第130話・外伝・悪女がふざけるなふざけるなってなる支離滅裂な話
私は今ヤマダ王国にいる。
理由は簡単だ。私がヤマダ王国の王妃となり、そしてヤマダ王国を起点に世界征服に乗り出して世界に君臨する女王となるためだ。
一件無謀そうに見えるが、私にはこれが出来るという自信がある。
なんたって私はこの世界の主人公なのだから。
そして私の知っているゲームとは違うけど、ヤマダ王国には4人も天魔がいる。私も合わせれば5人だ。
きっとこの世界の主人公である私の為ならば、あの天魔連盟も協力してくれるだろう。
それを考えれば戦力は更に増える。
他にもゲームの知識を使って今後天魔に覚醒する可能性のあるキャラ達を集めれることだって出来る。帝国の秘密通路や知られてはいけない秘密だって知ってるし、魔王を騙して一時的な協力関係を結び利用しても良い。
ああ、本当に夢が広がる。
ああ。やっぱり私はこの世界の主人公だ。
前世はただのチュートリアルだ。
この世界こそが私の本当の人生なんだ。
ただ、不安点もいくつかある。
ゲームでは幾度となくお世話になったグレン師匠が何故か、天魔に覚醒しておらず、グウタラ怠惰王子として城にいる点。
あくまで私の記憶の中だが原作では存在していなかったと思う、【剣舞の天魔】イトという存在がいる点。
その他、幾つか私の知っているゲーム知識と違う点があるし、明らかにおかしい所がある点。
それらは多少は不安だ。
だけど多分きっと大丈夫だと思う。
だって、私はこの世界の主人公なのだから。
むしろポジティブに考えよう。この不安点はむしろ、私に有利に働くのではないかと。
そうだ、きっとそうに違いない。
この世界の主人公である私がそう思うから。そうなのだ。
私が絶対なのだ。
だからそうきっと全ては上手くいく。
胸の中にある、言葉で言い表せないような不安はきっと気のせいだ。気のせいな筈だ。
―――――――――――
ヤマダ王国にて、今私はパーティー会場にいる。
主役はもちろんこの私。
第三王子を従えて、貴族達全員が私に敬語を使い、こぞって私を褒めたたえる。
ああ。本当に素晴らしい。
話を聞いたところ、今まで王位継承1位と2位であった、第一王子と第二王子が両方とも失態を犯した上で、現国王の激しい怒りを買って実質的な王位継承剥奪が行われたらしい。
これによって繰り上げで私の第三王子が今現在の王位継承権1位となっている。
これは紛れもない事実であった。
素晴らし過ぎる。
何事もなければ確実に第三王子が国王となり、私が王妃として君臨出来る。
今回のパーティー会場にいる貴族達はそう言って私を更に褒めたたえる。
褒められて悪い気はしない。
私に愚かにも従っている、貴族共を見下しながら、用意された料理に舌鼓を打った。
―――――――――――
楽しかった歓迎会パーティーは終わり、私は今来賓様に用意された部屋にいる。
第三王子は国王に呼ばれて今はいない。おそらく国王から、地位の継承としての話をしているのだと思う。
帰ってきたらいつ私が王妃となるのか伝えられるはずだ。
そうなったら、後はもうパラダイスだ。
第三王子は私に完璧に惚れている。私の言葉なら何でも聞くってレベルで惚れている。
つまり、私にとって凄く都合の良い人形ってことだ。
ああ。早く王妃になりたいな。
この国全てを、ひいては世界を私が統べるまで後少しだ。
ああ、本当の楽しみだ。
―――――――――――――――
何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ。
何処で間違えた。
おかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしいおかしい私はこの世界の主人公だぞ。
何でだ。なんでなんだよ。
帰って来た第三王子は私に言った。
自分は王にはなれないと。
だけど私との結婚は認められたと。
そう嬉しそうに言った。
でも、駄目だ。
駄目なんだ。
そうじゃないんだ。
第三王子、お前が王になって私がヤマダ王国の王妃とならなければ意味がない。
ふざけるなふざけるなふざけるな。
じゃないとお前はせいぜい顔が良いしか取り柄のない私の夫になる価値のない木偶だ。
ふざけるなふざけるな。
私はこの世界の主人公だ。
そうなんだ。
だから私が絶対にこんなのは認めない。
どんな手を使ってでも私が王妃となってやる。
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