第44話 記憶にあるモノ

昔の話

高校時代、最寄り駅からは遠く自転車で通っていた。

若かったから、一山分を越え、更に続く登り坂の先に駅があった。

なので、自転車であっても、四十分程掛かった。

工業高校の建築科に在籍していた為、実習やら製図の授業やら、4時間連続の授業がある時は、8時間授業なんてのがあった。

冬場は終わる頃には、結構遅い時間。

最寄りの駅には、18時頃到着が日常になりかけた、夏の少し前。

その頃から視界に見えていたんだろうね。

先ずは駅前の坂道を降りていく、前方には山並みと寺社が数件見える。

その内の一つ、昔からある寺、あるのは知っていたけど、近寄った事はなかった。

親戚の墓所がある訳でも無いので、入ることすら無かったのだから。

進行方向の左手奥にある、道路面入り口からは参道が続く、結構先のは山門があり、いつ見ても扉が閉まっていた。

参道脇に駐車場がある訳も無い、なので、ここは葬儀等はやらないんだなと思っていた。


見えたモノに戻るが、山門の奥と思しき場所に、黒い柱が見えていた。

初めて認識した時は、黒っぽい霧みたいなのが漂っている、ソレだけだった。

学校の往復の際に見える風景の一部になった秋の頃。

珍しく山門が開いており、参道には花飾りがあった、通夜や葬儀の花輪では無かった。

喪服姿の男女がいるけど、何か変だった。

それから3日程、山門が開いていて、花が飾られ喪服姿の男女がいた。

その間、空に見えていた黒い柱は消えていた。

この近所に住む親戚に、あの寺は何かと聞いたが、口を揃えて『関わるな』と。

つまり、忌みされていると、確かに狭いエリアに社寺の数が10以上あるのはおかしい。

昔からある所、後から何を意図して建てられた所と様々

この数には、HONKOWA本誌でコミカライズされた

『三つ玉』の社寺も含まれる。


十年くらい前に久々に通ったら、山門が開けられ、人の出入りがあった。

散歩する人や、近所の幼稚園の生徒と先生等、何か変わったのかな。

その頃には、もう黒い柱は見えなくなっていた。


今は近づく事もなくなりました。


あれは、何だったのでしょうね。


記憶にあるモノ



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