が光と闇の起源を扱っています。何だか暗闇が悪いものと思いがちですね。でも、そうではないと思います。そうでしょう?”





 言ってみればそうだねとYES。





“次にhellですが地獄を指します。宗教的死生観において、複数の霊界、つまり死後の世界のうち、悪行を為した者の霊魂が死後に送られ罰を受けるとされる世界とされます。厳しい責め苦を受けるとされます。素朴な世界観では地面のはるか下に位置することが多くなっています。悪魔たちがいる世界もhellですね。本当は気のいい悪魔たちなのですが。ちなみに『スペル・バインダー』ではカードの組み合わせで悪魔たちを召喚できます。分かりますでしょうか?”





 YES。




“これが第四種エレメントの説明でした。これで初級チュートリアルその3は終わります。お疲れさまでした。”




 さっき音楽を聴いたからか、まだ目が潤んでいる。画面がホームへと変わる。



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