第137話・外伝・気が付いたら天魔になっていたのじゃが

 

 儂は何故か色々あって天魔になってしまった。

 何故、こうなったかは儂が一番不思議である。


 いや、理由というのは分かっておる。


 毒によって死にかけていた儂の体をナナ殿が治療してくれた。

 そのついでに、このまま下手に何か起きて死なれたらグレンに迷惑がかかるからと体そのものを大幅に強化してもらい、強くなった。

 で、その後にグレンの手によって儂の奪われた力が戻って来た。


 そして気が付いたら儂が天魔に覚醒した。


 これが理由じゃろう。


 詳しい原理を説明しろと言われたら、返答に詰まってしまうが、儂が天魔に覚醒した理由という点で見れば、これ以上に正しい理由は存在しないと思う。

 

 さて、話を戻そう。


 儂は天魔に覚醒した。

 これは紛れもない事実じゃ。

 じゃが、そう、じゃが、儂は何の天魔に覚醒をしたのかがイマイチよく分かっていないじゃ。

 グレンは儂が戦闘型の天魔に覚醒したんじゃね?知らんけど。という酷く曖昧な返答を儂にしてきたのじゃが、そういう予感がしないのじゃ。

 もしも仮に儂が戦闘型の天魔として覚醒をしておるのならば、自覚が出来ると思う。何かしらの戦闘に特化した技能を持っているはずじゃ、というか、持っていないとおかしい。じゃが、それがない。

 儂個人としては全体的な身体能力や魔力は天魔という名前に相応しい程度には上昇したと思うが、それ以外は特に上がった感じがみられないのじゃ。

 それでも、体は以前と比べれば確実に健康になったし、薄毛も解消された、胃痛も起きなくなった。

 寿命もかなり延びたと思う。


 いいことづくめではある、あると思ったのだが、ふと、そうふととあることを思ったのじゃ。


 あれ?儂国王をやめるの出来なくね。


 まず、落ち着いて何故王位継承で揉めていたのかを考えてみた。

 普通に儂が寿命で死んでしまうからじゃ。

 儂が死んでしまった後の王を決める必要があったからじゃ。だから王位継承で揉めていたのじゃ。

 そして、儂の寿命が大幅に伸びてしまった。


 ここから導き出される答えなんてのは一つ。

 儂がこれから国王として君臨し続けるということじゃ。


 うん、嫌じゃ。

 絶対に嫌じゃ。何が悲しくてこんな責任はある重圧もある、息苦しく常にストレスのかかる国王という仕事をこれから続けなければならないのじゃ。


 そんなことならば儂は死を選んだ方が良いかもしれん。

 それくらい、この仕事は嫌じゃ。

 

 でも、かといって逃げても確実にグレンの手によって連れ戻されるじゃろうし。

 本当にどうすればいいのじゃ。

 マジで本当に心の底からどうすればいいのじゃ。

 というか、天魔に覚醒してしまった今、自ら死を選ぶという選択すらとれなくなってしまっておるし、仮に成功しそうになっても、ナナ殿やグレンの手によって速攻で治療されてしまうじゃろう。


 え?


 儂、これから何百年、何千年と国王するの?


 絶対に嫌じゃぞ。

 でも逃げれないし、こうなったら、やはり新しく子作りして、今から生まれてくる子供に期待をするしか、でも儂の息子たちは揃いも揃って儂にストレスを大量にかけてくる、愚かな行動をするからのう、下手に子供が出来て大きくなって、そのまま愚かな行動に走って、儂の胃に圧をかけてくる未来しか見えないのじゃが?


 え?


 マジで儂はどうするのが正解なのじゃ?


 本当にこんなんならな天魔になるんじゃなかった。


 じゃが、後悔をしても仕方がない、嫌で嫌で仕方がないが仕事を終わらせますか。


 ――――――――――――――――


 天魔になってから数日が経過した。

 今の所はソルティー国との同盟の件で非常に忙しく寝ずにずっと働いておる。ただ天魔に覚醒したおかげで身体的には一切問題もなければ、すこぶる調子が良いくらいまである、少し髪の毛は抜け落ちてしまっているが。


 ハア。

 本当に憂鬱じゃ。


 そんな時であった。


 儂にとある双子が現れた。

 双子は自分を天魔連盟の使者といい。儂に二つ名を授けてくれた。


 そして、二つ名を授かって儂は理解した。


 儂が何の天魔として覚醒してどんな力を手に入れたのかを。


 そして次の日。


 儂は全てを捨ててヤマダ王国から逃げ出した。


 ――――――――――――――――――――


 バイト9時間6連勤入れてしまった。

 死ぬ。

  

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