第08話 贈り物

Mさんが高校生時代の話、細面で顔立ちが良いので当時はモテたそうです。

今も変わらず、良い男なのに中身は残念ですが。


そんな彼が、誕生日に多数の女性からプレゼントを貰ったそうです。

冬の時期産まれの彼にはありがたく、手編みの手袋があった。

毛糸の色は紫色でつけると指にフィットして、中々の装着感に彼は惹かれ愛用品に加えました。

その時は、誰から貰ったか等気にせずに、何人か居る彼女の誰かだろうと思ってました。


翌朝の登校時に手袋を付けて行くと、途中で掌に肌の感触がある。

驚いて手袋を外すも変化は無し。

気味悪く思ったので、付けずに登校してたら、少し先の道を歩く女子生徒から妙な圧を感じた。

誰かは解らないけど、怖くなった彼は走って追い抜きつつ、その人を振り返ったら凄い形相で睨んでいた。

ゾクゾクしながらも、その女生徒の顔を見る。

目が光ってて、それ以外の顔が真っ黒だった。

髪型も覚えてないけど、目だけが強烈に記憶にあるそうです。


固まってた彼に「何で手を離すのよ」とその女生徒は言ったそうです。

恐怖の限界だったのでしょう、怖くなった彼は振り切って学校へ向った。

体が動いて俺は助かったんだって言ってました。


登校してからさ、改めて昨日貰ったプレゼントを全部調べたんだよ。

その手袋の差出人が不明でって言うと怪奇だけどよ。

実際は居たんだよ、その差出人がさ。

贈った人は、同じクラスで席だけある子で、病院に入院してる子で、

月に1・2回来るだけの体の弱い子だったんだよ。

そして、その日がな彼女の登校日だったんだよな。

でも変だよな、俺の誕生日は前日だぜ、そこにある訳無いよな。

彼女が教室の席に着いた時に違和感あったんだよ。

長い黒髪で綺麗だった髪が、ショートボブに成ってたんだよ。

クラスメイトが彼女に聞くと、笑顔を浮かべながら俺を見るんだよ。

その目がな、朝見たアレみたいに光ってるんだよ、俺怖くて怖くてさ。


結局怖く成ったから、あの手袋は袋に入れて押入れにしまったんだと。

それから、触らぬ神に祟り無しと云うことでな、未だに押入れに入ったままでな、出してみたいとも思わないんだよな。

それからな、押入れから妙な圧迫感があるんだよ、それでな、アンタに聞きたいんだよ。

「俺の後ろに何か視えないか?」


そこまでは飲み屋で、彼からの話を聞いてたのですが、次の瞬間廻りの音が消えました。

なにかの偶然のタイミングで音が途切れるあの感じ。


自分可愛さで保身の為に、私は一言「何も居ない居ない」とだけ告げて、取材ありがとうと言い残し帰りました。


実際そこに視えたのは何か、そりゃーねぇ、黒髪と編み物ですよ。

良く有る怪談じゃないですか、その体現者が居たんですから。

彼の手から背面にかけて、黒っぽい何かと明らかに乗ってるモノがおりました。



この話は、Mさんが30歳手前の頃に聞いた話。

なので、高校の頃の話だから、ずーっと押入れに封印していたのでしょうね。


このMさんは、ある方の怪談本に登場します。

竹書房の本で著者は北極ジロ氏

M氏の次の話もありますので、次回更新に掲載予定…は未定


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