Miss MOONLIGHT


「おじいちゃん! おばあちゃーん!!」


 ――ある月の夜です。


 王子様とツバメが夜空を飛んでいると、少女の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。


「かぐやー!」


「いかないで、かぐややぁぁ……」


 おじいさんとおばあさんの泣く声も、聞こえてきます。


 地上を見れば、一人の少女がたくさんのナニカに、連れていかれそうになっているではありませんか!


 連れ去ろうとしているのは人でしょうか?


「ツバメさん……あの、光のような存在は!?」


「王子様……王子様に搭載した高次元カメラにはそう映っているのですね。

 ヤツラはボクらの世界より高次元な世界からやってきた存在……天人あまんとと呼ばれる、異世界人です。」


「天人!? 異世界人!?」


 ある人には人に見え、ある人には天使に見える……少女を連れ去ろうとしているのは、そういう存在。


 ツバメが天人あまんとと呼んだその存在たちは、少女に光の衣を着せました。


「サア、イクヨヒメ。アナタハ、ココニイテハナラナイ存在ナノダ……」


「ハイ……」


 すると少女は無表情になって、抵抗しなくなってしまいます。


「かぐやぁ、わしらの宝物……」


「かぐや、私たちの宝物……」


「オマエタチハヒメヲ育テタ。カワリニ、ヒトトキノ幸福ト、タクサンノ宝ヲエタハズ……」


「宝なんていらなかったんだ! ただ、かぐやがいれば幸せだった! わしらの娘がいれば!」


「私たちのかぐやを返して!!」


 ――そんな叫びは通じません。


 おじいさんとおばあさんが泣き叫んでも、もう少女は無表情のまま反応せず、天人たちも冷たい反応。


 そして彼らは少女を連れて、空に登っていくのでした……



 あまりに唐突で悲しい出来事に、王子様は叫びます。


「ツバメさんツバメさん、小さなツバメさん!

 このままでは少女が連れていかれてしまう! どうにか……どうにかしておくれ!!」


「すいません、王子様。IQ300のボクでも、どうにもできません。ヤツラはこの世界ではチートの存在……なにも手が出せないのです。」


「そんな!!」


 だけど、ツバメの悲しい答え。


 いつものようにわがままを聞いてもらえずに、王子様は泣きそうになりました。


 少女を連れた天人たちは、夜に輝く月に向かって飛び去っていきます。


「かぐやぁ……、かぐやぁ……」


「私たちの、大切な娘……」


 泣き崩れる、おじいさんとおばあさん。


(私には何もしてやれないのか……)


 王子様は自分の無力さに、一人で街に立っていたあの日と同じ想いを感じました。



 ――でもです!


 泣きたくなったその時に、ツバメが王子様の操縦機関を握って言うのです!


