第49話 仕掛け

とある地方の地主さんから、リフォームの依頼を受ける。

相談もあるので、当家に来てくれと言われ伺った。

広い敷地に、当主の住む母屋、子供達四人が家庭を持ち、それぞれ大きめの一軒家が4棟あった。

敷地の外れに、周りを大木で囲われた、木造2階建て、築年数は30年前後の家があり、そこがリフォーム予定の物件だった。

何でも、内見にくる業者が軒並みお断りをするのだとか。

うちで七件目、関東から呼ぶのだから、割増もあるがそれは問題無しだそうだ。

つまり、地元の業者が忌み嫌い、巡り巡って先生の所に来た訳だ。

この頃、先生は案件を多数抱えており、丸投げしてきた。

『変な事になったら、割増で貰うからな』といつもの不敵な笑みを浮かべていた。


鍵をお借りして入る。

空気の入れ替えをやっておらず、家の中は黴臭く湿っぽい。


家財は殆ど運び出されていた、これならリフォームも楽だろう。

当主からの依頼は、全ての室内のリフォーム工事。

床も現状の和室、畳からフローリングに変え、壁紙も天井も白で統一、押入れも取払いクローゼットへ。

玄関も簡単な下駄箱だったので、高級感溢れる下駄箱へ。

キッチンも対面式でカウンター付きにと、とってもお高くなる仕様。


奥の間、2畳程の部屋に電話台があり、黒電話が置かれていた。

家財は出されているのに、なぜコレが?


まてよ、先生案件だし、コレが何かするのか………。

眺めていると、突然呼び出し音が鳴る。

受話器を取る気にはなれない、なにせこの電話、何処にも繋がっていないのだから、本体から伸びる電話線、15cmくらいで切れている、中の線も錆だかなんだかで黒ずんでいた。

確か空気の入れ替えすらしない家なのに、その黒電話が妙に艶々と磨かれていたんだよね、あり得ないよね。

黒電話そのものが、モノノケなのかも知れないね。


つまり、内見に来る業者達も、最終的にこの部屋に辿り着く。

黒電話にビビる、嫌な予感しかないから、お断りをする。

結果、先生案件と成り果てた、そんな所かな。


黒電話さえなんとかすれば良いかな、でもね、嫌な予感だけは拭えないから、

うちはスルーして、知り合いの工務店が、仕事無くて暇で遠距離でも構わないって言うから、

ちょっと難ありなのも伝えたが、彼等はやる気だったので、立会で再訪した。

当主に業者が変わる旨を伝えたが、誰でも良かった様で、仕上げてくれしか言われない。


その後どうなったかだけど、仕事を振った2ヶ月後のこと、やっぱり何かあったようだ。

リフォームは完了済だが、再訪はする気は無かった。


工務店は社長と職人、計3名が失踪。

事務員が出社したら、前日鍵を締めた時と変わらず、

タイムカードも他の3人のが押されていなかった。

出先を書くホワイトボードには空白だった。

焦った事務員からの電話で発覚したんだ。


先生に経緯を話すと

『やつら、閉じ込められてんだよ、自分でリフォームしたところにな』

どういう事?

『お前も性格悪いな、他に振って逃げられたと思っているが罪悪感で、俺に頼ってきたんだろうよ』

正解です、素直に白旗掲げる。

『本来は俺の案件だったし、お前からより助けた奴等なら良いだろう』

ナニガヨ、カネカ、カネダロ


2日後、その屋敷へ先生と向う。

当主がにこやかな笑みで出迎えたが、先生が『てめぇ、人様使って生贄にすんじゃねぇよ、行いは全て解っているからな、今からてめぇの仕掛け破壊してやるよ』

当主は涼しい顔で、「出来るならやってみな、お前らが腕上げたらしいが、俺だってやってんだよ」

???

なんだこの展開

『こいつはな、師匠のとこにいた弟子だよ、いや弟子を名乗らせる訳には行かねぇな、修行がキツくて夜逃げした野郎だからな』鼻で笑う


この辺りは省きます、つい詳しく書いてしまい、先生から消せと言われましたので、元原稿には書いてあります。


結果、先生の圧勝。

『生贄なんぞ使う野郎に負けるわけ無いだろ、今回の慰謝料あとでしっかり請求するから、覚悟しておけよ、所詮半端者だからな』と高笑いしながら


当主はこちらを睨みつけ、「なんでアイツを連れてきたんだよ、あのまま行けば圧勝したのに、クソっ」


そうそう、工務店の3人は、リフォームした建物の地下室に監禁されていました、事件ですので、当然警察を呼びました。

地元の地位のある人ですが、監禁はいけませんので、しっかり連れて行かれましたとさ。


帰りの車内

『相変わらず足らない馬鹿だよな、綻びが見えるなんて罠かと思うだろ、あいつはいつも本気だからな抜けてんだよ』



その後、しっかりと回収したので、先生のところと、私とリフォームをした工務店の全員で、先生払いで食事して全て終了となりました。


思いの外、長くなってしまった。

省いた部分あると、もっと長かったですよ。



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