第10話 ルマール
「
役所にしろ冒険者ギルドにしろ、たらい回しが多いと思うのは俺だけであろうか。俺の
「
「では、ギルドカードを作成します。こちらのカードに、手を添えてください」
「こうか?」
「はい、大丈夫です! こちらのカードが身分証にもなります! 名前と
「そ、それは便利だな……」
相変わらずレベル1のままであることを、俺はカードを見つめ再認識する。周りから見たら、雑魚なんだよな。ステータスがわからないと、舐められやすいのは確かだ。ギルドの仕事で得た金は、ギルド銀行に預けることができる様だ。確かに持ち歩くのも面倒くさい。俺の
「
「
「珍しいことが、続くものですね。先程の方は、『勇者』って職業でしたよ」
「勇者……いるのかよっ!!」
『勇者』は加護でもあり、
「勇者は、どの街から来たんだ?」
「確か、ルマールだったような……」
同郷か……勇者になるようなやつはいただろうか。とりあえず、実家に顔をだす予定だったこともあり、俺はルマールに戻ることにした。帰りも馬車を使うか。移動呪文が使えると、楽なんだが。
冒険者ギルドを出た後、馬車乗場に向かった。州都から各地に向かう乗場は、やはり大きい。間違えない様にと、俺はルマール行きの乗場を慎重に探した。まだ、一人しか並んでいない。見た感じは、俺と同じ年齢の少年だ。旅の話し相手も欲しいところだ。俺は声をかけることにした。
「ここの乗場は、ルマール行きかな?」
「はい……」
「ありがとう……」
しまった……。会話が弾まない……。俺は会話相手を得ることを諦め、静かに馬車が来るのを待つことにした。待っている間、俺は小さな違和感に気がついた。声色、身体つき。髪型と後ろ姿で判断していたが、目の前にいる人物……女性だ。俺はハッと気がつく。
――ナンパ男と、勘違いされた!
「すまん! 同じ年齢の男と勘違いしたわけで。長旅の話し相手が欲しいと思うわけで。つまり、話しかけてしまったんだ!」
俺は必死に謝り、誤解を解こうとした。何の言葉を口にしていたのかは記憶が無い。馬車の中で気まずい空気が続くのも耐え難いが、万が一、変な噂がルマールに広がろうものなら、俺の急所がアメリアに蹴り潰されてしまう。ナンパ男のレッテルを貼られる精神的な死と、急所が破壊される物理的な死。同時に二回死ぬのはゴメンだと俺は感じてしまう。
「はぁ……」
聞いているのかいないのかが、良く分からない反応だ。活力を感じられない。逆に、俺が心配になってしまうくらいだ。
「何かあったのか?」
「……」
「金でも落としたか?」
「……」
「このチョコ食べるか?」
「しつこいですね!! こっちは今それどころじゃないんですよ!! 『勇者』なんて
「そうか、すまん……」
何だ、普通に話せるじゃないか。それに、ナンパ男と勘違いされたわけでもなさそうだ。俺は安心したせいか、笑みがこぼれていた。そうか、『勇者』になって困っているなんて可愛い悩みじゃないか。俺はどうやって『勇者』を探せばいいか、全く分からないと悩んでいるのに……。
――ん?
「おいっ! あんた、勇者なのか!!!」
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