「行きましょう、王子様。」


「ツバメさん……?」


「ボクたちも月に向かいます。今はどうにもできませんが、月でなろうパワーを集めれば天人たちを倒せます!」


 ――ツバメの心強い言葉。


 王子様は一人じゃないことを、今は無力ではないことを感じて晴れやかな顔になります。


「わかったツバメさん、行こう!!」


「はい!」


 こうして王子様とツバメは、月へと向かうことになったのでした。







「ツバメさん、彼らは月に向かったハズなのに、もうどこにもいないよ。」


「天人たちは異世界に全員転移しました。もう、追いつくことはできません。」


「そんな……じゃあ、どうするんだい?」


「過去に戻ってやり直します。」


「過去に……どうやって?」


「開発中のタイムトラベルシステムを使います。しかし、そのためには1700万ゼノ以上のブルーノ波を超える、なろうパワーが必要です。」


 ツバメの言っていることは専門用語ばかり。


 王子様はよくわからずに、どこから尋ねればよいか迷っていたら、もう月の表面が見えてきます。


 月面の静かの海には白髪の美少年がいて、妖艶な微笑みで、手を振っていました。


「誰かいる? ツバメさん、あの人は?」


「彼はボクの同志です。愛する人を必ず幸せにすると誓ったトモダチです。」


「友達なんだ! だから手を振っているんだね。」


「はい、トモダチ♡です。」


 そこを通り過ぎた先には、大きく折れたMMI-714アロンダイトビームソードと、ボロボロになったスーパーロボットがあり……


 そして一人の男の子が虚な顔で、座り込んでおりました。


「ツバメさん、あれは?」


「対戦艦のビームソードです。」


「男の子が悲しそうな顔で座っているよ。」


「あれは、ナローシュにやられたのです。」


「ナローシュ?」


「ナローシュとは他人の物語を都合よく書き換え、主人公になり変わる、強力ななろうパワーを持った恐ろしい存在です。

 彼はナローシュにより悪役に堕とされて、身勝手な正義ジャスティスの前に敗れ去ったのです!」


「なんて酷いやつなんだ、ナローシュは!

 ツバメさん、あの男の子を助けてあげてよ!」


「仕方ないんです。運命ディスティニーなんです。でも、彼は人気があるから、ボクらがやらなくても、なろうパワーで大丈夫です。」


「なんだかそのなろうパワーっていうのは、とってもすごいんだね。」


「はい、理屈を超えるパワーです。ボクたちの世界の法則を超える天人たちにも、このパワーなら対抗できます。俺TUEEEできます。」


「本当に私にはよくわからないけれど、とにかくすごいんだね、そのパワーは。」


「はい、王子様!――あ! 話している内になろうパワーが溜まりました! 地球に戻って過去に戻り、世界を改変してやりましょう!」



 ――月には色々なものがありました。


 王子様はツバメの説明の半分もわからずに、とりあえず飛んでいただけですが、もう、17兆ゼノのブルーノ波を超える、0.8キラヤマトものなろうパワーが溜まったみたい……


 パワーが十分に溜まった王子様たちは、地球に戻ることにしたのです。




「――ツバメさん、見ておくれよ!」


 地球に戻る途中の大気圏で、また王子様が何かを見つけます。


 見つけたのは二人の美少年……二人は真っ逆さまに落下する途中ではありませんか!


 力無くただ落ちていく二人の美少年を見て、王子様は悲しくてお願いします。


「ツバメさんツバメさん、小さなツバメさん!」


「尊い……。どこ落ちマジ尊い……」


「ツバメさん! 小さなツバメさん!」


「あんなにギュッと抱き合って……あぁ……」


「………………」


 ツバメが全く話を聞いていないので、王子様は自分で飛んで、とりあえず美少年たちをキャッチ。


 そうしてそのまま、地球に降りていきました。



「ツバメさん、二人は気を失っているみたいだ。傷だらけだし、なんとかならないかな?」


 地球に降りた王子様は、再びツバメにお願いをします。


 ツバメは鼻血とヨダレが酷いですが、だいぶ正気に戻っていて、今度はちゃんと話を聞いてくれました。


「わかりました、王子様。では、さっそく、このアイテムを使ってみましょう!――なろうビ〜〜〜ム。」


 ツバメはオモチャのラッパのような銃で、二人の美少年に向かい、見えないなにかを発射します。


 すると、まずはマフラーをつけた美少年の傷が全て治って、もう一人の鼻の高い美少年に言いました。


「002! 大丈夫か!?」


「009……傷が治って……どう……やって?」


「加速装置さ。今まで気づかなかったけど、加速装置で回復力を加速することで、超回復できるのに気づいたんだ!」


「すごいな……無敵じゃないか。でも、俺の初期型の加速装置じゃ……」


「いや、できるさ002! 加速装置で加速装置の進化を加速してやれば良いのさ!」


「なるほど!」


 こうして、二人は勝手に元気になります。


 それから助けてくれた王子様にお礼を言うと、加速装置で時空を超えて、仲間の元に帰っていきました。


「ありがとう、ツバメさん。」


「いえいえ、改造された美少年は、ボクも必ず助けることにしてますから……ブッ!!」


「つ、ツバメさん!!」


 お話の途中て、急にツバメは鼻血を吹いて倒れてしまいました!


