第139話・俺の姉上が戦闘狂過ぎた件


 ヤマダ王国には当たり前の話であるが第一王女がいる。

 彼女の名前はキョウカ・テンペスト・ヤマダ

 ヤマダ王国にて古くから存在するテンペスト伯爵家の血を引いている、貴族的にも充分な血筋を持った王女であった。

 そんな彼女は国王にとっては初めの子供であり、周りからは5歳くらいまではそれはもう大層可愛がられ、過保護に育てられていた。

 そんな第一王女の現在の年齢は27歳。

 グレンとの年の差は実に10もあった。

 そして今は結婚もせずにひたすら戦場を飛び回り、戦いに明け暮れている戦闘狂もビックリの戦闘狂となってしまっている。

 何故、こうなってしまったのかを今から記していこうと思う。

 

 第一王女は幼い頃から才能に溢れていた。


 神童の中の神童とまで呼ばれていた幼少期のグレンと比較をしてしまうと見劣りしてしまうところはあるが、それでも、5歳にして大人顔負けの剣術を覚え、言葉を覚え、自発的に本を読み出し、戦術の勉強をしだしていた。

 周りの大人からはもしも彼女が男に生まれていれば第一王子としてこの国を導く素晴らしい王になれただろうにと心の底から残念がる程であった。


 それから第一王女は周りからずっともしも男に生まれていればと思われ続けるようになる。

 そしてとある事件が起きてしまった。

 

 第一王女を生んで以降、国王との子宝に恵まれなかった。母親が娘に対して男であれと酷く当たるようになってしまったのだ。

 周りの貴族や大臣達はそんな母親の気持ちが分からなくなかったし、地位としては国王の妻の一人であり由緒正しい伯爵家の長女であった、面と向かって何かを言うような人は誰一人としていなかった。


 かくして、母親からは暴力を振るわれるようになり、男の様に生きろと強制をされてしまった第一王女は最初は酷く苦しんだ。


 無理もなかった。


 母親が当たるようになったのは第一王女が6歳の頃。

 まだ6歳の女の子が母親から男に生まれればよかったと殴られるのだ。

 それは恐怖以外の何者でもなかったであろう。


 それから、男であれと強要され続け、ダンスや裁縫やピアノやお茶といった女性らしい教育ではなく、王に相応しい政治学や剣術に魔法等の訓練をひたすらにさせられ続けた。


 そして幸か不幸か彼女には才能があった。


 政治学は僅か7歳にして大人顔負けの領域までいき、10歳の頃にはヤマダ王国の大学院を飛び級で卒業、本で読んだ知識だけで現場に通用するレベルの政治論を備えていた。王になれるとまでは言わないが、地方の領主程度であれば今すぐにでもなれる程の実力があった。

 その剣術は7歳で準2流・8歳で2流・9歳で準1流・10歳になる頃には1流の領域まで到達し、魔法は剣術よりも才能はなかったが10歳にして基本5属性全てを2流レベルまで操る全属性魔術師として名を馳せた。


 そうしてメキメキと実力をつけ、周りも女性だけど第一王女が王になっても問題なくね?

 普通にありじゃね?

 なんて思い始め。母親も第一王女を王にする気、満々となっていった、そんなある時、大事件が起こった。

 第一王女が「男らしくなるために戦争に出ます」という置手紙を残して家出、否、城出を果たし、行方不明となり、必死の捜索虚しく見つからず、1年以上も立って音沙汰がなかった為に死亡認定がなされ、葬儀まで執り行われてしまったのだ。


 国王は初めての子供がこんな形で亡くなってしまったことに嘆き悲しみ、母親は自分が男らしくなれなんて言ったからと後悔し、心を病んでしまい、引きこもるようになった。


 そして、その葬儀から4年後に王城にてとある一人の英雄が入城した。


 その英雄は5年前に陸天共和国との戦場にいきなり現れ、文字通り一騎当千の活躍を果たし、そのまま5年間で様々な敵を打ち取り、ついには陸天共和国のとある英雄をたった一人で殺し、その首を取って来たという輝かしい功績を残していた。

