第146話・【透明の天魔】は名を馳せる
「そういえば、父上は何をしてるんだろう?」
マリアが国王となり、割と上手くヤマダ王国を回し始めてから数日後、イトの作っていた昼飯を食べながら俺はふと疑問に思った。
「義父様でしたら、確か今は傭兵となって戦場で暴れ回ってますね」
隣にいたイトがサラッと答えてくれる。
「なるほどね、傭兵王となってねぇ、え?ま?父上、今傭兵やってるの?」
「はい、傭兵やっていますね。ネズミ眷属経由ですが、めちゃくちゃ楽しそうに傭兵やってますよ」
「あら、そう、いや待て待て待て待て待て、え?父上の居場所分かってるの?」
俺の記憶が確かだったら父上が天魔に覚醒して逃げて、見つからないから姉上を無理やり国王にさせた筈だぞ。
普通に父上見つかってるんだったら。姉上を国王にする必要なんてなかったやん。
ごめん。姉上。マジでごめん。
「いや、勘違いしないでください。グレン様。義父様は自分からネズミ眷属に接触して近状報告をしてくれたんです。今の義父様が本気で逃げたら、多分捕まえることは不可能だと思います」
「ああ。なるほどね。納得したわ。あ?そういえば気になってたけど、結局父上って何の天魔に覚醒してたんだろう?」
俺は最初父上は戦闘型の天魔に覚醒していたと思っていたけど、違ってたらしいからな、少なくとも【直感の天魔】【察知の天魔】という何かを探すという点で言えばおそらく【探知の天魔】の次に優れてるであろうと断言できる二人から逃げきれる天魔ってなると、・・・それは何の天魔なのだよって話だ。
俺は思いつかなかったわ。
「それがですね。【透明の天魔】らしいです」
「【透明の天魔】ねぇ、ハア、なるほどねなるほど。なるほどね。納得はしたわ、それはまた面白い天魔に覚醒したな」
「そうですね。具体的な能力詳細までは教えて貰えなかったですけど、それでも確認できてるだけで、自分の気配から存在、また自分の身につけている物、全てを透明に出来る力を持ってますね。こうなってしまうとディスラー将軍の直感もカレーヌの察知も全部無効化されてしまうので、中々に強い能力ではあります」
「なるほどね。そうか。それは中々に強いな。いやでもまさか父上が【透明の天魔】に覚醒するとは、戦闘型天魔じゃなかったら【社畜の天魔】とかにでもなると思ってたよ」
「まあ、確かに国王の仕事にずっと追われ続けている社畜でしたからね」
「そう思う、父上逃げるわな、あの仕事量は鬼やったわ。まあ今はマリアがやってるんだけど」
「あ、でもマリアちゃんは国王の仕事を部下に割り振ったり、余計な行事ごとを減らしたりして効率化を図っていますよ」
「ああ、なるほどね。それはいいことやな。それなら特に問題なく物事を勧められそうだ。というか父上もそれをすればよかったのに、何でせんかったんやろ?」
「確かにそうですね、なんでしょうね?」
「まあ、そこは気にしてもしょうがないか、仕事に追われ過ぎてその案が出てこなかっただけかもな」
「いや、流石にそんなことは・・・ありそうですね」
「いやでも、父上が楽しくやれていることを知れたし、一応息子として嬉しい限りやわ。まあ、面倒だし何か干渉とかはしないけどね」
「そうですね、あ、でもどうしますか?もし義父様が死にそうになったりしたら手を貸しますか?」
「いや、天魔の父上が死にそうになるって、それ天魔と戦ったりせん限りないやん。そうなったら自業自得や。父上のことは嫌いじゃないけど、俺のお母さんを見捨てた事実は消えないからな、もしも父上が天魔に喧嘩を吹っかけて死んだとしても、それは当然の摂理、因果応報って奴だな」
「確かに、そうですね」
「まあ、でも何だかんだで優秀な父上のことや、馬鹿なことはしないだろうけどね」
「確かにそうですね」
「じゃあ、俺は眠くなったし寝るわ。お休みイト」
「はい。お休みなさい。グレン様」
この時の俺は知らなかった、父上が想像以上に戦闘狂で天魔に喧嘩を売って。そのまま天魔を殺してこの世界の勢力図を大きく塗り替えることを。
――――――――――――――
正直、【社畜の天魔】にしようと思って、書いてたけど、流石にネタ過ぎたから辞めた。
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