 王子様は駆け寄ってツバメを抱き抱えますが、ツバメはますます鼻血を吹いてしまい、今にも出血多量で死にそうです!


「う……嬉しいのですが、王子様……

 ちょ、ちょっと栄養ドリンクを飲む間、離れていてくれますか。」


 ツバメはそう頼んで王子様から離れ、栄養ドリンクを飲みました。


 だけど王子様の方をチラチラ見ては、ヨダレと鼻血を垂らしています。


「ツバメさん、様子が変だよ。ヘンタイだよ。いったいどうしたんだい?」


「王子様、気づきませんか?」


「気づく? そういえば小さなツバメさんが、大きくなっているような……?」


「え? ボクのジュニアが大きく……見ちゃダメですよ、王子様♡――じゃ、ないか……そうじゃありませんよ。王子様の姿が変わっているのです!」


「私の姿が?」


 そうツバメに言われて、王子様は自分の手足を見ます。


 すると、ロボットではなく人の手足があるではありませんか。


 ――そうです!


 王子様はスーパーロボットの姿から、金の髪に青い瞳の、超絶美少年の姿に変わっていたのです!


「どうして私が人の姿に!?」


「王子様、なろうパワーの副作用です。細かいことを気にしてはいけません。」


「これが、なろうパワー……」


「そうです。このなろうパワーならなんでも問題を解決できます。――さあ、行きましょう!

 なろうパワーであのチートな天人たちに、ざまぁをかましてやりましょう!!」


 なんだかんだとありましたが、月に行って帰って来た王子様とツバメは、少女が連れ去られる前の、過去の地球に戻ってきたのです。


 こうして天人たちの少女誘拐を止めるために、二人で少女の家に向かうのでした。




 人の姿になった王子様は、とある屋敷に忍び込んでいました。


 そこはあの連れ去られた少女と、おじいさんおばあさんの家……そこには何人かの貴族っぽい男性たちもやってきておりました。


「良かった。まだあの少女は連れ去られてはいないみたいだ。でも、あれは何をしているんだろう?」


「あれは逆バジュラーですよ、王子様。

 高スペックの男性たちが一人の女を奪い争う、そういう番組なんです。」


「そうなんだね、ツバメさん。」


「はい、そうなんです。でもボクはバジュラーも逆ハーレムも嫌いなので、ここでなろうビームを使いましょう。――なろうビ〜〜〜ム。」



 そう言って、ツバメはなろうビームを撃ちました。


 でも、特に何か起こる様子はありません。


 王子様は少女誘拐を止めるのが目的なので、とりあえずここは見守ることにしました。




「皆さん、宝を持ってこれたのですか?

 持ってこれた方と結婚するお約束ですが?」


 ――あの少女が、そう言います。


 どうやら、彼女が頼んだ珍しい宝を持ってこれた男性が、彼女と結婚できるというクエストみたい。


 するとまず一人の男性が、汚い衣を出しました。


「火鼠の衣だったよな? これでいいか?」


「え?」


「自分で頼んだんだろ? 違うのか?」


「そ、それは、偽物では無いのですか?」


 男性は簡単に宝を差し出しますが、少女とおじいさんおばあさんは疑います。


 だって火鼠の衣と言えば、どんな火でも燃えないという伝説のアイテム……だから疑いを確かめるために、おじいさんがその衣を火にくべました。


「燃えんぞ!」


「おじいちゃん、火が弱いんじゃ?」


「ハイ、ガスバーナー。」


「燃えんぞ!」


「ハイ、溶接用ガストーチ。」


「燃えんぞ!」


「ハイ、超高温熱線レーザー。」


「燃えんぞ!」


「そ、そんな!?」


 しかしその衣は、全く燃えることはありません。


 ツバメがおじいさんに渡す道具からの超高温の炎にも、全く焦げすらつかないのです!


「あなた、これを、どうやって!?」


「どうやってて……普通の衣に火鼠の衣って漢字で書いて、効果をエンチャントしたんだよ。」


「絶対に燃えない効果ですよ!?」


「え? 俺、またなんかやっちゃいました?」


 どうやら男性は、伝説のアイテムを作り出したみたい。


 だけど、男性はすごいことをしたのになに食わぬ顔をします。


 そしてそれどころか、とんでもないことを言い出します!


