第9話 冒険者ギルド
窓から射し込む朝日が眩しい。移動の疲れも、すっかり取れて無くなっている。俺は軽くノビをして起き上がった。朝食前の日課をやらねば。俺は床に手を付き逆立ちをする。修行といえば、逆立ち腕立て伏せ。筋肉が膨らみ、艶が増す感じがする。両手から片手へ、そして遂に到達した指一本スタイル。筋力SSは伊達じゃないな。
一通りの日課を終えて、俺は着替えを済ませる。そして、荷物をまとめて部屋を後にした。食堂で簡単に朝食を済ませ、冒険者ギルドに早めに向かっていた。
冒険者ギルドの外には、既に二十人程、列をつくって並んでいた。試験は年に三回開催される。まあ、余程のことがない限り、落ちないらしい。性格や思想に問題でもあれば、余程のことに該当するのかもしれないが。犯罪者になる可能性がある者が見つかり、除外されると聞いたことがある。無駄に力を与えない為の仕組みがあるのだろう。
「試験を受ける方は、こちらにお入りください! まずは簡単な診断試験を行います! その後、体力試験を行います! 最後に合格となられた方は、女神様からの
職員からの案内があった。俺は指示に従い、移動した。診断試験は、性格や思考を見極める内容だ。俺は当たり障りのないように、設問に対して『○』か『✕』を付けていった。『女神を心から信仰している』とか、『女神の為ならば命を捧げられる』など、理解に苦しむ設問もある。
二十分位だろうか。終了の合図が聞こえ、俺は用紙を提出した。変な解答はしていないから、問題は無いだろう。次の体力試験も余裕だな。次の会場に遅れない様にと、俺は足早に移動した。
体力試験は至って普通だった。学生の頃にやった授業の内容だな。短距離走や垂直跳び、懸垂や投擲をやらされた。最低限の体力がない者は、危険の伴う冒険者にならせたくないのだろう。少しダルいなと思った俺は、適当に課題をこなしていった。特に問題もなく、俺は試験を通過した。
「試験合格者の方は、こちらへお願いします」
特に試験に落ちた者はいなさそうだ。一度、診断試験を行なった場所に集められ、合否が発表された。番号表示なので、一目瞭然だな。抜けている番号はなさそうだ。次の場所では、一人ずつ部屋に入る様に指示された。
俺の順番になり部屋に入ると、そこには白色のフードで顔を隠し、ローブを身にまとった女性が座っていた。神官だろうか。
「女神様からの
「この中から選ぶのか?」
「進める道は、一つだけです」
俺は二枚のカードが渡され、書いてある内容を読んでいた。
「聞いてもいいか? 前衛職二つしかないんだが、これはどうやって決まっているんだ?」
「診断試験と体力試験の結果で、適性があると判断された
「そうなのか……。ここに現れた
「研鑽を積めば、
試験の使い方、おかしくないか? 前衛職二つって……。これではまるで、脳筋キャラじゃないか。こころなしか、目の前の女性が笑っているように見える。ゲームの様に、様々な
「
「分かりました。ではあちらの、祈りの間にお進みください。女神様から、あなたに力が授けられます。良き、ご加護を」
俺は扉を閉めて部屋を出た。笑い声が聞こえた気もするが、もう気にすることはやめよう。さっさと祈りの間に行こうと、俺は歩調を早めた。
祈りの間にの着くと目の前には、俺の背丈の三倍はある女神像があった。今すぐ叩き壊したい顔だ。そんな気持ちを隠し、俺は女神像の前に立ち祈りを捧げる。不思議な光が、俺を包む様な感覚。頭に声が響く。いつもとは違う、それでいて聞き覚えのある声だ。
『久しぶり! 元気かしら!』
軽い、軽すぎるだろ。俺は、頭の中で言葉を返す。
『あんた、魔王の封印はどうなったんだ?』
『君が成長したから、解除したわよ!』
『そうか……。なあ、魔王を直接倒すことはできないのか?』
『無理無理! 痛いし! そもそも私は、物理的に魔王を傷つけられないの……』
『よく分からん理屈だな……』
『それより君……脳筋……ぷっ……あははっっ!』
『おいっ! それは言うなっ!』
『まあ、仕方ないわね! ちゃんと力を授けるから! それじゃあバイバイ!』
軽いノリには心底驚く。あれで女神と言うなら、世も末だ。俺はため息をついて、祈りの間から出ていった。ステータスを確認し、俺は叫び声を上げていた。
「いきなりあがるんかっ!!」
ギルドの待合室で、視線を集めるのに時間はかからなかった。
◇◇◇◇◇◇
名前:レオン・トラジール
レベル:1
ステータス:体力 S(45→80/100)
筋力 SS(56→100/100)
敏捷 C(40/100)
魔力 D(31/100)
精神 D(31/100)
【
女神の癒し
属性攻撃(火、水、風、土)
ステータス異常耐性(D)
急所攻撃耐性(D)
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