第140話・狂乱の悪魔(第一王女)
ヤマダ王国にてとある小さな村があった。
その村は人口でいえば100人程度の小さな村であり、多少の食料の備蓄はあれどさしてお金も持っていなければ、価値のあるような金銀財宝も持っていなかった。
村は経済的に見れば貧しいながらも、村の全員で仲良く幸せに暮らしていた。
しかし、突然悲劇が訪れる。
悲劇の内容は凄く簡単、盗賊が現れたのだ。
盗賊・・・街道沿いや人気のない場所で旅行者や通行人を襲い金品を強奪する者、また、徒党を組み小さな村や町を襲い金品を強奪し、人を捕まえ違法奴隷として売り飛ばす存在。
盗賊の数や練度はまちまちであるが、今回、件の村を襲った盗賊は総勢150人であり、違法奴隷を売り飛ばす為の独自の闇ルートを持ち、盗賊の統領に至っては1流クラスの実力を持っていた。
たかが人口100人程度の小さな村、抵抗らしい抵抗も出来ずに一方的に蹂躙されるのは想像に容易くなかった。
そして実際にそうであろう。
老人は殺され、売れそうな男と子供は奴隷にされ、見目の麗しい女性は盗賊の欲求発散のはけ口にされてしまう。
そこにあるのは救いなき絶望であった。
村の誰もが怯え、恐怖し、自ら死を選ぼうとも考えた。
しかし、すぐさま自ら死を選ぶというのはそれこそ幼い頃から洗脳教育を受けた暗殺者等でなければ難しく、普通の村人がその場で自らの手で死ぬ勇気なんてのはなかった。
かくして一つの村が盗賊の手によって潰されるかに見えた。
「おいおい、俺を抜いて楽しそうなことをしてるなぁ」
一人の女性が現れた。
彼女の持っていたのは自身の身長に並ぶ程の大剣であった、少なくとも遠目から分かる範囲で1メートル以上の大きさがあった。
それは剣というにはあまりにも大きすぎた。
大きく
分厚く
重く
そして大雑把すぎた。
それはまさに鉄塊であった。
否、鉄塊ではない、ヤマダ王国の王宮鍛冶師ではなく、王宮鍛冶師以上の実力を持った【万能の天魔】であり世界最強の天魔であるグレンが面倒くさがりながらも、姉の為にと、ミスリル3オ・リハルコン3・アダマンタイト3・ヒヒイロカネ1という配分によって作られた特性合金1000キロから生み出された、この世界において最も優れた特性の大剣であった。
その大剣はありとあらゆる全ての魔法を破壊することが出来た。
その大剣は岩だろうと水だろうと炎だろと人間だろうとドラゴンだろうと、果ては世界で最も硬いと言われているアダマンタイトすらも破壊する驚異的な破壊力を持っていた。
その大剣はどれだけ雑に扱おうと、一切手入れをしなかろうと、切れ味は落ちず、刃こぼれもしなかった。
世界で最もイカレタ大剣であった。。
硬さと頑丈さと重さを追求した、斬るというよりも叩き潰すという剣。もはや剣と呼んでいいのか悩むレベルの馬鹿が作った大剣。
少なくとも英雄レベルの筋力がなければ振り回せない大剣。
比喩とかではなく、冗談抜きで選ばれし者しか、まず持つことすら出来ない大剣。
そんな剣を自由自在に振り回すは、この国の第一王女にして、英雄の領域まで至り、天魔にすら至りかけている化け物であった。
かくして盗賊団は蹂躙する側から蹂躙される側へとなった。
「さて、盗賊団よお、私を楽しませてみろ」
第一王女は笑いながら一番近くにいた盗賊に近づき、その大剣と呼んでいいか分からない大剣を振り下ろした。
ぐちゃり
人間が潰れる音が響く。
比喩とかではなく、本当に人間が潰れた。
1000キロにも及ぶ大剣が数百キロという速度を持って振り下ろさたのだ。
重さ×速さ=破壊力である。
その破壊力を持ってして人間を文字通り潰したのだ。
いきなり自分の仲間の一人が潰れたのを見て、他の盗賊たちは後退りをする。
「何をやっているんだお前ら。あの化け物を殺せ~~~~~~、相手はたった一人だ数で攻めろ」
盗賊の首領がそう叫ぶ。
その声に反応して盗賊たちは無謀なことに彼女に襲い掛かってしまった。
斬
たった一回彼女が剣を振っただけでまるで空間から抉られたように全てが切断された。
もちろんその周りにいた人間は一切の例外なく肉塊となった。
たった一振り、たった一振りでその場にいる全ての盗賊たちに根源的な恐怖を植え付けた。
盗賊たちは我先にと逃げようとする。
だけどそれを許す程彼女は優しくなかった。
「おいおい、何をやってるんだよぉ。逃げられると思ってんのか。土魔法・土壁」
盗賊の逃げる道に土の壁が出現する。
慌てて、その土壁を破壊ないし、遠回りしようとするが、それよりも早く、彼女が動いた。
「せっかくなら足掻けよ」
斬
そう呟いて一人の盗賊を肉塊とする。
「た、助けてくれ。俺は悪くない、俺は命令されて仕方なく嫌々盗賊をしていたんだ」
斬
盗賊の命乞いに耳を貸す程、彼女は優しくなかった。否、正確に言えばここで下手に盗賊を許すよりも殺した方が楽だし。何より自分のストレス発散にもなると彼女は考えていた。
だから殺した。
剣を振り下ろし一切の慈悲なく殺した。
「ひい、待ってくれ。取引をしないか、俺は、ぐしゃり」