「あ、そうそう。結婚の話だけどさあ、悪いけど無かったことで。――俺、やっぱシシリーと結婚するんで、あなたとは結婚できません。」


「はぁあ!?」


 少女は突然の婚約破棄に驚きますが、男性はさっさと帰っていきます。


 そうして一人目の男性が去ると、次の男性が前に出るのです。



「龍の首の玉、持ってきたぞ。」


「え……それは、偽物では無いのですか?」


「偽物? なんで偽物を用意する必要がある?」


「だ、だって、龍ですよ!?」


「え? 龍ぐらい素手でも倒せるでしょ? 常識じゃないんですか? ――キョトン。」


「はぁあ!?」


「あ、俺も龍探して冒険している間に、なんか求婚してくる女の子がいっぱいいて……だから、結婚の話は無かったことで。」


「はぁああああ!?」


 ――また、婚約破棄です。


 一人、二人と結婚の話は無かったことに……するとほかの男性たちも、次々に同じようなことを言い出します。



「あの、俺、宝を探して冒険してたら痩せちゃったんです。そしたらクラスの女子全員に告白されて……俺も、結婚の話は無かったことで。」


「はあ?」


「あ、俺もこの前好きだった幼なじみに告白して振られたら、クラスの女子全員に……」


「クラスってなに?」


「俺、メガネ外したらモテモテに……」


「平安にメガネねぇだろ!」


「俺、前髪切ったらモテモテに……」


「前髪切ったくらいでなるかよ!?」


 ――しかし、少女のツッコミはむなしくスルーされ、次々と男性たちが去っていきます。


 少女は涙目になりながら、最後に残った男性を……


「み、帝様……帝様は私と……」


 でもその男性も同じように、アゴをさすりながら言いました。


「余って帝じゃん。元々ハーレム持ちだし、この前アゴ整形したらめちゃくちゃモテるようになっちゃてさ。もう、これ以上メンバーの顔と名前覚えられないからねぇ。――じゃっ!」


「整形ってなんだよー!!」


 やはり、少女のツッコミはスルーです。


 そうして男性たちは全て去り、広い屋敷にはポツリと、少女とおじいさんおばあさんの三人だけが残されました。



 そんな淋しげなところに、空気も読まずに天人たちが現れます!


「トキハキタ。ヒメ、ワレラノ世界ニ帰ロウ。」


「来たよ、ツバメさん!」


「はい、王子様! 今度はちゃんと王子様のお願いを叶えますよ!」


「アナタハ、ココニイテハナラナイ存在……ワレラノ世界ニ帰ロウ。」


「私、帰らない……」


「ヒメ、ワカッテイルハズダ。帰ラナケレバナラナイト……」


 天人たちの登場、同じ場面。


 彼らは再び少女に光の衣を着せ、少女は無表情に大人しく……は、なりません!!


 少女は光の衣を弾き飛ばし、凄まじい形相になって帰ることを拒みます。


「ここで帰れるかよ、ボケェェエエエエ!!!!

 私のプライド、ズタズタだよ! 絶対帰らないから! この世界でいい男を捕まえるまでは、私は絶対に帰らない!!」


「ヒメ、コノ世界デ穢レヲウケスギタヨウダネ……ヤハリ、ハヤク帰ラネバ……」


「いや! 絶対いや!」


「かぐやを連れて行かせないぞ!」


「かぐやは私たちの娘なのよ!」


「ツバメさん、助けよう!!」


「はい、天人たちをぶっ倒しましょう!!」


 天人たちに囲まれた三人を助けに、金の髪と青い瞳をした美少年が姿を現します。


 その姿は本当にかっこよく、後光が差して見えました。


「あ、いい男!」


「ナンダ、オマエタチハ……」


「その子は帰りたくないと言っている!

