初級チュートリアル その4





“またお会いしましたね。ではこれから初級チュートリアルのその4を行いたいと思います。準備やお時間のほうは大丈夫でしょうか?”



YES。



“今回は第五種エレメントである「幻影」と「死霊」についてです。カードパックに数枚入っているカードです分かりますでしょうか?”




 YES。




“第四種エレメントである「幻影」は、大きく分けて”夢想、つまりdreamと、具現、realizationで構成されています。deramは睡眠中あたかも現実の経験であるかのように感じる、一連の観念や心像のことと、感覚の錯誤によって、実際には存在しないのに、存在するかのように見えるもの。つまり幻です。まるで現実に存在しているかのように、心の中に描き出されるもの。遠い過去の情景や、願望から作り出される将来の像の事も指します。さて、このARグラスが見せる映像も幻影の一つと言って良いかもしれません。分かりますでしょうか?”





 そういやそうだなとYES。




“私たちが夜見る夢、それは睡眠中の脳活動にはレム睡眠とノンレム睡眠がありますが、1957年に夢は主にレム睡眠の状態にみられる現象であることが明らかになりました。視覚像として現れることが多いものの、聴覚・触覚・味覚・運動感覚などを伴うこともあります。通常、睡眠中はそれが夢だとは意識しておらず、目覚めた後に自分が感じていたことが夢だったと意識されるようになっています。分かりますでしょうか?”




 夢って不思議だよなあとYES。




“夢とは何なのかということについては、古代からある信仰者の理解、20世紀の心理学者の理解、現代の神経生理学者の理解、それぞれ大きく異なっているので、それらを区別しつつ解説します。古来、未開人や古代人の間には、睡眠中に肉体から抜け出した魂が実際に経験したことがらが夢としてあらわれるのだ、という考え方は広く存在していました。また、夢は神や悪魔といった超自然的存在からのお告げである、という考え方は世界中に見られます。旧約聖書でも、神のお告げとしての夢は豊富に登場します。中世の神学者トマス・アクィナスは夢の原因には精神的原因、肉体的原因、外界の影響、神の啓示の4つがある、としました。分かりますでしょうか?”




 ん、んん? と思ってNO。




“睡眠中の脳は、その人が今まで見聞きした情報を、整理しています。 脳の中にはライブラリーがあって、その人の記憶を、家族、友達、学生時代、恋愛などのジャンル別に整理されます。そのジャンル分けされたライブラリーに貯蔵された記憶を引っ張り出したりまとめたりしますが、その過程を脳の中で再生しているのが夢と言えます。現時点の科学技術では、例えば夢は自分だけが見ることのできる、個人的なドキュメンタリー映画かもしれません。自分が見聞きしたこと、体験したことが断片的に出てくるという事です。子供の頃、絵本や漫画、テレビなどに影響された夢を見たことはありませんか? 実際に体験していないことでも映像で観ていたり、想像したことがあったりすると、それらを組み合わせたものが夢になることがあります。分かりますでしょうか?”




 ん-、そういえばそうだなとYES。





“そういった夢を見て、自分が体験していないこと、現実では起こりえないことが夢に出てきた、と思うものです。大人になるとより現実的な夢を見るようになります。そういった経験はありますでしょうか?”




 そういえばあるなーとYES。




“とくに昔の人は「夢のお告げ」という言葉を使って夢を利用しますが、そうは言っても未来は見えない物です。しかし、心の中で反芻して想像している未来が夢に出てくる事があります。そのような場合、夢が現実になった時、人は夢が本当になった、という印象を受け、よく覚えているものです。分かりますでしょうか?”




 ん-、と思いながらYES。




“これ以上の事は専門チュートリアルを用意しています。そちらを参照してください。つまりはストレス、心理的、身体的な状態が関係しているという事です。分かりますでしょうか?”




