第41話 知らぬ間

ある方のツイートに、開かずの間を模した模型があったので、

そのシチュエーションから思い出した話を書きます。


10年くらい前の春の事。

親父さんの幼馴染の家から、仕事の依頼があった。

農家をやられていて、現在は息子さんが継がれている。

土地があると、アパート業者が湧いてきて、畑からの転用でアパートになったりしていた。

どの業者かは伏せる。


その仕事は、息子さんからの依頼で、『実家に母が一人で住んでいるのが、

はっきり言って無駄なので、何とかしてください』

との依頼

その母が、親父さんの幼馴染。

息子さんは、所有するアパートに入っている。

思惑は、現在の実家の敷地を整理して、家とアパートを敷地内に建てたいとか。

でも、まだ母が元気だから、後でやればいいからとなり、

現状のリフォームとなった。

広さ的には、昔ながらなの屋敷で、2階建てで、

1階が8室和室とLDK、2階が和室4室。

無駄に広いのよ、昔は、冠婚葬祭は自宅でやったからこの規模なのさ。


早速、息子さんと伺うと、えーと…

庭荒れ放題、玄関までの敷石も崩れて…………

庭に関しては、植木屋さんに任せる。


中に入る

玄関は8畳くらいかな

真っ直ぐ廊下が伸び、正面にキッチン、

キッチン手前に左奥の部屋への廊下。

廊下の手前に、2階への階段。

玄関のすぐ左には、広い陽当りの良い廊下、先で右に曲がっているな。

玄関からみて右手、和室が二間続き。

覗くと、座卓と座椅子。

それ以外の場所、モノだらけ、座卓の上も飲みかけや食べかけのが大量。

ゴミ屋敷か?と思ってしまう。

座椅子のところだけ空間空いている、汚部屋でした。

次の間の板戸開かず、建付けでは無い感じ。

住人に聞いても、雨戸も閉めたままで、指折り数えているが、その指が月なのか年なのか怖すぎる。

息子さん曰く、「多分、年の方です」と。

この部屋は、キッチン側からも行けるらしく、キッチン手前の廊下から右側へ行く。

廊下の右手一部屋目が、汚部屋。

次の間は、その隣。

なんだが、その奥にもう一部屋ありましてな…。

息子さんは納戸だと言うんだが、どう見ても作り的には部屋なんだが。

廊下の正面は、トイレ。

トイレの手前に、浴室、キッチンに近い方に洗濯場や洗面所。

お風呂は昔は、薪風呂。

今はガスの模様、モノグサだし妥当。


で、問題の次の間を、廊下から開ける。

中には仏壇と神棚と、その他ガラクタが押し込んであった。

ヤバいだろ?

その2つは、我々は触れないので、息子さんにやってもらった。

仏壇を開けたら、先祖のだったよ。

因みに息子さんは、お盆の行事を知らないとの事だった。

聞くとお盆もお彼岸も、親戚とか来ないと。

ヤバかろう

諸々あって、この部屋はガラクタ廃棄だけに。

つぎに、納戸と言われた部屋だが、板戸が釘で打ち付けられている。

他の入口を探すもそこだけらしいので、外に回る。

外も竹藪になってて、歩きにくいのなんの。

雨戸の上から、更に板を打ち付け手出し出来ない様になっていた。

息子さんは、前室の事もあり、「ここはいいかなぁ」と日和ったが、

まぁまぁと宥めすかし、釘抜いて開けてみた。

釘は五寸釘が12本打ち付けられていた。

力自慢の職人達と、思いっきり開けると、中は真っ暗。

明かりは皆無。

開けたが誰もが入りたくねぇ気分。

空気も黴びている厭な匂い

8畳はある部屋の真ん中、一組の布団だったものの形があった。

時間の経過と、ネズミでも齧ったのかな感じ。

人のらしきものは、何もなかった。

照明すら無いので、灯りを持ってきて室内を確認する。

布団の残骸他は、壁に達筆な筆文字で色々書いてあった。

息子さんが出て行き、母親を連れてくる。

「この部屋なんだよ!」と

「知らないわよ」

なんで知らんのさ

息子さんから、入口を新たに塞ぐ事を約束される。

廊下は漆喰壁なので、しっかり漆喰壁まで約束される。


次に逆側、キッチンの左手を攻める。

二間続きだが、ここも暫く開けていない模様。

襖で仕切られていたが、当然開かない。

息子さんから「襖も障子も全て張替えをお願いしますから、破って下さい、破損したら新規で良いので」

と了解を得たので、壊して凸する。

壊した職人が倒れ込んできた荷物で埋まる

衣類やら、箱やら缶やら、無造作に積み上がっていた。 

それが雪崩を起こして塞いでいた模様、この部屋も確認の後、処分となる。

次の間は、床の間のある良い部屋だったはずが、床が落ちていた。

原因は、シロアリの悪徳業者に騙されて、

縁の下に入る所と、空気穴全部塞がれてた。

昔は、ベタ基礎(今の住宅は、床下全面コンクリート打設して、湿気対策をしてある)は使わず、

布基礎、下は地面のままで、土台の乗るところだけの基礎だったので、外周の基礎には、鼠が入らないように空気抜きの網や柵をはめてあるのだが、

その業者が、しっかりコーキング打って塞ぎやがった。

その為空気の流れが無いので、湿気が上がりまして、昔の材料ですから、腐りまして。

部屋の荷物の重さに耐えきれず、ごっそりと落ちたと予想。

息子さんが調べたら、業者にボラれていたとか。

この部屋は、全部撤去と次いでに床下全面コンクリート打設になる、塞がった空気抜きは、新たに作ることに。


廊下が曲がっていたので、その奥、床落ちた部屋から廊下を伝い、行き止まりの奥の間。

ここが酷かった。


戸板の引戸、引戸を柱に釘で打ち付けてあった。

廊下側から、つまり、中のものを出さない為に?

それでも、お仕事ですから開けましたよ。

不用品、つまり廃棄物の山ですね。

中を確認したが、特に何がある訳では無かった。

窓も雨戸が閉まっていた。

この部屋も、廃棄物撤去の後に、全面リフォームかな。

廃棄物を片付けないと、中が解らないからね。

結果は、単に閉められた部屋でした。


そして、最後に目指したのは台所。

ここも汚部屋でした。

流し台、テーブル、食器棚、冷蔵庫上、床。

足の踏み場もない部屋でした。

ここで、一番怖いものがありました。

西瓜の箱があったんですよ、大きな玉の西瓜らしく、箱に書かれてましたね。

何気なく触ったら、箱がね撓むんですよ撓むたわ

まさか…と思い、箱を開けたら、ビーチボールか?と見間違う黒い玉がありました。

表面が波打ってましたね。

直感で、『これは触ってはいけない』と思い、スッと蓋閉めました。

その後、片付けの際に、触った職人大惨事になったのは、また別のお話。


説明していない、残りの部屋は、廃棄物の山でしたので、全室処理の後、リフォームとなりました。

陽当りの良い廊下に沿って、二間の和室もありましたが、放置されたブツで埋まっていましたので、こちらも然り。


説明だけで終わる事にしますが、覚えているだけで10年、放置したらそうなったお話になります。


何が怪異譚だと言われそうですが、たまにはこんな話も宜しいかと。



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