第133話・どうやら俺の兄上の精神性は異常異質以外の何者でもなかったらしい
今、俺の目の前に広がるのは第三王子もとい俺の兄上とその婚約者どころか結婚式まで挙げたソルティー国の公爵令嬢の二人が英雄レベル以上の魔力と身体能力を持って激しく殴り合っている様子であった。
後、ついでに俺が分離させたゲームプレイ者。いわゆる異世界からの憑依者も気絶して転がっている。
まあ、何でソルティー国の公爵令嬢がこんな英雄レベル以上馬鹿げたの力を持ってるのかってのは、流石に分かったわ。というか理解をしてしまったよ。クソ面倒なことにね。
ようはこいつ【嫉妬の天魔】として覚醒してたってことだな。そんでもって、後は少し前に具体的にはカレーヌに二つ名を与えに来た時(68話)に真希が言った通りってことだ。
そうなると、この公爵令嬢は魂憑依の犠牲者、セリカと似たような状況に置かれていたって訳だ。
それを意図せずに俺が解放してしまったと。いやマジでまさかこの娘があの件の【嫉妬の天魔】だったとはねえ。いやはやですよ。
ハア。さて、これからどうしようか。
ぶっちゃければ何でこんな状況になったかって言えば、まあ、俺が多少は悪いかもしれないけど、それでもねえ、何というかクソ程面倒くさい。
流石にこのまま放置するのはアレだしな。
それに俺の精神衛生的にセリカを思い出すし、サンちゃんを助けてあげてもいいなって思いはあるな。
という訳で選択肢としては、3つかな。
一つ目は面倒だし、全員消滅させて綺麗さっぱり終わらす。
ありっちゃ、ありだが、倫理的に終わっているから辞めるか。流石に兄&被害者であるサンちゃんを消滅させる程、倫理観は狂ってないよ。
二つ目は放置だ。面倒だし、俺は何も見てない知らないで部屋に戻ってふて寝する。ワンちゃん起きたら綺麗に片づいているって未来があるかも知れないしね。
といっても問題の先送り、もしかしたら綺麗に片付くなんて馬鹿なことを考えたが、まあ流石にあり得ない、ほぼほぼ100%悪化して最悪の未来、二人が相打ちして死ぬとか起こりそうなんでなしだ。
三つ目は俺の最強の力を使って止めに入るだ。
つまり暴力で解決をするってことだ。やはり暴力。暴力は全てを解決する。
となると、まあ三つ目が一番安パイかな。
いったん、俺の力で止めた後に、二人の要望をすり合わせて、最良の未来を探しますか。
「喧嘩両成敗って奴だ。怠惰の権能発動・強制怠惰」
俺の力によって怠惰となりその場に座り込む二人と思ったら、兄上がまさかまさかの俺の怠惰の権能をはねのけて立ち上がって来た。
「グレンよ。今俺は理解した。理解してしまった。理解したくなかったが理解をしてしまった。俺の愛したサンは本当のサンであり偽物のサン、そして俺の愛したサンはサンではない別の異世界からの来た醜い魂だったんだな」
急に悟ったような目をしてそう呟く兄上。
何というか、何で理解してんだよ?今の間に何があった。殺し合いしかしてないよな?何その意味の分からない賢者タイム?
「グレンよ。俺には新しい力が2つ目覚めた。一つはありとあらゆる全てを操る【マリオネット】もう一つはありとあらゆる全ての記憶を見ることの出来る【オープンメモリ】、そしてさっきの戦闘中に【オープンメモリ】を使って全てを理解してしまったんだ。だけど、それを理解したくなくて、分からなくなって。自分でも感情の制御が上手くいかなくて。狂いかけていた。・・・ありがとう、グレンよ。俺を止めてくれて」
ヤベエ、全然そういうつもりはなかったし。何なら今知った衝撃の事実まであるのだが、このまま恩を着せた方が都合が良さそうだし。うん、勘違いさせたままにしておきますか。
「どういたしまして。この恩を忘れるなよ兄上。それはそれとして、兄上はこれからどうしたい?」
「これからか。そうだな。俺はサンを愛している。それはもう俺の全てを捧げても良い程にな。そして今気絶しているこの悪女は元は俺の愛したサンの魂だ。それがどれだけ醜くてもその事実は変わらない。だからグレンよ。頼みがある。この悪女の今の醜い外見を俺の大好きなサンの外見に変えることは出来るか?」
その言葉を聞いて、俺は何となく察してしまった。
第三王子は、兄上は別のベクトルで狂っていると。異常な精神性を持った化け物であると。
つまり、兄上はサンの形をした肉体を新しく得た力【マリオネット】を使って永遠に自分の愛する自分の思い描く理想の行動をさせ続けるということだ。
中には一応憑依者の悪女が閉じ込められているが、おそらくその魂には自由意思というのは絶対に訪れないだろう。永遠にそれこそ兄上が死ぬか、飽きるまで肉体を操られ続けられるだろう。
自分の体が兄上という異常者に良い様に操られて好きなように蹂躙されて、それを永遠に眺めることしか出来ない。逃げようにも決して逃げれない。また、肉体として俺が手を加えるから睡眠という概念もない肉人形ゴーレムという形になる。
かなり頑丈に作ってあげるつもりだし、まあ、24時間365日その意識を保ち続けるってことは確定だな。
うわ。自業自得以外何者でもないが、エッグいな。数日で精神が発狂するやろ。まあ、俺の知ったことではないな。
うん。兄上の為にもやってあげますか。
「オッケー。錬金魔法・人体錬金・改造魔法・人体改造・強化魔法・完全強化・防御魔法・防御力超強化・後は一応おまけで精神魔法・発狂防止っと。これでかなり乱暴に扱っても壊れない兄上の望む物の完成だよ」
「おお。ありがとうグレン。この恩は一生忘れないよ。俺に出来ることがあったら何でも言ってくれよな。じゃあ、サン一緒に部屋に戻ろうか」
「はい。ダリア王子、いえ。私の愛する旦那様」
かくして、二人は幸せそうに手を絡めながら部屋に向かって歩いていきました。
めでたしめでたし、いやまあ、一人は一ミリも幸せじゃないだろうけど。
さて、じゃあ、後は本当のソルティー国の公爵令嬢にしてサンちゃんの後始末と行きますか。
面倒だけどね。
――――――――――――――――――――
取り敢えず、次回に持ち越します。
それと皆様ゲームプレイ者にして憑依者の悪女の末路はどうだったでしょう。
ある意味で自業自得の因果応報、当然の報いというものですね。
自分の行動によって生まれた被害がそれ以上の形となって自分に返ってくる。
行き過ぎた嫉妬心、いや、この場合は欲望に近いですね。
行き過ぎた欲望は自分の身を滅ぼしてしますってことです。もしも彼女が変に欲をかかずにソルティー国で大人しく逆ハーレムを楽しんでいればこんな結果にはならなかったでしょう。
サンと話し合いって互いに良き理解者であり友人となり協力し合い生きていく未来もあったかもしれません。
具体的には普段はサンが体を使って生きて、それを見ながら憑依者がゲームプレイ者としての知識を使ってサポートをしたり人生相談に乗ったりとか。
そして、本物のサンと第三王子が恋に落ちてそのまま結婚、ヤマダ王国へと向かった際にグレンと出会い、そして魂分離からの肉体創造でグレンから美しく決して老いることのない若い体を与えられて、サンと生涯の友人として幸せに生きるってストーリーもあったかもしれません。
まあ、あくまでたらればの話。
ただ、人間行き過ぎた欲望は身を滅ぼすよって話です。
昔話の教訓見たいですね。
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