第163話・過剰戦力達と修羅君のマイベストフレンド


 その日、魔王城の目の前に16人の集団が現れた。

 

 16人という人数で魔王城を攻める。

 言葉にすればただの集団自殺と変わりがない。

 何故なら魔王城には天魔に匹敵する四天王に天魔を超える化け物である魔王、そしてその配下として英雄クラス・準英雄クラスの魔族が数百と存在するのだから。

 文字通り大国を1夜で滅ぼせるだけの戦力が揃っている魔王城に16人、それも魔王特攻持ちである勇者がいない状態で挑む考えれば、まあ、無謀に尽きる話である。

 

 ただし、その15人のうち13人が天魔であり、残りの3人も天魔に匹敵する実力者であったり、天魔に至る可能性を持った化け物であるという点を鑑みれば、それは自殺ではなく、ただの暴力となる。

 この16人のメンバーと魔王城の戦力差は実に3倍にも及んでいた。


「さて、転移完了っと。じゃあ、各々魔王の首を獲りに行きますか」


「という訳で俺は行くぜ~~~」

 真希の力で転移して早々【破壊の天魔】が門を破壊して魔王城の中に入っていった。


「「相変わらず、彼はせっかちだね」」


「そうだな。まあ、戦闘したい欲求に脳やられてるししょうがないだろ。さてじゃあ、真希?俺は今から眷属達と一緒に魔王殺す予定だけど一緒に来るか?」


「「う~ん。そうだな、せっかくのお誘いだが遠慮しよう。少し魔王城でやりたいことがあるからね」」


「そうか。分かった」


「「代わりと言ったらアレだが、彼を連れて行ってくれ」」


「彼?もしかして修羅か?」


「「ああ。そうだ。という訳だから彼を頼んだよ」」

 真希は何処かに転移していった。


「短い間だが。よろしく頼む」

 俺を見て修羅は握手を求めて来た。


 初めて修羅を見たが、容姿は何処にでもいそうな平凡な青年であった。

 ただ髪は地獄の瘴気のせいか濃い紫に染まり、手足も所々、濃い紫色に変色していた。

 そして何よりも感じるのはその圧倒的な力であった。


 俺や真希には流石に及ばぬものの他の天魔とは文字通り一線を画す力。

 おそらく戦闘型天魔が2、3人束になっても勝利を収められるかもしれない。何ならあの魔王と1対1で戦って勝てるかもしれない。それだけの力を感じる。

 なるほど、これが地獄から這い上がりし天魔か、そしてあの【嫉妬の天魔】を殺した天魔か。

 いやまあ、【嫉妬の天魔】を殺した件は面倒だし触れないけどね。


「ああ。よろしく」

 握手をする。

 特に互いに力を入れるとかもなく普通に握手は終わった。


「一個、個人的な質問をいいか?」


「答えられる範囲なら答えるぞ」

 普段なら面倒がって質問に答えるとかはしない俺だが、ここで下手に修羅に冷たい態度をとって敵対された方が面倒なので、言葉を返す。


「ハーレムってどんな気分だ?」


「は?ハーレム?・・・え、あ、そうだな。まあ男として悪い気分ではないな」

 想像の斜め上の質問が来てちょいと驚いてしまった。

 しっかしハーレムか。

 あれ?これ?もしかして修羅もハーレム築こうとしてる感じ?


「そうか。因みに聞くがどんな女がタイプだ」


「どんな女がタイプ・・・・・・」

 ぶっちゃけ、俺はある程度可愛ければ大体は行ける。

 なんたって俺は【万能の天魔】だからな。

 でも、これ正直に答えていいかな?可愛ければそれでいいって、まあ。いっか、別の回答を考える方が面倒だ。


「ぶっちゃけ、可愛ければそれでいいかな。後は俺の事を好きでいてくれたとか?まあ、俺は知っての通り【万能の天魔】なんでな」


「そうか、そうか・・・どうやら俺達は親友のようだな」

 急に上を向いて泣き出した。


 ・・・・・・


 は?


 修羅マジで何をしてるんだ?

 え?どういうこと?意味が分からなさ過ぎて逆に怖いのだが。


「ああ、すまん。混乱をさせてしまった。今のは俺の好きなキャラの台詞だ。一度言ってみたかったんだ」


「お、おう。そうか」


「まあ、でも、俺はお前と親友になりたいと思ってるのは本当だ。真希から色々とお前について話は聞いた。俺はお前と親友になれる」


「お、おう。そうか」

 真希、アイツ絶対面白がってあることないこと言ってるだろ。

 マジで俺が面倒事嫌いって知っててわざとやってるって。ふざけんなよ。


「ああ。そうだ。そうなんだ。これからよろしくな、マイベストフレンド」

 再度握手を求められた。


 勝手にマイベストフレンドにされてる。

 ・・・・・・・

 え?何コイツ?距離の詰め方が異次元やん。


「そうだな」

 ただ、ここで握手を断る訳にもいかないので握手をする。


「じゃあ、マイベストフレンドよ。この世界を脅かす魔王を殺しに向かうぞ。大丈夫。俺とマイベストフレンドなら何が来たって絶対に勝てるさ」

 そりゃ、俺には劣る物の魔王を一人でやれそうなお前と、世界最強の天魔である俺がいたら誰にも負けないだろうな。負けようがないわな。


「そ、そうだな」


「マイベストフレンドの眷属達もよろしくな」


「はい。よろしくお願いします。修羅様」

 眷属の中から代表してマリアが挨拶をする。


「よろしくな」

 修羅は普通に強いし、敵対せずにマイベストフレンドといって良好な関係を築いてくれるのなら願ったり叶ったりかもな。

 敵対された方が面倒そうだ。


「さて、じゃあ面倒だが、サクッと魔王を討伐しますか」


「もちろんだぜ。マイベストフレンド」

「そうですね。グレン様」

「はいなの。もう一回あの魔王を殺すなの」

「これで皆でついていけますね」

「神様がいるのであれば、あの悪しき魔王も瞬殺です」

「なんかもう魔王が可哀想になるくらいの過剰戦力だわ」


「ねえ?グレン行くのは良いんだけどお父上知らない?」

 姉上にそう言われて、周りを見渡して気が付く。


「本当だ。父上いないじゃん」


「第五王子様、俺の直感が元国王様は透明になって魔王と戦いに行ったといっておるのだが」


「確かに父上戦闘狂だもんな。その可能性はあり得そうだ」


「え?普通に不味くね」


「俺の直感も不味いと言ってる」


 ・・・・・・・・・

 

 流石にここで父上に死なれるのは不味い。


「おい、今すぐ走るぞ~~~」


 かくして何とも締まらない形で魔王城に突入するのだった。

 

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