 よくは分からないがYES。




“次に幻視あるいは幻覚です。幻視あるいは幻覚とは「対象なき知覚」のことです。つまり対象は存在しないが、はっきりとした感覚が存在するということです。幻覚には、幻視・幻聴・幻触・幻臭・体感幻覚・幻肢などがあります。妄想や神経症にも関わってきますが見えるものはその人によって様々に異なりますが、小動物や虫、人物が一般的で、多くの場合動きを伴います。人が見える場合、相手を特定することもできる場合もあれば、「顔がはっきりしない」「ぼやけけている」「仮面をかぶっているよう」などと表現されることもあります。色彩もあることやないこともあり、きっかけなく突然現れ、一瞬のことも、数分あるいは数十分と続くことが一般的で、長時間持続していることはありません。分かりますでしょうか?”




 ちょっと怖い話になってきたぞとYES。




“次に白昼夢です。白昼夢は、日中、目覚めている状態で、現実で起きているかのような空想や想像を夢のように映像として見る非現実的な体験、または、そのような非現実的な幻想にふけっている状態を表す言葉です。フラッシュバックと混同される場合がありますが、白昼夢は実際には起こっていない空想や妄想であるのに対して、フラッシュバックは過去に体験した出来事を思い出す点で異なります。これも『スペル・バインダー』で実現可能です。詳しくは専門チュートリアルで説明します。分かりましたでしょうか?”




 夢って複雑だなと思ってYES。




“では夢のある話をしましょう。子供が抱く将来の夢です。子供、特に幼児などは荒唐無稽な将来の夢を持つものです。「周りは夢に向かって頑張っているのに、自分には夢が見つからない」と困っている子供をお持ちの保護者は多いものです。将来の夢はなくても悩む必要はないものですが、将来の夢が決まっていないことで先生や周りの大人に聞かれたときに答えられず、落ち込んでしまうお子さまもいるかもしれません。夢の語源は「寝目」で、寝るときに見える幻のことです。そこから転じて、「睡眠中に見てしまうような儚い願望」を指すようになりました。また、夢が「将来の夢」という扱われ方をしだしたのは近代になってからで、この場合は「将来実現させたいと心のなかで思っている願い」のことを指します。夢の本来の意味は「夢にまで見てしまうような潜在的な願望」のことなので、夢は本来、自然発生するものです。なぜ子供が進学する時など多くの場面で将来の夢を求められるのでしょうか?”




 そういや小学生の時に将来の夢を書けという作文があったな、とYES。




“つまりは社会に適応させるため、もしくは適応できるかチェックするためと言えます。あるいは進路に方向性を持たせるためです。もちろん、夢だからといって必ず仕事に結びつくわけではありませんが、進路を決める際の参考にはなるでしょう。そして重要なのが多くの場合夢を持っているほうが将来に希望を持って生きられると考えられているからです。夢に向かって進んでいくことで豊かな人生を歩めると考え、夢を持つよう求める大人は多いと言えます。分かりますでしょうか?”




 そりゃそうだよね、とYES。




“ここで問います。あなたの夢はなんですか?”




 え? 今の将来の夢? それとも子供の時の夢?




“今、夢について考えましたね? それでいいのです。現実的に理想の形で実現されればいいのですが。夢というものは人間の欲求が形となったものなので、欲求を理解することで夢についても理解できるようになります。そのため、ここでは人間の欲求が理論化された「マズローの欲求5段階説」を参考に、人の夢について簡単に考えていきましょう。分かりますでしょうか?”




 ちょっと興味がある。NO。




“マズローの欲求5段階説のうち、下から1番目と2番目の欲求は「生理的欲求」と「安全の欲求」です。これらは、人間が安全に生きていくために必要な、最も基本的な欲求を指します。人間の3大欲求である「食欲・睡眠欲・性欲」のほか、呼吸や水の摂取など、生きていくうえで最低限必要となる欲求です。3番目は「社会的欲求」はピラミッドの3層目の欲求で、家族や友人、会社など、人や社会的な集団に受け入れられたいという欲求です。人間は、安心で安全な環境に身を置いていたとしても、話し相手や自分を受け入れてくれる場所がなければ満足に活動できません。4番目は単純に他人や社会に受け入れられるだけでなく、そのなかで高く評価され、尊敬されたいという欲求です。良い意味でも悪い意味でもです。5番目は「自己実現欲求」、自分らしい生き方を求める欲求です。多くの人は理想的な自分のイメージを持っており、自己実現欲求を満たすためにそのイメージに近づいていきたいと感じます。 自分の人生観に基づいて生じる欲求なので、本来の意味の「将来の夢」に最も近いといえるでしょう。分かりますでしょうか?”




