第56話 迷い込んだ通路

会社員時代の話

今から30年くらい前になります

都内某所の巨大なターミナル駅にて、地下街のあるエリアを改修工事していた。

その頃は、店舗は全て解体をして、何も無い空間にした。

数mの感覚で、裸電球が下がっていた、全てに置いて肉眼が頼りだった。

今は当たり前にあるレーザーなんて無かったから、距離を測る測量機トランシットや、水平を見るレベルも肉眼でしたよ、光の加減でチラチラしてたんですよね。

昼間であってもボヤーっとした電球だけなので、脳みそバグります。

最初期は、24時間勤務で翌日休みのローテーションだったが、最後の方は48時間勤務で翌日休みなんて、今じゃあり得ない状況だった。

お陰で狭い場所で立って寝るスキルを身に着けた。


その頃、上の会社の監督から、現状の階、地下2階からの非常口の箇所を図面に書いて、

中に入って扉が開くか確認してくれと言われた。

早速図面片手に、フロア内を歩く。

まだ完了では無い為、旧の非常口警告灯が着いていたので、それを目安に進んだ。

その一つ、図面にはそこに無いはずの警告灯、でもそこにはある。

不審に思いドアを開けた、非常扉なので当然ながら鉄扉です。

錆びついている感な重めの扉を開けると、上階への階段は無く、下階への階段が続く。

ほんわりと明るかった、非常口の警告灯っぽい明るさだった。

目視だけで戻れば良かったのだが、その時はそんな気に為らず、『行くしか!』と思った謎。

元々の改修工事のフロアは地下2階、更にその下。

確か機械室やら電車関係の施設があるのは聞いていた。

そこへの入口なのかな、と思いつつ階段を下った。

階段の下がりつつ段数を数えていたら、明らかに2フロアくらいの段数を下りたら、鉄扉が目に入った。

念の為にノブを回したら動いたので開けた。

眼の前には、左右に伸びる通路。

今は見ない煉瓦の壁、天井は丸みを帯びて煉瓦で覆われていた。

通路の天井に電気はあったが、丸みを帯びた電球かな、蛍光灯では無かった。

取り敢えず、右手に進んだ、当然図面なんて無いからね。

不思議な事に、数分歩いても先が視えない、部屋は一定の感覚で左右に鉄扉があり、各扉に部屋番が振られていて、見るとアラビア数字は無く、漢字の数字で書いてあった。

部屋番を見ていたら、進行方向か「カツーンカツーン」と靴音らしい響きが聞こえてきた。

目を向けると薄っすら人っぽいシルエット、右手に灯りを持っている感じ。

通路の高さから見るに160cmくらいの身長の男性かな。

雰囲気が怖かった、ヤバいと思って走って逃げたよ、入ってきた扉を見つけて入り込みロックを掛けたよ。

そのまま階段を駆け上がり、工事フロアに戻った。

その時ね、出た扉の前に、上の会社の監督がいた、調査を命じた監督だった。

監督が言うに「お前何処に行ってたんだ、探してたんだぞ」と

この監督に指示されて、非常口を調べろって言われた旨を伝えたが、

監督は「知らん」と、「何しろ今しがた出勤したんだぞ」と言われた。

地下で見た通路と不審者の話をしたが、帰ってきた返事がまたね。

「お前の言う通路があったとしよう、だが階下へ行く扉は何処にあるんだ」

「そんなの、ここにあるじゃないですか」と振り返り出てきた壁を指差すが、

非常口の表示も無いし鉄扉なんて無かった。


果たして私は何処へ迷い込んでしまったのか、ずーっと謎だったが、後年一部が明らかになったが、それは公開しない予定です。


以上

『迷い込んだ通路』

でした


2024-04-27

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