盗賊の統領が彼女の力を見て恐れ、何とか生き残ろうと取引を持ち掛けた。もちろん取引なんてのは全て嘘であり、なんとかこの場を生き抜くためにそう言いだしただけに過ぎなかった。
しかしそもそも論として、全てを言い終える前に彼女から返って来た答えは死であった。
150人もの盗賊を率いていた盗賊の首領は簡単に剣を振り下ろされて死んだ。
「う~ん。やっぱり物足りないな。まあ、たったの150人程度の盗賊しか率いてないゴミはそんなものか。さて、皆殺しと行きますか」
彼女は笑いながら走る。
走って盗賊を斬る。
斬って、潰して、斬って、潰して、遠くに逃げた盗賊は遠距離から魔法で撃ち殺し、ワンちゃんにかけて向かってくる盗賊は容赦なく叩き潰した。
そしてものの10分足らずで150人いた盗賊団は全員肉塊へと変わっていた。
「た、助けてくださりありがとうございます」
村の村長が少し、いやかなり怯えつつも代表して彼女に感謝の意を示した。
そして少ないながらも金銭を渡そうとする。
「ああ、金銭とかはいいよ。むしろ、そこら中に転がっている盗賊団から色々と剥ぎ取って商人でも売り、死体はまあ普通に燃やして埋めればいいと思うよ。じゃあ戦いが俺を呼んでるでいくね」
そうカッコよく決めて、彼女はその場から立ち去った。
そんな彼女と唖然として見る村人たち、そんな中一人の若者が彼女の正体に気が付いた。
「あの、大剣、大きな身長、女性だが一人称が俺、報酬を求めずに戦いに明け暮れる。まさか、狂乱の悪魔・・・いや、第一王女様なのか・・・」
狂乱の悪魔とはそのあまりの強さと一切の慈悲もなく敵を葬り去る様子から呼ばれるようになった第一王女の二つ名である。
「え、あの第一王女様だったのか。そうか、儂らの村は第一王女様に救われたのだな。ありがたや。ありがたや」
「ああ。そうだな。ありがとう第一王女様」
「ありがとう第一王女様」
自分たちの命の危機を救ってくれた第一王女に対して皆が感謝をする。
この世界、王族に対する忠誠意識はかなり高い、ヤマダ王国もその例に漏れず、ほぼ全ての国民が王族に対して一定以上の信頼と尊敬の感情を抱いていた。
そんな王族が自らの手で自分たちを救ってくれたのだ。
その王族により強い尊敬と感謝と信頼を抱くのはある意味で当たり前の話であった。
かくして、今日も第一王女の信者は増えていくのだった。
――――――――――――――
補足説明
第一王女の容姿。
身長は190センチ。性別は女性。髪の色は黒色で戦いやすい様に短髪になっている。目の色は金色。胸のサイズはEと大きめ。
体中の至る所に切り傷があり、歴戦の猛者ですってオーラをこれでもかと醸し出している。
実際に歴戦の猛者。
実力は剣術、特に大剣術が英雄レベルの中でもトップクラスの実力を持ち、魔法も準英雄レベルの力を持っている。
ヤマダ王国において天魔という超常の存在を除けば5指に入る化け物であり、何なら前までその5指にいた、カレーヌやディスラーが天魔になってしまったので、ヤマダ王国において天魔を除けば最強の存在と言っても過言ではない化け物。
第一王女なんてのはもはやお飾りのようなもので、本人は自分が第一王女という自覚を持っていないし、自分で自分が王女なんてガラではないと思っている。
というか実際にそう。何処の世界に笑って人を斬り殺す王女がいるねんって思ったけど、このライトノベルという深淵の中にはいっぱいいたいは。
お前ら王女を何だと思ってるんだ。(お前が言うなよ)
男らしくあれと強要されていただけあって、一人称は俺、言葉遣いも男らしく、粗暴だったりする。
戦闘をこよなく愛しており、強敵を求めて日夜歩き回っている。
愛剣はグレンに頼み込んで作って貰った、剛剣であり、その重量は1000キロ以上とかいう馬鹿みたいな剣だけど、いつも肌身離さず持っている。就寝中はベットが物理的に壊れるので床に置いてあるが、床が脆いと偶に床が抜けるのには困っている。
そういう時はすぐに土魔法で床ごと補強している。
因みに、グレンの実力に気が付いている数少ない存在であり、その気づき方としてはグレンに会った際に強者の勘が絶対に敵わない化け物だと盛大に警告を鳴らしたからという何とも戦闘狂らしい理由である。
その時丁度、絶対に折れずに手入れもいらない剣が欲しかったので、材料を用意して頼み込み剣を作って貰った。
グレンは下手に粘着されても面倒だと思い、面倒くさがりながら速攻で作ったが、それでも腐っても【万能の天魔】であり、莫大な魔力と身体能力を持つグレン、常人の数万倍とかいうアホな魔力がないと作れない特性合金を作ってしっかりと注文通りの絶対に折れずに手入れもいらない最強で最高に馬鹿な剣を作ってあげた。
ただ、面倒くさがりなグレンは寝て起きたらすっかりそのことを忘れてしまっている。なんで今も普通に忘れている。
なお、グレンがその剣を作ったのはグレンが12歳の時である。
以上
補足説明終わり。
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寝ぼけながら書いた眠い。
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