第150話・外伝・【透明の天魔】はめちゃくちゃやる
儂が国王をやめて。いや全力で逃げてから数週間が過ぎた。
その間の日々は「最高」の一言に尽きた。
国王を逃げたその日から、すぐさま傭兵となり、一人で思う存分に盗賊たちとの殺し合いが出来た。まあちと、盗賊たちの技量が足りなかったが、それでも楽しくはあった。
次の日には盗賊団殲滅のおかげで上がった傭兵ギルドを片手に戦場に参加することが出来た。
参戦といってもその戦場の場所が帝国と名も知らぬ小さな小国の境界線だったので、数日程全力で走ってようやくたどり着くことが出来たのだが、まあ、でもまだ見ぬ敵を求めて走ってる時間は非常の楽しくはあった。
かくして、戦場に辿り着いた儂は明らかに劣勢であった、名も知らぬ小国側の傭兵として参戦して戦場で暴れ回った。
それはもう暴れ回った。ひたすらにめちゃくちゃに暴れ回ってやった。
身一つで帝国の立てた簡易砦に攻め込んで暴れ回って、そのまま砦ごと潰した時は、まあ凄く楽しかった。
帝国の兵だけあって中々に強く、兵の中には準英雄レベルの実力者も混ざっていたりして、それはもう歯ごたえがあって非常に楽しめた。
他にも、透明になって上で、敵の本陣の様子を伺いに行ったら、運よくそこに昔あったことのある帝国の第十四王子(18歳)がいたから、これ幸いとぶっ殺した上で、帝国を挑発するように四肢を切り落とした上でゴミ処理所に捨てておいた。
多分、というか確実に帝国はブちぎれて大量の兵士を送ってくるだろう。
出来れば天魔とか送ってくれたら楽しそうだから嬉しいわ。
我ながら暴れ回ってどころか、これでもかとめちゃくちゃにやっているけど、まあ、どうせ後処理するのは俺じゃないし、責任のある立場でもないし、良いんだよ。
自由って最高。責任のない立場って最高。
俺知らね。何が有ろうと知らね。
まあ、傭兵としてこの小国側に参戦してるけど、俺がこんなめちゃくちゃにやったら、帝国にもプライドはあるから意地でも潰そうとしてくるだろうし、少なくとも帝国からの経済制裁も受ける上に、更なる兵士の増援で小国が潰れるまで絶対に戦争は続くだろうな。
うわあああ。超絶大変そう。知らんけど。
俺はそんなこと全部忘れて戦いに明け暮れますか。
――――――――――――――――
数日後
案の定というべきか、帝国から援軍が来た。
援軍と言っても来たのは天魔ではなく、帝国の保有している騎士団数百名であったので、全員一人で殲滅してやった。
帝国の騎士団だけあって、全員が一流以上実力と息ぴったりの連携で攻撃してくるので、【天魔】である俺だったが、敢えて【透明の天魔】の透明の力と魔法の力を使わずに戦うといういわゆる縛りプレイのおかげで、それはそれは戦闘は非常に甘美なものであった。
俺自身、何度も死にかけたし、殺されるかと思った。
魔法を禁止してるので、得意の治癒魔法が使えず、非常に苦しい戦いであったが、そこが逆に楽しくて楽しく、もう笑いが止まらなかった。
斬って斬られて、斬って斬られて、騎士団を殲滅した後は身体中傷だらけ、治癒魔法をかけるのが後数分遅れていたら出血多量で死んでいたであろう。
ただ、その命を賭けた、戦いというのが何とも言い難い幸福感を俺に与えてくれた。俺に生きているって感じさせてくれた。
こうして帝国の騎士団との至福のひと時を過ごした後、俺は周りから【狂鬼】という、何とも癖の強い二つ名をつけられて呼ばれるようになった。
理由は笑いながら敵を殺してる様子と鬼のような強さを持っているかららしいが、まあ、周りの評価なんぞはどうでもいいな。
俺として一番大切なのは敵と戦うことで、自分が楽しむこと、そんな周りからの評価を気にしてうじうじ悩んだりするなんて馬鹿らしい以外何者でもない。
その後、小国の王族から功績を称えるだなんだて呼ばれたりもしたが、全部断ってやった。
俺はもう既に国王を辞めた身、わざわざあの死ぬほど面倒くさい政治の場に戻る馬鹿がどこにいる。
もう二度とごめんって奴だ。グレンじゃないが、本当に面倒くさいってな。
それから何度か帝国兵との戦いをした後、流石に俺が暴れ過ぎたのか帝国は一旦全ての兵を引いた。
それを見た小国の連中や他の傭兵たちは「俺達の勝利だ」ってそれはもうめちゃくちゃに、死ぬほど喜んでいたが、そんな訳がないと。
あの帝国がこんなにあっさり引くわけがない。
おそらく、何処かのタイミングで大量の兵士を引き連れて完璧に完膚なきまでにこの小国を潰すだろうし、いくら俺が天魔とはいえ、俺は【透明の天魔】である。グレンのような圧倒的な力を持っていればどれだけの兵が攻めてこようが全てぶっ潰せるが、俺には限界がある。
多分、というか確実に俺が戦闘に明け暮れている間に、他の帝国兵によってこの小国は落とされるであろう。
対策をしようと思えば出来なくもないが、そのためにはこの小国の全ての指揮権が必要だし、何よりも政治に介入をしなければならないから、絶対に嫌だな。
それこそ帝国に目をつけられたのが運の尽き。別に民はそんなに悪い扱いを受けるわけじゃないんだし、大人しく降伏すればいいものを。ある意味で自業自得って奴だな。
まあ、俺は気楽に帝国兵との戦いを楽しませて貰うわ。
――――――――――――
コメント欄で【社畜の天魔】とまで言われた国王様がこんなんになってしまうとは、お労しや、お労しや。
ただ、国王様や。
こんな言葉を知ってるか。
【一体いつから仕事から解放されたと錯覚していた】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます