第45話 鬼門の家
今回の話は、たまたま出張した先で聞けたので、取材してみました。
建築を生業にしてると話した所、こんな話があるよって、自分の実家のお話をしてくれました。
その方(Uさんとしましょう)の実家は、町から山間部へ入った辺り。
山の麓に屋敷があるそうです、家から外を見渡す限りが、自分の家の敷地って言うから、相当な広さですよね。
その実家も、築年数が3桁に上るそうで、今の人には流石に使い辛いとの事で、当代の奥さんが、リフォームをしましょうと相成りました。
旧家を触る事の出来る大工は居ませんでしたので、敷地も広い事だし、増築をしようとなりました。
普通に考えたら、敷地あるんだから、新築で家建てろよ、と思うんですけど、その時は増築に落ちつたそうです。
それが間違いの元だったようです。
その業者は、奥さんが町へ行ったときに、ビラを配ってたそうで、それでお願いしたそうです。
普通その手の業者は、いい物とは言えないんですが、まぁ、家人が良しと思ったので、Uさんは何も言えなかったそうです。
約2ヶ月程度の工事の後、旧家の右隣に今風の家が出来たそうです。
Uさん曰く、「アンバランス過ぎて田舎には、異様な建物だと。」
旧家の玄関は、入り口正面にあるのですが、増築した方の家は、何故か正面向いて右側に出る形になってたと。
そちらの入り口側は、裏庭と蔵へ行けるので、若夫婦は利用してたそうです。
Uさんの叔父に当たる、先代の当主は、口には出さなかったけど、Uさんが訪れるたびに、
「あっちの家に口出しは出来んが、嫌な感じがするんだよ。」と聞いてたそうです。
その家の敷地、蔵の方向に祠があったようですが、作業の邪魔になるとかで、先代の了解無く処分したとか。
そこが間違いでしょ。
完成してから半年の間に、その家に住む家人が、病院の厄介になること数回、救急車が来るのが珍しいこの地域に、週に2・3回もくれば、それは多いこと。
流石にUさんも、おかしいと思ったので、Uさんの住む町の大工の棟梁にお願いをして、実家を見てもらったそうです。
確認して貰った結果、新しい家の玄関が、もろに鬼門、丑寅の方角へ向いてたそうです。
棟梁が言ってたそうです、「あれは、絶対に判っててやってんだ。」と。
「何か意図があるんじゃ?」とも言われたそうな。
先代当主に、この事を伝えると、「やっぱり」と成りまして、早急に改築をと相成りました。
今回は、この棟梁へお任せして、鬼門の玄関は、一間設けて、向きを変えて、旧家と同じ向きにし。
壊された祠も、再度復旧、勧請しお奉りしたそうです。
それからは、特に問題も無かったんだけどねぇ、とUさんが言った後に、ニヤリと笑みを浮かべ、最初の業者どうなったと思う?と、ニヤニヤとしてました。
「見えない力ってのあるんだねー」とUさん。
「その会社さ、平屋建ての事務所何だけど、ぺったりつぶれてたんだぜ。」と。
は?ぺったりって?と問い返すと、更にニヤリとしながら、
「建物を上から巨大なハンマーで殴って潰した感じかな。」と。
普通はそんなに潰れないんだよ。
見えない力って怖いねぇ。
鬼門の家
了
初出は古く2011年4月4日となっています
某SNSにて掲載した話のリライトです
その時代の話が結構あるので
出していく予定です
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