第10話 「音」
友人Kから聴いた話。
彼は毎朝「ヒューーーーー」と風切り音を聴いて目覚めるそうだ。
「また今朝もか」
ここ二週間ばかり、毎朝起こってる現象なのだそうだ。
何か身に覚えの無い事に、巻き込まれてるんじゃないか?と水を向けると、
「特に無いんだよなぁ、それに朝だけ聞こえるし」と言う。
そもそも、風切り音が聞こえるのが謎なんだが、Kはその事に疑問を持たないのが不思議なんですよね。
その時は「変な話」で終わった。
それから、半年が過ぎた後にKから連絡が来た。
非常に興奮をした声で叫ぶように彼は言ったんだ。
「おいおい、証拠が有ったんだよ、証拠が!今から来いよ急げよな!」
それだけ言うとKは電話を切る。
呆れた私は、さてどうするかなと思ってたら、次の瞬間メールの着信。
開くと「早く来い!」と書いてあった。
Kの自宅へ伺うと、彼は開口一番。
「証拠をゲットしたぜ、こいつが原因だったんだよ」
こちらとしては、はぁ?と思うわけです。
Kに誘われ室内に入り、抽斗から小さな透明な袋に入った証拠品を見せてもらった。
それって見覚えがある品でね、一部黒焦げたロケット花火の火薬の部分だね。
それがKのベランダにあったそうだ。
彼は証拠に騒いでいたんだが、よく考えてみろと彼に助言した。
彼はかなりの稼ぎが有る奴で、その住まいもタワーマンション。
25階に住んでいるんだが、普通に考えて単なるロケット花火が、
その高層階のベランダに落ちてるはず無いんだよ。
毎朝音を聴くと言う事は、毎回狙ってる?
いやいや、普通に考えて無理でしょ。
他になにか有った?と聞くが、他には何も無いと。
なので「また証拠なり何か変化あったら教えてよ」と伝え帰ってきた。
その日以降、ロケット花火は見つかるけど、それ以上の進展は無いようです。
カメラ設置したりと対処はあるのだけど、Kは「そこまでする必要は無い」と
この現象を楽しんでいる気がする。
と、まぁこんな感じでして、現在も続いてるそうです。
了
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