第135話・あ、国王陛下忘れてた


 ソルティー国の公爵令嬢の件に第三王子こと兄上の諸々の問題が終わった俺は部屋に戻って眠くなったので、心地の良い眠りについた。


 以上。

 終わり。


 この時俺は完璧に、それはもう言い逃れが出来ないレベルで父上のことを忘れてしまっていたが、まあ。うん。はい。特に問題はありませんでした。


 何でかっていうと。

 ナナが治したからだ。


 この事実を知ったのは俺が寝て朝起きた時だった。


 事後報告でイトから、俺が寝た後に学校から帰って来たナナが、父上が死にかけてるのを知って、慌てて治療しましたよって報告を受けた。

 あ、ヤベエ完璧に父上のことを忘れてたなって軽く反省しつつ、嫉妬の天魔から奪い返した父上の力戻してないやんって気づくわけだ。


 で、少々面倒に感じつつも腐っても俺の父であり、この国の王、このまま力が奪われて弱いまんまってのは流石に問題大ありなんで、父上に力を戻してあげました。

 で、でだ。


 ここで俺は大きくやらかしてしまう訳だ。

 何をしたかっていうと凄く簡単。

 父上に力を戻し過ぎてしまって、そのまま父上が天魔に覚醒してしまったてことだ。

 いや正確に言えば力を戻した際に、父上の力を俺という世界最強の天魔の体で一時的に保管していたことで、その力が勝手に突然変異のようなものを起こして、天魔の因子みたいなのをたっぷり含んでしまった訳だ。

 そんで、腐っても国王であり、異常な精神力を持ち魂の容量も大きい、父上の体にいきなり天魔の因子が含まれた自分の力が戻って来たのだ。

 まあ、うん。後は簡単。

 力に適用しようとした肉体と魂が更なる変異を起こして天魔に覚醒したってことだ。


 因みにまた、運がいいと言えばいいのか分からないのだが、父上が天魔に覚醒したのにはもう一つ理由があった。

 それはナナの存在だ。

 父上が毒で死にかけていたのをナナが治した。

 その際にどうやらナナがまた毒を盛られたりして死なないように光を使って父上の体を補強して強化したらしい。

 そんで力が奪われたはずなのに、肉体レベルは以前と同等、いやそれ以上まで強くさせたって。

 マジでナナって凄いわ。本当に凄い。光を使って肉体強化とか意味が分からないけど、天魔なんてのは俺も含めて無茶苦茶出来る化け物ばかりだし、納得は出来る。


 で、話を戻すが父上が天魔に覚醒したって訳だ。


 パッと見た感じガッツリ戦闘型の天魔っぽそうだけど、多分イトやナナにも劣るし、ワンちゃんカレーヌにも負けると思う。

 何というか、戦闘経験が少ない戦闘型の天魔って感じの矛盾した存在になった。

 それはそうだよな。だって、国王として基本的にはずっと働いてたんだから。

 普通ならば何百と死線を潜り抜けて様々な強敵と殺し合い、普通だったら天魔に覚醒する前に殺されるっていう状況の中、それでも生き残り、鍛え続けて、何千万分の一という奇跡の果てに天魔に覚醒出来るって感じだ。

 だけど、そんな何千万分の一の奇跡を全部吹っ飛ばして天魔に覚醒してしまったんだ。それはまあ、歪な天魔になるわな。

 といっても天魔は天魔、めちゃくちゃ強いのは間違いないし、俺みたいな異常なレベルの力を持った天魔でもない限り父上に害をなすことは出来なくなった。


 そして、これが一番大切なのだが、父上の寿命が大幅に伸びた&若返ったのだ。

 天魔に覚醒したから、それはまあそうなんだけどって話だけど、これのおかげで王位継承問題が解決した。

 今まで王位継承で揉めてたのはやっぱり、父上の寿命という問題があったからだ。天魔でもない限り人間はどうしても寿命に縛られてしまう、父上もその例に漏れず寿命に縛られていた。

 だからこそ、自分が寿命で死ぬ前に、老いてしまう前に王位を継承させようとしてたのだ。

 だけどそれがなくなった。

 これから父上は老いもしないし、寿命もかなり延びた。

 王として君臨してくれるだろう。


 というかアレだな、父上を天魔に早く覚醒させればよかった。まあ、今更だな。

 真希が来て、父上になんている二つ名を授けるのか分からないが、割と今から楽しみやわ。


 という訳で今日の結論。


 父上が天魔になったんで、王位継承権問題が解決しました。

 ヤッタネ。


―――――――――――――――


 という訳で我らが胃痛の国王様が天魔に覚醒しました。

 これで王位継承権の問題は解決しましたと見せかけてからの。まあ、はい。という訳で次回をお楽しみに。


 

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