 また、愛国心が強く、民を守ることを第一に考え、戦時中巻き込まれてしまった村や町を救いだし、民からの信頼も非常に高かった。


 そんな英雄を称え、褒美を与えるべく国王は城に招いたわけなのだが、その英雄の姿を見て驚いた。

 否、驚いたなんていう陳腐な言葉では言い表せない程に驚愕した。


 その姿は5年前に家出をして、死んだと思われていた第一王女にそっくりだったのだ。

 もちろん周りにいた大臣も驚いた。

 ただ、流石にそんなことはあり得ないと思い、誰も声は出さなかった。


 そんな、何とも言えない凍り付くような空気の中、

 元凶である英雄は一言「立派になって帰ってきました。父上」

 と。


 盛大な爆弾発言を落としたのだった。


 かくして驚きすぎて髪が抜け落ちてしまった国王をよそに、すぐさま、本当に第一王女であるかどうかの確認が行われ、本人であると証明された。

 

 どうやら男らしく自分一人の力というのを証明する為に身分も全てを隠して身一つで戦場に出て、活躍して英雄の領域まで至り、陸天共和国の英雄を殺したから、男らしくなったと満足して戻って来たらしい。


 それを聞いた時の国王と大臣は口をあんぐりと開けて、余りにも意味の分からないことが意味の分からないことを起こし過ぎて思考停止してしまっていたらしい。


 そんな国王と大臣達の様子を他所に、「さて、父上にも報告が出来たし、俺はまだ見ぬ強敵と殺し合いがしたいから戦場に出るわ」と、何とも身勝手なことを言って、城から出て行ってしまった。

 もちろん兵士が止めに入るが、英雄の領域まで至った化け物、誰が止めることが出来ようか、簡単にいなされて、そのまま第一王女は第一王女という身分でありながらまた戦場に出て、最終的に身一つで傭兵のような形で他国の戦争に勝手に介入しては荒らしたりしている、何とも傍迷惑な戦闘狂となってしまいましたとさ。

 今は父上の必死の説得で国内にいる盗賊や魔物を殺し回っているが、まあ、それでもその本質は戦闘狂の戦闘狂であり、ずっと血を浴びるような生活をしている、到底王女とは思えない王女になりましたとさ。



めでたしめでたし



さて、ここで問題です。

こんな姉を国王にして大丈夫でしょうか。


A・大丈夫な訳ないだろ、馬鹿野郎。馬鹿野郎。馬鹿野郎。馬鹿野郎。馬鹿野郎。


――――――――――――――


夜中1時、寝ぼけながら書いた駄文。

眠い。


因みに第一王女が戦場で暴れてると知った、国王や大臣達の心の声+周りの声。


国王「お前、羨まし過ぎるって。俺も戦場で戦いてえぇぇぇ、国王辞めてぇぇぇぇ」


大臣達「第一王女様よぉおおお、何やってんだお前ぇぇぇぇぇぇ」


母親「男らしさを強要した私が悪かったけど、何で娘が英雄の領域まで至って戦場で敵国の英雄の首を取ってくるの?意味が分からない。というか怖い」


城勤めの兵士「死んだと思われてた第一王女様が戦場に行かないように止めに入ったら、一瞬でフルボッコにされた。何で守るべき王族にフルボッコにされてるんだ。この仕事やめようかな?」


国民「第一王女様最高。命を救ってくれてありがとう」


第一王女15歳の時、9歳であった、第一王子「死んだと言われて育ってきた僕の姉が敵国の英雄を殺して城に戻って来たんだけど。お姉ちゃん怖い」


当時8歳の第二王子「お母様がアレと関わったら思考が汚れるって怒った」

 

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