第51話 三角の家のその後のその後


この文は、少し前にX(旧Twitter)にて出した話です

文字数の関係上、省いた箇所もありましたので、

こちらにて全文を掲載。


少し前の現場間移動の際、見覚えのある並木道を通った。

そう、そこは20数年前に通った場所。

二棟で白黒で三角の家を建てた場所に相違ない。

当時、その辺りは街道の両脇に並木があり、

所々に商店が並ぶ道だった。

現場からほど近い場所に、その辺りで唯一、飲み物を扱う雑貨屋があり、良く通った。

当時は自動販売機すらなかったから。


雑貨屋付近も拓けていて、広い駐車場を持つコンビニになっていた。

懐かしさを感じ寄ってみた。

年配の店長らしき人と、若いバイトさんが見受けられた。

店長がこちらをじっと見ている。

記憶がつながったのか、ハッとした顔をする。

ニコニコ笑顔で近づいて来たので、『御無沙汰です』と伝えた。

当時の店長は高校生くらいだったから、結構経過したことになる。

約10年前に、道路の拡張工事があり、店舗を後ろへ下げる事になったとか。

その際にコンビニにした模様。

久方ぶりに会った私達、目線だけは、あの土地に向いていた。

店長から『あそこは変わりませんよ』と。

何を指すかは当然、アレが建っていた場所。

今は見る姿も無い。

店長から聞いた話では、二棟の建物が完成するも、人が引っ越ししてきた様子は無かった。

時折、黒塗りの車で数名やって来て、それぞれの家に入り何かを行っていた。

電気が来ていないから、中で懐中電灯か蝋燭でも点けていたのだろう。

当時は遮るものが無かったから、良く見えていたとか。

竣工から13年を経た辺りで、業者が来て解体し更地になった。

道路の拡張工事にあわせ、周りの土地を含めて大規模な開発が入りマンションが出来た。

マンション用地の片隅に、金属の塀で囲まれた石碑が建てられた。

てっきりマンション関係の石碑と思ったが、

その場所はあの二棟の建物があった場所。

それぞれに石碑が建った。

近所の訳知り達は怯えていたよ、と店長。

もうあの頃の話を覚えている人は減ったよ。

お袋たちの世代も減ったしね、うちのお袋も施設だからね。

『俺もここから眺めるだけで済ませたいものだよ』

と告て

『また近くに来たら寄ってよ』と笑顔で送られたのでした。


三角の家のその後のその後でした

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