 わかりやすい説明だなあとYES。




“とどのつまり、私たちの言いたい事はこうです。子供の夢を守りましょう。この一言です。分かりますでしょうか?”




 そうだね。それが大事だとYES。




“次に具現、realizationについて話します。単純に言えば物を具現化するカードです。アイデアや構想などを、実際の商品や製品やサービスなど具体的な形のあるものにすることを指します。ビジネスシーンで良く使われます。便利な言葉ですよね?”




 まあ、それはそうか。YES。




“企画や計画などを発表した後、目標の達成に向けて努力する先にあるのが「具現化」であり、ビジネスシーンではあらゆる「具現化」へのチャレンジが活発に行われています。飛躍すると国際連合は世界平和への理念と構想が具現化された証でもあります。分かりますでしょうか?”




 へえーと思ってYES。




“しかし、所詮は幻影なので耐久力はありません。幻ですから。何か物がぶつかって壊れたり、風で映像が無くなる事もあります。分かりますでしょうか?”




しっかりしてんなあ。YES。




“「具体化」は抽象的なものごとを実際に形として表すことを意味します。基本的には「具現化」と同じですが「具体化」は実際に手に取り触ることができることを指す場合が多いため、その点で異なると言えます。「具象化」の意味は姿のある具体的な形を表すことです。「具象」の意味が「はっきりとした姿を備える」であるため、「具象化」は「わかりやすくはっきり示すこと」という意味があります。分かりますでしょうか?”




 はっきりとはわからないが、まあYES。



“これらについても専門チュートリアルを用意しております。参考にしてください。次に「死霊」について話します。よろしいでしょうか?”




YES。




“「死霊」というと怖い、ホラーな印象を受けます。それはそうですが、『スペル・バインダー』ではそれを受け入れつつ違った解釈をしています。還魂、つまりsoulと、呪縁、つまりcurseです。”




 ほうほう。YES。




“soulとは生きものの体の中に宿って、心の働きをつかさどると考えられるもの。古来、肉体を離れても存在し、不滅のものと信じられてきました。霊魂、たま、とも言います。また、心の活力、精神、気力を指し、何かをそれなしではそのものがありえないくらい大事なものも指します。思慮、分別もsoulに入ります。肉体から離れたり、死後も存続することが可能と考えられ、体とは別にそれだけで一つの実体をもつとされる、非物質的な存在。人間が生きている間はその体内にあって、生命や精神の原動力となっている存在、個人の肉体や精神をつかさどる人格的・非物質的な存在、感覚による認識を超えた永遠の存在と考えられています。分かりますでしょうか?”




 ん? んん? と思ってNO。




“「霊」と「魂」、どちらもsoulで、一般には、個人の肉体及び精神活動をつかさどる人格的な実在で、五感的感覚による認識を超えた永遠不滅の存在を意味しています。宗教や文化における説明は専門チュートリアルを参照してください。簡単に言えば多くの宗教においては、人は死んでも意識あるいはそれに近いものは霊魂となって残ると説きます。霊魂は生前暮らしていた土地に鎮まるとも、黄泉のような霊魂の住まう世界に旅立つともいいます。霊魂の存在は、しばしば道徳・倫理などと結びつけて語られる事が多いです。分かりますでしょうか?”





 ふんふん、にゃるほど。YES。





“詳しくは省略しますが、『スペル・バインダー』での主人公、つまりあなたの姿はただの人間です。ですから強い魔法を受けた時は一発で死、ゲームエンドになります。”




 そうなの? YES。




“よって、soulを使い、霊的に防御する必要があります。これを英霊召喚といいます。召喚獣の一種と考えてください。分かりますでしょうか?”




