第18話 面

元実家の玄関から奥の居間までの廊下、

左右には天狗面、狐面、般若面、鬼面等全て木彫りの面が12面並んでた。

幼少時代の夜に、トイレ行くのに前通ると怖かったなぁ。


その面も実家を壊す際に、禰宜さんにご祈祷して貰って梱包し、

半ば封印して蔵へ仕舞ったのだが、蔵へ納めているときに気付いた。

1つ足りない…

一面づつ梱包する際箱書きをして、写真も収めたのだが、

般若面の「笑み」の面が消えていた、対になっていて「憤怒」の面は残っていた。


元々この般若面は、親戚の知古の方が彫り上げて、

それを頂いたモノだった、貰う由縁も無いのだと聞いている。

彫った木材の出処が、我が家だったとの事で、親戚の者伝手に我が家へやってきた。

蔵へ納める時に、親戚の者も一緒に立ち会ったので経緯を聞けたのだ。


彫り上げた面を「笑み」と「憤怒」と名付け、我が家へ持ってきたんだよと。

怖い感じがしたので、子供が怖がるしで置いておけないと思い、厄介払いの積りで我が家へ持ち込んだのだと。

ところがが彫り上げた男が言うには、「笑み」の面は俺が彫ったもんじゃないと言う。

どう見ても同じ素性の木なのだから、お前さんだろ?と問えば違うと言い張る。

そんな問答をやったので、薄ら怖いから持ってきたのだと。


今のところ、「笑み」の面は消息不明ですが、あれは決して「笑み」じゃない、

薄笑いであり、眼は笑っていないそんな顔の面でした。


その元凶であり彫り上げた方は、先日鬼籍に入られたので、最早答えを求められない状況です。


この話は私のブログで公開した話なので、そのタイムスタンプは以下。

2015年7月31日


この日以降、今日に至るまで、「笑み」の面は出てきていません。


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