第145話・外伝・公爵令嬢の私が国王になるまで


 私の名前はマリア。

 ただのマリアよ。

 公爵令嬢として第二王子の婚約者であったりしたけど、それも遠い過去のこと。

 今の私は師匠を心の底から敬愛し、師匠の為に生きていると言っても過言じゃない一人の弟子だわ。

 あ、後師匠のおかげで世界最強の存在の一角である天魔でもあるわ。

 

 そんな私は師匠の怠惰な生活の為にヤマダ王国の貴族達のパーティーに参加をして師匠に面倒事が行かないように調整をする仕事を行ってるわ。

 ただ、私はしがない公爵令嬢、それも婚約破棄されてしまって、学園パーティーでは結構やらかしてしまった、問題を抱えまくっている公爵令嬢、ぶっちゃけてしまうと、師匠の役にはそこまで立ててないわ。

 それよりも天魔として活躍しているイト先輩にカレーヌ先輩にディスラー将軍の方が強い影響力を持ってるし。

 それでも、私は私の出来ることを精一杯やっていたわ。


 そんなある日、国王陛下が失踪して、第一王女様、いや、キョウカちゃんが新しい国王になったわ。

 これは師匠にも言っていないのだけど、実は私、キョウカちゃんとは仲が良いの、といっても今ではなく、未来でだけど、未来で私が師匠に弟子入りをして家事をこなす際、服を町に買いに行った時に偶々出会い、服の趣味が一緒で意気投合、それから偶に模擬戦闘をしたり、一緒に食事をしたりしてたわ。

 といっても最初はキョウカちゃんがヤマダ王国の第一王女だとは知らなくて、キョウカちゃんもすっかり自分が第一王女だってことを忘れてて、キョウカちゃんのことはかなりの実力を持った傭兵ってくらいにしか思ってなかったわ。

 結局、キョウカちゃんがヤマダ王国の第一王女だってことは、回帰して、キョウカちゃんが国王になってから知ったんだけど、まあそこはどうでもいいかな。


 そんな訳で、私から見るとキョウカちゃんは未来の友人であり、未来で義理の姉、いや師匠と結婚するつもりだから、もうすぐに義理の姉になる存在、何というか気になって仕方がなかった。


 そんなキョウカちゃんは国王になってから日に日にやつれていった。

 それもそうだと思う。国王の仕事は私から見ても異常と思うレベルで量があったのだから、それは師匠も国王になりたがらない訳だ。

 それにキョウカちゃんは戦闘が大好きの自由人、国王という自由はほとんどなく、ずっと仕事をやり続けるような仕事に耐えられるわけがなかった。


 私は気が付いたら、キョウカちゃんの仕事を手伝うようになっていた。

 元々公爵令嬢であり、第一王子の婚約者として王妃として国王の仕事をサポート出来るように一通りの勉強をして来たし、未来で王妃になった時は一時期ではあるが愚王の代わりに仕事をこなしてたりもした。

 だから国王の仕事を充分にこなすことが出来たし、人手不足の現在、私が仕事を手伝うという要望は物凄く簡単に受け入れられた。


 そうして国王の仕事を手伝ううちにキョウカちゃんと話をするようになり、仲良くなり、国王辞めたいって私の前で泣き出したキョウカちゃんを見て、言ってしまった。


「私が国王を変わってあげるよ」


 と。


 別にこんなことを言うつもりはなかった。


 本当に無意識に近かった。

 ただ、心の底から国王を変わってあげたいと思ったのだ。

 私は国王になりたいとかそういう意思は一切なかったし、なるつもりもなかった。

 別に国王に絶対になりたくないという訳ではなかった、国王の仕事は大変だと思う。でも私ならばキョウカちゃんよりも早く国王の仕事をこなせるし、人員を増やして、適切に仕事を割り振って、そもそもの仕組みからも変えて行って、国王の仕事を減らすことは充分に出来る自信があった。

 強いて問題を挙げるとすればたかが公爵令嬢でしかない、私が国王をやるということが貴族や大臣にひいては国王に受けいれられるかどうかという問題だけだった。


 ただ、その問題は思わぬ形で解決した。


 深夜、キョウカちゃんと一緒にひたすら国王の仕事をこなしている最中、可愛らしい二人の双子が現れた。

 天魔に覚醒したならば誰もが一度は必ず会う、天魔連盟に所属するあの二人の天魔が。

 双子はクスクスと可愛らしい声で笑いながら言ってきた。


「面白そうだから、国王にしてあげる」


 と。


 私はその誘いに応じ、双子協力の元、まずは私が【闇染の天魔】であるということを国全体に明かすとともに師匠と結婚をして、キョウカちゃんから王位を継承した。

 

 以上

 終わり。


 そうして私はヤマダ王国の国王となった。


 自分でも余りにも早すぎてビックリするほど早く国王になれた。


 貴族や大臣に私が天魔に覚醒したと伝える時も、私が師匠と結婚するとなった時も、国民が私が国王になると知った時も、ありとあらゆる全ての出来事が必ずどこかで反対意見が溢れて揉めてしまいそうなのに、そういうのが一切なく、まるで全員が集団催眠でもかかったかのように、すんなりと事実を受け入れてくれた。

 確実にあの双子の力だと思うけど、正直得体の知れない力過ぎて怖くはなった。

 双子は双子でずっとニコニコ笑いながら、心底楽しそうにしてるし。

 

 それでも、双子のおかげで私はスムーズに国王になれたし、キョウカちゃんも国王から解放されて凄く嬉しそうだったし、私は私で師匠と結婚できたし、特に誰も損はしていない。

 うん、あまり深いことを気にするのは辞めておこう。

 それに、流石に気になって師匠のネズミ眷属に双子を調べてくれって言ったら、普通に元々双子は師匠とかなり仲が良いから問題はないチュウって返されたし。

 大丈夫でしょう。問題はない。


 まあ、一個問題を挙げるとすれば、キョウカちゃんとは普通に友達になりたかったのに、私が国王を変わってあげたことで、私のことを神みたいに信仰してることだけかな。

 うん、まあ。これはもうしょうがないと割り切ってる。 

 

 さて、私は今から国王として頑張っていきますか。

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