第166話・魔王を女体化させてメイドにしようとしてる馬鹿


 扉を開けたら、魔王の肉体と真希と楽しそうに笑っているピエロもとい【道化師の天魔】がいた。

 敢えてもう一度いうが、魔王の肉体と真希と楽しそうに笑っているピエロもとい【道化師の天魔】がいた。


 そう、魔王の肉体だ。


 魔王の魂は既になく、抜け殻のような形で肉体のみがあったのだ。

 最強の魔力と力を宿している魔王の肉体、正直利用方法なんていくらでもある。最高の素材だ。


「これは一体どういう状況だ?」


「おお、久しぶりだな。グレン」

 後ろからいきなり声をかけられて振り向くが誰もいない。


「義父様、御戯れはやめてください」

 

「流石にカレーヌには気付かれてしまうか。まあ【察知の天魔】だし、仕方がないか。ハハハ」


「あ、父上、なるほど透明になってたんですね」


「そういうことだ。しかし俺の透明の力はグレンでさえ気が付かないのか」

【透明の天魔】という隠れることに特化した天魔を見つけ出すってなったら、それは【察知の天魔】とか【探知の天魔】みたいな索敵系統の能力に特化した天魔じゃないと難しいに決まってるだろ。

 マジで何を言ってるんだか父上は。

 しっかし、アレだな。凄く若返っているな父上。比喩とかじゃなくて物理的に若返っている。おそらく天魔になったことにより肉体が最適化された結果だろうな。

 更にいえば一人称も今までの儂から俺になってる。

 何というか凄く変わったな。


「久しぶりですね。それで?父上は何をしてたのですか?」


「いや、魔王と戦おうと思ってな。ただ先を越されてしまって項垂れた所だ」


「そうですか」

 魔王と自ら戦いに行くって相当に頭のネジぶっ飛んでるな。父上本当に変わったな・・・いや、もしかしたらこれが元の素の父上なのかも知れないな。どうしようもない戦闘狂で頭のネジがぶっ飛んでるのが本来の父上って・・・それは何か嫌だな。

 いやまあ面倒だしどうでもいいけど。


「それで父上、今どういう状況なんですか?」


「さあ?俺にも分からん。来た時にはもう既に魔王は抜け殻のようになっていて、そこの二人はいた感じだ」


「ありがとう、父上。参考になったよ」


「それならいいが。さて、じゃあ俺はここでは特に楽しい戦いは出来なさそうなんで、出るわ」

「じゃあ、私も戦いたいし出ますね。またね、マリア」

「ええ、また会いましょう」


 父上と姉上は楽しい戦闘を求めてこの場から去っていった。


「おい、真希これはどういうことだ?」


「「グレン君。まあ、そうだね、ちょっと僕の友達が魔王の肉体を欲しがってたしプレゼントしようかなって」」


「いや、誰だよ。魔王の肉体を欲しがるってどこの狂人だ?まあ、別に止めはしないけど、俺に面倒事が起きる様なことにはならないようにしてくれよな」


「「う~ん。多分大丈夫だと思うよ」」


「大丈夫である。はいねはいね。アイツは魔王の肉体を使って最高のメイドさんを創るだけである。はいね」

 【道化師の天魔】がなんか馬鹿なことを言いだしたのだが。


「待て?魔王の肉体を使って最高のメイドさんを創る?は?どういうこと」


「そのままである。はいねはいね。アイツは魔王の肉体を女体化させてメイドさんにしてメイドさんの格好をさせて侍らすのである。はいね、そういう奴である」


「は?いや、まあそれなら俺に迷惑は掛からなさそうだけど、え?魔王って一応この世界において最強クラスの化け物である、下手な天魔を余裕で超える程の莫大な力を持った人間を滅ぼす最強最悪の存在じゃなかったけ?それをメイドにする?」


「「まあ、そういうこともあるって話だよ」」


「はいねはいね」


「まあ、二人は納得してるし、俺に面倒事が起きないなら別にいいけど・・・因みにその魔王をメイドにしようとしてる馬鹿って誰?」


「「それはもちろん、【読書の天魔】だよ」」


「【道化師の天魔】って、俺の好きな本を書いてるあの人か。それはまた・・・まあそれならいいな。うん、俺の好きな小説家なら一切問題はないな」


「はいねはいね。自分の好きな小説かだから問題ないって、はいねはいね」

 俺の言葉に受けたのか、めちゃくちゃ笑ってる【道化師の天魔】。


「そんなにおかしいこと言ったか?まあいいけ面倒くさい。それにしても案外すんなりと魔王討伐終わったな。さて家に帰って寝るか?」


「「いや、グレン君終わってないよ」」


「え?」


 肉体のみとなっていた魔王が急に動き出した。

 俺らに向かって魔力弾を撃ち込んできた。

 それもただの魔力弾じゃない、当たれば天魔ですら致命傷を負いかねない、強力な魔力弾だ。


「消滅しろ」

 俺の力で消滅させる。

 正直、放出攻撃は俺がいる限り意味がないのと同じだ。


「おい、真希?なんか魔王が動き出したんだけど?」


「「言ってなかったけ?肉体は封印をしてただけで、封印が解けたら動き出すよって」」


「言ってないよ。聞いてないよ。お前、ほうれんそうくらい守れよ」


「「ハハハ。まあ、いいんじゃない。また封印できるように魔王を弱らせればいいだけだから」」


「え?これ再起不能なくらいフルボッコにしちゃ駄目なの?」


「「ハハハ。それをしたら【読書の天魔】が悲しんで、スランプになるかもよ」」


「真希、お前いい性格してるな」


「「お褒めに預かり光栄です」」


「ハア、しょうがない。面倒だけど、俺の本の為だ。皆やるぞ」


 クソ面倒なことに、暴走した魔王を出来る限り怪我をさせないように弱らせるというアホはミッションが始まった。




―――――――――――――――


 本が絡まないと自ら動かない主人公

 そんでもって戦いたいといってるのに、魔王と戦う機会を逃す可哀想な父上・・・ 

 因みに姉上は父上の力で一緒に透明になってました。

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