第66話 廃墟群を解体してみたら

廃墟群、意外な場所にあったりします。

郡と付く訳ですから、家屋数が数軒からあります。

今回の話は、先生の元に来た話です。

『現場常駐はお前に任せる』と何時ものごとく押し付けてくる。


現地で打合せをしましたが、公共工事かなと、役所主導でしたから。

面倒臭い辺りをしっかり伏せて、こちらに振る辺り性格が悪すぎる。

その現地は、周りは高い木々で囲まれた一角、防風林的な木々が周りの視界を切り離す形でして、建物は全て廃墟となっていました。


(今回の場合、住まない、住む人即ち住人の無い物件を廃墟とします)


役所からの要請は、見える範囲の廃墟の解体と整地でした。

範囲も広い為に重機やら、用意するものが多々あります。

準備万端で解体を始めたら、トラブル発生です。

下見の際は居なかった、住人がおりまして、役所に確認を取ると、不法占拠だとか。

追い出しまで仕事にされたので、そこは先生に押し付けて、交渉(本当に交渉かは不明)の結果、我々はやらない方向で決定。

不法占拠の男は、『まだ住める家を壊すくらいなら住まわせろ、それにここは俺の家だ』と意味不明で横柄な態度。


土地も広いので、他から作業始めると、今度は地域の方々から、煩い、騒音だと訴えてくる。

だが、どちらにお住まいかを聞けば、どう考えても遠く音は反響するので、そう易易届かないかと。

ここは周りが高めの木々に覆われているので、音もそんなに飛ばないのは計測済。

それでも騒ぐので、騒音測定機を持ち出して、現場ではこれくらい、では、貴方がたの住まい付近へ行きましょうかと告げると、怒り出して帰られた。

悪質なタカリですよ、難癖つける俺すげ~とか、騒ぎを大きくして揺するとかね。

現場に監視カメラつけてあるので、役所など関係各所へ映像データは送る、その先はうちらの仕事では無いから、証拠は大事。


ここまで怪異なんてありゃしない、人の浅ましさだけだ。


解体する事10日、ある程度上モノが終わり、基礎部分を解体する事になる。

年代も古いので、モルタルだけな所も多いので、サクサク進むが、例の男が不法占拠していた屋敷の基礎の構造が他と違う。

コンクリート部分を歩いた時、軽い音がした、下が空洞な響きだ。

音を確認しながら、空洞の辺りを調べると、4畳程の広さだった。

基礎の四隅を調べると、やはりあったよ、地階への階段が。

作業員達総出でやっていたので、気づくのが遅かったが、視界の済に回転灯が見えた。

連れて来られたのは、不法占拠していた男。

我々が集まっているのを見ると喚き散らしていた。

つまり、この下は何やらあると自供したようなものだろ?


壊す前で助かりました的な事を言われた。


私は降りたくないので、若い衆に動画と写真撮ってくるように言い任せた。


暫く待機していると、何やら騒がしくなってきた。

その頃には、先生と役所の面々も到着した。


先生にはこちらから連絡をして置いた。

『地階発見、解体前に例の不法占拠の男を連れた回転灯がきまして』それだけで伝わったようだ。

『今から行くから待っとけ』

で、今に至る。


その時、何となく暇している作業員に、

『他の家にも同じの無いか探すか、これで出てきたら大変だよな』と

半ば冗談で言ったのに…

本当に出てくるなよ…当然、先生からは、

『仕事増やしてんじゃねぇよ』と怒られましたとさ。

規模こそ違えど、3軒の基礎にも軽い音から、四隅に階段やハッチからのハシゴだったりでした。

この3軒の発見を、回転灯の皆さんに伝えると、不法占拠の男の顔が(あぁ、終わった)的な壊滅的な顔してましたな。

他の家にも隠してあったのでしょうな。


役所が昔の住居地図を参照すると、その男の一族の土地家屋だったらしく、最終的にその男が相続したらしい。


地下室作って、何を楽しんでいたのやら…


先生曰く『屑の所業だわ』と吐き捨てた。

なので、『自分の考察イメージですが』と前置きして話をした。

あの男が相続するっていうのが、先ずはおかしい点。

いくら親族とはいえ、奴にくるか?

色々考えたけど、難なく奴のもとに転がり込むのは、相続者が居ないこと。

つまり、奴は身内全てを手にかけた?

なんて小説さえもそんな話は無いわな。

と言い終えた辺りで、先生がニヤリとした。

『惜しいが、だいたいそんな所だろ、そもそもの話、ここの廃墟郡の持ち主は、奴等の一族だぞ、だがな、ある日を境に住人が消えちまったんだよ、奴が一人でやったか、複数でやったかは知らねぇよ、証拠も残ってねぇらしいからな』


消えた…ってまさか、この地階って…

『そうじゃねぇかな、ソロソロあちらさんが答えてくれるんじゃねえか』と指をさす。


諸々聞いたけど、そこは書くなと指摘されたので伏せる。


結果的な事を書くと、大方の想像通り、消えた住人は、地階に捨て置かれていた。

専門家(敢えて専門家とする)の調べで発覚したよ

それぞれの家の地階で閉じ込められた形跡があった。

一服盛って、地下に蹴落としたとも聞いた。

屑の所業だ。


事が大きくなり、我々の仕事は頓挫する事になった。

作業再開は未定となったが、今回は物凄い笑顔で支払いしてくれたな。

あれは絶対に何かしらを掴んた顔だよ、取れる所からしっかり取ったのだろう。


これが、『廃墟群を解体してみたら』の全貌であるが、当然伏せている部分もあるので、全貌の7割程度となる。

記録に残らない場合は、良いとの了解も得ているので、イベント等で出すのも有りかと検討する。



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