第159話・外伝・会談?
「さてと、それで今回の件、どう対処をする?我としては大人しくヤマダ王国から手を引くというのを提案するが、どうだ?」
皇帝がそう提案をした。
今現在、この場において唯一の天魔であり、帝国という大国を完璧に統べる支配者である、文字通り、物理的にも権力的にも最高位に立つ存在が提案をしたのだ。
それ即ち、提案ではなく確定された事項のようなものであった。
「皇帝よ、それはちと早計ではなかろうか?」
皇帝の発言に誰もが沈黙という名の肯定を決める中、魔道通信越しに一人の人物が口を開いた。
その人物はバジリスク連合国に所属し英雄レベルの実力を持ち、地位としては総裁という実質的には皇帝や国王と同じバジリスク連合国にてトップの地位を持つ、ある意味で今この状況にて唯一皇帝に対して意見を言える人間でもあった。
「ほう。総裁よ。どうしてだ?」
「それはもちろん、問題が解決してないからな。そもそも論として私がお前みたいないけ好かない奴と魔王という人類の敵と手を組んでまでしたのは、ヤマダ王国という国が危険だったからだ。その危険なヤマダ王国に対して何も解決していないではないか?」
事実である。
今までは天魔一人しかいなかったのに、今では6人もの天魔を抱えている恐るべき脅威、それがヤマダ王国であり、バジリスク連合国はそんなヤマダ王国とバリバリ敵対をしていた。
怖いわけがないという話である。
「まあ、確かにそうだな。じゃあお前らの国だけでヤマダ王国に喧嘩を売りな」
「待て、それは私、いやバジリスク連合国に死ねと言ってるのと同じだぞ。バジリスク連合国だけではヤマダ王国に対抗できないから、手を組んだと言っておるだろ」
「魔王がおるではないか、魔王が」
「馬鹿を言うな馬鹿を。魔王がいつ裏切るかも分からん状況、最悪何かあった時に帝国が協力してくれるのであれば、まだ魔王に対抗できるが、我が国だけであれば、逆に魔王に国ごと滅ぼされかねん」
魔王とは人類の敵である、それは全ての国の共通認識であった。
今回、魔王と手を組んだのはあくまで裏切る前提であったから、最終的に帝国とバジリスク連合国の2国で魔王を滅ぼすつもりであったから、それが出来ないとなると話は変わってくるものである。
「まあ、確かにそうだな」
「そう思うのなら、手伝ってくれぬか」
「ハハハハハ。馬鹿を言うな馬鹿を。明らかにメリットとデメリットが釣り合ってないではないか」
ここで大切になってくるのが帝国とヤマダ王国はまだ今現時点ではそこまで仲が悪くないという点だ。
確かに帝国はヤマダ王国の前国王である【透明の天魔】によって自国に所属している【雷鳴の天魔】を殺されてしまっている。
ただ、逆に言えばそれだけだ。それだけなのだ。
元々自由人であり、幾度となく帝国内にて問題を起こしている【雷鳴に天魔】に対して恨みを持つ帝国人は少なくなく、今回の件も、やろうと思えば実は【雷鳴の天魔】が反乱を起こそうとしており、それを同盟国であるヤマダ王国に所属している、【透明の天魔】が気が付き阻止したという風に筋書きを描きかえればどうにでもなるという話であった。
帝国がヤマダ王国を滅ぼそうと考えたのは、上手くいえばほぼゼロの損害でヤマダ王国という脅威を排除できるかつ、魔王という人類の敵も相打ちさせるように滅ぼせると考えたからだ。
しかし、それが大量暗殺騒ぎ、それもピンポイントにヤマダ王国に対して活発的に攻めようと考えて人たちが暗殺されているとなれば話は別である。
この情報を知った時点で皇帝としてはヤマダ王国から手を引いた方がいいという結論に至っていた。
何故なら、暗殺の件は具体的な証拠等は一切ないが、明らかにヤマダ王国に対して利益があるのでヤマダ王国に所属する者ないしヤマダ王国に対して味方をする者と予想が出来る。
にもかかわらず暗殺者を一切特定出来ていないというのは=で、もしヤマダ王国に対して攻めるなどという行為をした場合は、同じように暗殺されまくり、最悪国を動かす貴族や大臣が全員暗殺されていなくなり、帝国そのものが崩壊する可能性があるからだ。
これは余りにもデメリットとして大きすぎるというものであった。
それに比べてメリットはヤマダ王国という脅威が減り運が良ければ魔王もいなくなるだけ、別に現状維持でヤマダ王国と仲良く手を繋いでいても一切問題はないというのが今の状況であると考えれば、天秤というのは何一つ釣り合っていなかった。
だから、皇帝はこの会議を開いた時点でヤマダ王国と敵対は絶対にしないでおこうと決意をしていた。
とどのつまり、バジリスク連合国の総裁は何を言っても無駄、ある意味で哀れな道化師と同じという状況であるのだ。
「しかし、皇帝よ。ヤマダ王国を見てください。あの国はこのまま放置しておけばいずれ更に天魔の数を増やして更なる脅威となるでしょう。滅ぼすなら今です」
「くどいぞ。この我がヤマダ王国に対して進行はしないと断言したのだ。話はそれで終わりだ」
皇帝は席から立ち上がり、会議の場から離れようとする。
「ま、待ってください。皇帝よ。本当にそれでいいのですか」
「黙るがいい。バジリスク連合国お前らとの同盟関係は打ち切りじゃ。もちろん魔王ともな、おい、騎士達よ。今気絶してるバジリスク連合国の馬鹿どもを送り返せ」
「「「は」」」
会議の外に待機していた、最低でも準英雄レベルの力を持った近衛騎士達が中に入り、バジリスク連合国の関係者を運んでいく。
「ちょっと、待ってk」
その様子を魔道通信越しに確認した総裁は慌てて声を出すが、それは途中で掻き消えてしまった。
何故なら皇帝が魔力塊を飛ばして魔道通信機器を潰したのだから。
かくして、会議と言えるか怪しい会議の結果、帝国とバジリスク連合国と魔王の同盟はあっさりと崩壊したのだった。
――――――――――――――――
昔、それこそ私が中学3年生の頃に考えていた作品である、【生まれた瞬間禁忌確定】という作品をまた書き直して、投稿を始めました。
取り敢えず現時点で5万文字程度上げてるので、読んでいただけると嬉しい限りです。割と面白いと思います。
定期的に新作?を書きたくなってこの作品の投稿をサボる愚かなダークネスソルトではありますが、許してください。
マジでごめんなさい。
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