 無理矢理に連れて行くことは許さないぞ!」


「私、貴方になら連れ去られたいです!」


「黙れクソアマ! 王子様はボクのだぞ!」


 大混乱の中ですが、天人たちは強制的に少女を連れ去ろうとしています。


 ――しかし、今度はそうはいきません!


 ツバメが新しいアイテムで、天人たちに攻撃するのです!


「なろうビ〜〜〜ム。」


「ワレラニ、攻撃ナドアタラナイ。」


「甘いね、天人たち。君たちが神に等しき存在であろうとも、なろうパワーを受ければただでは済まないよ!」


 ツバメの銃からは何も出ているようには見えませんが、ツバメの言った通りに、天人たちの様子が変わります。


「コ、コレハ……ナンダ、コノパワーハ?」


「テ、低次元ニ堕トサレル……」


「タダノ好々爺ニナル……」


「俗ッポイ人格ニナル……」


「イヤァァァ……ダメガミニナリタクナイ!」


「ひゃははははははっ! 調子に乗ったな天人たち!

 おまえたちは堕ちるのだ! 馬鹿な異世界人になるがいい!――なろうビ〜〜〜ム!!」


 どっちが悪役かわからない顔で、ツバメはなろうビームを撃ちまくり、天人たちは苦しみます。


 ――これで勝てる!


 そう思える場面でしたが、その様子を見ていた王子様が予想外の行動に出るのでした!


「止めるんだ! ツバメさん!!」


 なんと……


 王子様がツバメの前に立って、天人たちをかばうではありませんか!


 ツバメはなろうビームを撃つのをやめましたが、銃を構えたままで王子様に言いました。


「そこを退いてください王子様! 天人たちを倒さなければ、少女は連れ去られてしまいます!

 彼らは高次元の存在……低次元に堕とさなければ、話すら通じない相手です!」


「でも嫌がっている! 苦しんでいる!」


「あなたはどっちの味方ですか!? 少女とおじいさんおばあさんを救いたいのですか? 天人たちを救いたいのですか?」


「どっちもだよ、ツバメさん!」


「そんなわがままは通じませんよ!

 そこを退いてください、王子様!!」


 ツバメは怒ります……


 しかし、王子様は退きません。


 超絶美少年のその顔で、真剣で真っ直ぐな目をして、ツバメに向かって言うのです!



「ツバメさん、私がわがままなのはわかってる!

 だけど私は、それでもどっちも救いたいんだ!!」



 ――キュン!!!!


 その王子様の言葉と姿に、ツバメの心臓は止まります。


 一瞬の心肺停止から立ち上がり、それでも治らない動悸にツバメがうずくまると、天人たちも同じようにうずくまってしまいました。


「ナンダ、イマノカンジハ……」


「キュン♡トシタゾ……」


「キュン♡トシタワ……」


「コノ穢レバカリノ世界デ、コンナ感覚ヲイダクトハ……」


「ヒメハコノ境地ニ達スルタメニ、ココニ残ルトイウノカ……」


「婚約破棄カラハジマル聖女ノ物語ガ、生マレルトイウノカ……」


 ――何かを感じた天人たち。


 彼らは何かを悟ったかのように、少女を連れ去るのを止め、消えていったのでした。



「おじいちゃん! おばあちゃーん!!」


「かぐやぁ……、かぐやぁ……」


「私たちの大切な娘……」


 天人たちが去り、三人が仲良く抱き合っているのを見て、王子様とツバメはひっそりその場を立ち去ります。


 平和になったその夜には、綺麗なお月様が浮かんでおりました。



 ――その、月の夜です。


 王子様とツバメは夜空を飛びながら、二人でお話をしています。


「ツバメさん……

 さっきはごめんね、わがまま言って。」


「いえいえ、良いのですよ王子様。――わがままなのが、王子様の良い所です。ボクはあなたのわがままを聞いてあげるために、生まれてきたのです!」


 そうやって二人は仲直り。


 二人の旅はまだまだ続いていくのです。


 王子様は、綺麗な月を見て言いました。


「ツバメさん、月が綺麗だね。」


「はい! ボクもです!――王子様♡」

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