第175話・イト先生親衛隊零番隊副隊長・マツカゼ
席に座って、読書を始める。
やはり読書は良い。
凄く良い。
左端の席が丁度窓側だったというのもあり、心地よい程度のそよ風と日差しが入って来て、実に読書に集中出来る環境だ。
ただ、一つ気になることがあるとすれば、クラスメイト達が俺の事を遠回しに見てザワついてることだ。
まあでも、気にするのも面倒だし、気にしないでおくか。
正直言いたければ言わせておけば良いって感じだな。
「ねえねえ。貴方があの第五王子・グレン様って本当?」
一人の女の子が俺に話しかけてきた。
身長は150センチ後半、髪は肩くらいまで伸びている薄茶色、肌は日焼けしているのか健康的な小麦色、胸はおそらくC程度、少しそばかすが目立つが顔立ちはかなり整っていた。
面倒何で無視しても良かったし、男だったら多分無視していたが、まあ女の子だし多少は応答するか。
別に男女差別主義者という訳ではないし、現在妻が3人もいる身ではあるが、俺も男だ。性欲もガッツリある。可愛い女の子には多少優しくしようという思いがあるのはある種の当たり前の話だ。
「ああ。本当だよ。あのってのが引っかかるが、俺は正真正銘、第五王子・グレン・ヤマダだよ。どうかしたか?」
「えっと、イト先生と結婚してるって本当」
少しもじもじした感じで聞いて来た。
イト先生か。イトは学園で先生してたしそう呼ばれてるのも納得だな。
「もちろんだ」
「えっと、そのじゃあ、エッチとかもしてるって本当?」
顔を赤くしながらとんでもないことをぶち込んできた。
アレだな。この質問を男がしてたらぶちのめしてるかもしれん。
というかアクセル飛ばし過ぎだろ、ブレーキ何処にいった(因みにこの世界には主に真希の手によって作られた魔道馬車が存在しててアクセルとブレーキもあります)。
というか待て?
エッチとかもしてるって本当って言った?
え?これ疑問形?エッチしてる前提じゃん。誰だよそんなことを言ったのって、イトだな。
うん。確実にイトだ。マジで何をやってるんだよ。教え子に何を教えてるんだよ。実質的な脳破壊やん。
何?教え子たちの脳破壊RTAでもやってるのか?ただでさえ俺の愚兄である第一王子の脳破壊してるんだから。
まあ、今は愚兄の愚兄も精神も全部破壊されてるけど。
「まあ、そうだな。本当だな。そもそも論としてイト本人が言ってるんだったら本当だろ」
「そ、そうだよね。やっぱり本当なんだ。そうか、やっぱり、あのイト先生が、そんな・・・でも、それはそれで、フフフ」
何か怪しさを感じるんだけど。
え?何か間違えた俺?
「一途の望みが消えた。もうこの世界で生きている意味はない。死のう」
ナチュラルに生徒の一人が窓を開けて飛び降りようとした。
周りの生徒がそれを止めながら、涙を流して励まし始める。
「俺だって辛い。それでも俺達は生きよう」
「死んだらもうイト先生に会えないんだぞ。生きろ」
「おい、生きたいと言え、言え」
「生きた~~~い。生きてイト先生に会いた~~~い」
何をやっているんだこのクラスメイト達は?
もう既に帰りたいという思いが湧いて来たのだが。
え?これが一応これからの山田王国を担う若者達?
大丈夫なのか?終わってない国として?
「薄々予感はしていたが、イトはそんなに慕われてるのか」
「それはもちろんですよ。だって一国の軍事力に匹敵する【剣舞の天魔】でありながら、私達に丁寧で優しく分かりやすく剣術を教えてくれて、美人で美しくて、愛らしく気高くて可憐で妖艶で全ての生物、いや生命体がひれ伏す圧倒的なオーラと魅力を兼ね備えた私達の誇るべき先生ですよ。
慕われないわけがないでしょ」
めちゃくちゃ早口だったな。
自分の神を相手に布教しようとする狂信者みたいだな。
「そ、そうか。まあでも確かにそうかもな。それで?そんなイトに、いやイト先生と結婚してる俺が気に食わないってことか?
だから今あそこで転がってる馬鹿も俺に突っかかって来たと」
俺を殴って拳が砕けた痛みで気絶している馬鹿を指さす。
「そうですね。何か問題でも?元々あの馬鹿はイト先生に対しての想いが強すぎてそろそろ粛清しようと思ってたらむしろ丁度良かったわ」
「そ、そうか」
ナチュラルに粛清しようとしてるな。
それだけの力があるのか?
せっかくだしどれくらい強いか見てみるか。
【万能の天魔】の力を行使して鑑定をする。
「嘘だろオイ」
「ん?どうしたのですか?」
「いや、何でもない」
そう誤魔化して本を読みだす。
今、俺が鑑定をした結果、分かったのだが、この少女は【鍛冶の天魔】に至れる素質がある現時点でも一流クラスの鍛冶師だ。
そして、その事実に自分では一切気が付いていない。
一応剣術と魔術両方が二流程度の実力があり、身体能力も準1流に近いレベルであるから同年代で比べれば突出した能力の持ち主なんだろうが、まさかまさかだな。
鍛冶の天魔は現時点で一人いた筈だから、まあ仮に天魔に覚醒しても別の二つ名を授けられるだろうが、そこじゃない。
鍛冶の天魔に至れる力を持った一流の鍛冶師であるのにそのことに気が付いていないってことだ。
ようは、彼女は一切の特訓もせずにその才能だけで普通の鍛冶師が一生かけて到達できるラインである一流の鍛冶師になってるってことだ。
何だよそれ、めちゃくちゃだな。
え?どうしようか?これ?伝えるか?
いや利用した方が良いな。
少しだけ面倒ではあるが、イトを利用してこちらに引き込めば俺の手駒に鍛冶の天魔という最高のカードが一枚増えることになる。
それはアリだな。
「あのう、急に私の顔見て驚いて声をあげたと思ったら、本を読み出すなんて、私に何かあったのですか?」
「ああ、そうだな。取り敢えず君名前は何て言うの?」
「私の名前ですか?そういえば自己紹介をしてなかったですね。失礼しました。
私はイト先生親衛隊零番隊副隊長・マツカゼと言います。
クラスメイトとして、未来の義理姉妹としてこれからよろしく」
未来の義理姉妹とかいう訳の分からないパワーワード突っ込んできてるが、一応握手の為に手を差し伸ばされたので、応じながら答える。
「知ってると思うが、第五王子・グレン・ヤマダだ。
こちらの方こそこれからよろしく」
さて、どうやって彼女を手に入れようかな。
【鍛冶の天魔】を手に入れれば大きいぞ。
ああ、非常に楽しみだ。
正確に少し怪しい所はあるけど・・・。
―――――――――――――――
次回
番外編という形で本来のゲームの世界で存在してる【刀工の天魔】マツカゼについての鼻☆塩☆塩。
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