第169話・どんちゃら騒ぎの後の朝食


 目が覚める。

 目を開けて辺りを見渡すと。

 机の上には天魔ロワイヤルのカードが散らばり、床の上には酒やらジュースやら食べかけの食事が転がり、屍の様に眠っているディスラー将軍にカゲウスに修羅。

 ふとベットを見ればイトにカレーヌにナナが寝ていた。


「一体どういう状況だ?これは・・・確か昨日は魔王を倒して、修羅と一緒に天魔ロワイヤルして・・・・・・なんか盛り上がって皆で一緒にやり始めて、気が付いたらお酒が入ってて・・・クソ、頭痛い。何だこれ?俺天魔だよな?

 よく分からないが。回復魔法・完全回復」

 自分の完全回復をかけたら頭の痛みは消える。


「何だったんだ今の痛みって、あああ、思い出して来たよ。そうだ、天魔ロワイヤルで負ける度にわざと毒耐性を下げて酒を飲むって馬鹿のゲームしてたんだった。

 それで今、この状況か・・・所謂二日酔いって奴か・・・なんか納得した」


「あ、おはようございます。グレン様」


「おお、イト目が覚めたか」


「あ。はい。その昨日は大変お見苦しいお姿をお見せしてしまいました」

 そういえば、イトも酔って口調が大分荒くなってたな。

 まあ、気にするのも面倒だし、そういうイトも悪くなかったから俺としては別にどうでもええけど。


「いや。気にしなくていいよ。俺が面倒くさがりなの知ってるだろ」


「そうですね・・・、そういえばグレン様はグレン様でしたね」


「ああ、そうだよ。そういえばイトは二日酔いは大丈夫か?」


「あ。はい。気合で今解毒させました」


「気合でって、まあ天魔だしそのくらいは余裕か」


「はい。余裕です。それで?どうしますか?皆起こしましょうか?」


「ああ・・・まあ、面倒だし放置でいいよ。取り敢えず俺は本でも読んでるわ」


「かしこまりました。では私は朝食でも作ってますね」


「ありがとう。よろしくね」

 

 俺は一人読書を始める。

 因みに読んでいる本は【読書の天魔】もといダークネスソルト先生の新作の【生まれた瞬間禁忌の化け物】って小説だ。

 内容としては若くして天魔同士の争いに巻き込まれた一人の青年が神から【禁忌の天魔】へと至る力を無理やり授けられてから生まれ変わるって作品だ。

 そんで最初の方で禁忌の力を制御できずに暴走させてしまい、禁忌の子として世界から追われるようになりっていう、割とダークっぽさはあるが、基本的には上流階級への反逆と虐げられし者の怒りがコンセプトとなってるギャク小説だ。


 これが割と面白い。


 所々、実際に不正をやってる貴族の名前が実名で出てきたり、清廉潔白で有名な貴族が実は陰で違法奴隷売買を行ってたとか、なんかもう、怒られそうというか消されそうなことを書いてあるが、まあ書いてるのが【読書の天魔】である訳だし、どうやら友人に天魔連盟創設者である真希に帝国にて皇帝の次に強いと言われてる【道化師の天魔】もいるし、大丈夫やろ。多分と言うか確実に大丈夫だな。

 

「おお、マイベストフレンドよ。それは【生まれた瞬間禁忌の化け物】ではないか」


「修羅も知ってるの?」


「もちろんだとも。この世界にライトノベルは少ないからな」


「この世界?ああ、そういえば修羅は異世界から来たんだったな」


「ああ。そうだとも、マイベストフレンドよ」


「テンションが相変わらず高いなって。しっかしそうか、異世界ねぇ。確か地球って言ったよな?」


「おお。よく知っているなマイベストフレンドよ」


「前、真希から教えて貰ったからな。いつか、言ってみたいよ。その異世界とやらに。まあ、実際に行くってなったら。面倒がって行かないかもだけどね」


「そうか。まあ、俺は戻りたいよ。異世界、いや日本に・・・久しぶりに家族に友人達に会いたいしな」


「そうか・・・」


「ああ。すまんすまん。なんか湿っぽい感じになってしまったな。申し訳ない。マイベストフレンドよ」


「いや。いいよ。気にする方が面倒だ」


「そうか・・・そうか・・・そういえばマイベストフレンドよ。結局泊まってしまって悪かったな」


「いや。いいよ別に」


「おお。それなら良かった。さてじゃあもう一泊してもいいか?」


「それは駄目だ。お家に帰ってください」


「ハハハハハハ。冗談だよ。新婚さんの邪魔は出来ないよ。さて、じゃあ俺もボチボチ変えるとするよ。世話になったな。マイベストフレンドよ」


「まあ、元気でなって、天魔にであるお前が体調を崩すことなんてないか」


「ハハハ。確かにその通りだな」


「では、またいつか」

 修羅は窓から飛び降りるようにして帰ってた。


「ハア、騒がしい奴だったな」

 大きくため息を吐く。


「でも。旦那様、楽しそうですね?」

 

「カレーヌ起きてたのかって、楽しそう?俺が?」


「はい。とっても楽しそうでしたよ」


「そうか・・・そうか、まあ、そうかもな」


「フフフ、きっとそうですよ」


「グレン様、朝食の準備出来ましたよ。一応皆の分も用意しておきました」

 イトがサンドイッチを用意してくれた。


「ありがとうイト。じゃあ皆叩き起こして朝食にするか」


「そうですね」

「じゃあ、私、起こしますね」


 かくして皆で朝飯を食べるのだった。

 

 ああ、本当にこういう日常っていいな。

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