 まあ、YES。




“つまりプレイヤー自身が戦闘に参加する事を意味します。また英霊召喚によって各カードの一種を強化する事ができます。分かりますでしょうか?”




 YES。




“次に呪縁、curseですが、単に呪いだけではありません。良い意味でも使われます。成功に導くためのおまじないや運命の赤い糸ですね。あなたの小指には赤い糸は見えますでしょうか?”




ちょっと悔しいと思ってNO。




“残念ですね。次はいい人が見つかるでしょう。話を戻しますが悪い意味でのcurseは、人または霊が、物理的手段によらず精神的あるいは霊的な手段で、悪意をもって他の人や社会全般に対し災厄や不幸をもたらせしめようとする行為をいいます。呪文、祈祷、その他の言語的、呪術的または宗教的な行為によって行われるとされることが多いです。具体的には宗教・文化的背景によって様々な違いがあり、神・悪魔その他の強力な霊の力を借りてなされると考えられたり、あるいは自己の霊能力によると考えられたりします。分かりますでしょうか?”




 YES。




“現代日本の法体系は超常現象を前提としていないため、呪詛それ自体は不能犯であり、処罰できません。ただし、上記の丑の刻参りにも使われてきた藁人形を見せつけるなどして、相手に呪っていることを知らせて、脅迫罪やストーカー行為等の規制等に関する法律違反の容疑で摘発された事例があります。”




 呪いって怖いな。YES。




“それを踏まえて、伝承や古典文学を含めて、呪いは現代に至るまで、怪談や怪奇・ホラー系創作のテーマや、超常現象に見せかけたミステリーのトリックの材料などとして、繰り返し登場し続けています。結構重要なものなのですね。呪いに関するミステリーは読んだ事はありますか?”




 趣味じゃないのでNO。




“実際、触れてみると面白いものですよ。悪い意味でのcurseはここで終了です。良い意味でのcurseに移りましょう。”




 YES。




“おまじないは正確には呪術・魔術・魔法と呼びます。総じてmagicですね。近代日本において、訳語を創出する必要があった「文化」などの概念と異なり、magic は従来の日本語の語彙で対応しうる言葉でした。人類学者ジェームズ・フレイザーは、「金枝篇」において、文化進化主義の観点から、呪術と宗教を切り分け、呪術には行為と結果の因果関係や観念の合理的体系が存在し、呪術を宗教ではなく科学の前段階として捉え、しばしば依存的態度が強い宗教に対し、因果律に基づく操作的な態度をもつ点を差異として捉えました。curseと交わるのですが類感呪術と類感呪術があります。フレイザーは進化主義的な解釈を行い、宗教は劣った呪術から進歩したものであるという解釈を行いました。一方、エミール・デュルケームはこれを批判的に継承し、本来集団的な現象である宗教的現象が個人において現れる場合、呪術という形で現れることを指摘しました。さらにマリノフフスキーは、機能主義的な立場から呪術や宗教が安心感をもたらしているいうことを指摘し、また動機をもった操作的な態度から人に禍をもたらすそうとする呪術を黒呪術、つまりblack magicといい、雨乞いや病気回復など公共の利益をもたらそうとする呪術を白呪術、つまりwhite magicと定義しました。おまじないは白呪術に入ります。しかし超自然的なものである呪術だとしても、意図的なものと非意図的なものがあるとして、エヴァンズ=プリチャードは前者を邪術、後者を妖術として区別する必要性を主張しました。分かりますでしょうか?”




 ぬいぐるみや赤い糸が白魔術だと分かっただけでもいい。YES。




“これ以上の詳しい説明は専門チュートリアルを参照してください。これが第五種エレメントの説明でした。これで初級チュートリアルその4は終わります。お疲れさまでした。”




 またしてもホーム画面。だけどちょっと違う。桜の花が舞い散っている。そして私の小指に赤い糸が結ばれていて、それははるか遠くへ伸びて行っている。はあー、幻影と死霊かあ。次はラストかな?

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