第65話 代償は憑き物

珍しい人物の話をしよう。


先生の事務所へ来れる人物、彼は初対面の時に、篠田と自己紹介をし名刺を貰った。

普通に先生と話をし、去っていったので、

「先生とサシで、話せるなんて珍しいですね」と言ったら、ニンマリとして、指で丸くして、

『俺に定期的に小遣いくれる奴だ』と。

そういえば、房の付いた、組紐の御守りみたいなのを持っていた。

それを何処かで見たような気がする。


先生のデスクで見たんだ。

なので、聞いてみた。

「先生のそれ(デスクの御守りらしきものを指して)何ですか?篠田さんが持っていた気がしますが」


やべ、見つかったみたいな顔をして

『これを渡すだけで、奴は小遣い弾むからよ』と言う。

よく見ると組紐の真ん中に、3つの玉がある、天然石ぽい小ぶりの玉、サイズ的には15mmくらいかな。

『お前は触るなよ』と釘を刺される。

割れるからなぁ


篠田さんは、小型のビデオカメラを持ってたから、何か撮影する方かを聞いたら、思わぬ答えが帰ってきた。

『心霊スポットや廃墟に、凸して撮影してな、動画投稿する訳でも、メディアに売るわけでもねぇ、本人の自己満のコレクションにしてんだよ、物好きだよな』と笑う


その手の人を嫌煙するのに何故?と思ったが、面白い答が返ってきた。


『あいつよ、師匠の遠縁でな、俺の修行時代からの顔見知りでよ、小遣い欲しさで師匠のとこでバイトしてたんだわ』

ほほぅ

『でな、バイト代貯めて、ビデオカメラ買ってな、沼に嵌って行った訳だ、当然心霊スポット行くと奴は毎回土産持たされてな、それを見た師匠にドヤされてたんだわ、それでも奴を可愛がっていたから、いつも祓ってやってたんだ』

つまり、先生の過去のモノローグの一人か。


『それでな、俺が独り立ちした辺りから、師匠から俺に乗り換えた訳だが、師匠からな、奴からは搾取しろって言われてんだよ』

なるほど、それが小遣いくれるカラクリか。

『あの御守りもな、師匠謹製なんだわ、今はある方が造っているがな、あれの石はセンサーでな、危険な場所に行くと、1つ割れる、さらに踏み込むと2つ割れる訳だ』

3つ目は…と言う前に、食い気味で、

『2つ割れたら、それ以上行くなって言ってある、約束破ったらテメェは終わりだし、俺は見捨てると言ってあるからな、それに来てくれねぇと、小遣い貰えんしな』と大笑い。

何だかんだと、40年くらいの付き合いらしい。


因みにこの御守りは、篠田さん専用らしく販売などはしていないので悪しからず。

私とて偶然遭遇しなかったら、知らなかったのだから。

先生のデスクの引き出しに、大箱で詰まっているのを見ているので、暫くはネタが尽きそうに無い予感。


実際、篠田さんが凸した映像は見ていないが、先生から『お前は見るな仕事が増える』と言われている。色々話を貰っているので、何かの機会にまとめるのも良いかと思っている。


そうそう、これが大切なのだが、篠田さんが撮影してくる物件は、全て撮影許可を得ている。

師匠の顔と先生の顔に頼り、許可を得ているので、そりゃあ通るわな。

もう解体された物件も多くあるとか。


今回の更新はこれにて終了

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