第127話・国王様(父上)の哀愁漂う背中
目が覚めたら机の上にイトが作ってくれたハンバーグとパンにサラダが置いてあった。
ありがたいなって思いながら、のそのそとベットから這い上がって、食事を取る。
美味しいって思いながら、読みかけの本を読み始める。
途中、自分で手を動かして食事を取るのが面倒になったので、万能の天魔の力にある念能力を使って、ご飯を口に運ばせる。
凄く楽だ。
俺は動かなくても勝手にご飯が口に運ばれるし、悠々自適に本を読んでいられる。
いいね。この時間は凄く良いわ。素晴らしい。正に至福の時と言っても良い。
本当に今の俺は満たされているな。
復讐も終わったし。大切な眷属もとい家族がいて、俺が結構好きにやらかしても、後処を理勝手にやってくれる。
俺に対して害をなせるような存在もいなければ、俺の邪魔をしようとする存在もいない。仮にいたとしてもすぐに始末出来る。
ああ、本当に満たされているな。凄く良い。
面倒事がなくて、好きなことを好きなだけ出来る。
怠惰に自堕落に惰眠を貪っても怒られないし、ご飯食べたいなと思ったら用意される。
ああ、本当に素晴らしい。素晴らしすぎる。
このまま俺は永遠に皆と共に幸せに怠惰を貪り続けるのだろうな。
俺がいつか全てに飽きて自ら死を選ぶその時まで。
俺は一人、そんなある意味で馬鹿みたいなことを考えながらご飯を食べて本を読む。
その時だった。
コンコンコンコン
ノックの音が聞こえた。
俺は、ノックするような人って誰だよ?なんて思いながら探知の力を行使しようとした時だった。
「すまん。儂じゃ。グレンに話したいことがあって来た。今、大丈夫かのう?」
生気が失われたってくらい、疲れ切っている父上の辛そうな声が聞こえた。
まあ、父上がこんなに疲れるのはほぼほぼ100%どころか120%俺のせいなので、少々申し訳ない気持ちになりつつ、何かあったのかと思い、念魔法でドアを開ける。
「父上、どうぞ、入ってください」
「ああ。ありがとう。グレンよ。さて早速本題に入らせてもらう。グレンよ。どうかどうかカレーヌ殿を騎士団長に戻るように説得してください」
父上は入ってそうそう、俺に綺麗な土下座をかました。
何というか、見ていて悲しい気持ちになった。何が悲しくて実の父親の土下座を見なければならないのか。
でも、なるほどね、カレーヌを騎士団に戻して欲しいか。
確かに俺がやらかしまくったってのはあるけど、めちゃくちゃ仕事多そうで大変そうだからな。
そんな中カレーヌが騎士団長を脱退することによって生じる、新しい騎士団長探し&それまでのカレーヌの仕事の肩代わり先を探すってなると、まあ、控えめに言って地獄やな。
それは父上も声に生気が無くなって、心なしかってレベルじゃあねえくらい禿げる訳だ。
そんで、俺に土下座か。
あれ?でも待てよ、俺一応カレーヌに問題事解決の為に働けって言わんかったけ?
「父上、今はカレーヌ、元騎士団長として俺のやらかした問題解決の為に仕事してないですか?俺確かそういう命令をくだした記憶がありますけど?」
「はい。確かに今はカレーヌ殿が手伝ってくれています。ですが、ひと段落したら辞めると公言しておりまして、ただ、カレーヌ殿が騎士団長として君臨しているだけで、騎士団員のやる気も上がって仕事の効率が上がるのです。それにカレーヌ殿自身もとても優秀で事務能力に戦闘能力と両方の力が高く、また、騎士団員含め初めて会った人に対してでも、その人がこなせる量の適した仕事を瞬時に振り分ける能力も備わっており、カレーヌ殿のおかげで終わりが見えないと思える量の仕事がかなり減っていったのです。ですからどうか、どうか、お願いします。カレーヌ殿を騎士団長に戻してください」
なるほどね、確かに【察知の天魔】である、カレーヌなら事務作業も的確に行る方法を察知してこなせるだろうし、初対面の人でも察知してどれだけの仕事が出来るか理解出来るだろうからな。確かにそれは優秀だ。
う~ん。正直な話をすればカレーヌが騎士団長に戻っても俺は一切のデメリットがないんだよな。
だって、俺のお世話をしてくれるのはイトがいれば十分なのだから。
でも、騎士団長をやめたのはカレーヌの意思だし、出来ればその意思は尊重してあげたい。
かといって土下座をしているこの哀れな父上を突き返すのも忍びない。
どうしようっかな。・・・・・・・・・。よし、決めた。折衷案で行こうではない。
「じゃあ。こうしようか。俺は一応カレーヌに騎士団長に戻ってあげてと頼んであげるよ。多分俺の言葉は何でも聞くだろうから。騎士団長に戻ると思う。でもその代わりにカレーヌが長期間拘束されるような仕事はふらないで上げて、カレーヌは俺と長く一緒にいたいから騎士団長の仕事を辞めたんだろう。だから長期間拘束される仕事をなしにすればいい。後は天魔に覚醒している優秀なカレーヌのことだ。仕事自体は前と同じ量あってもかなりの早いスピードで終わらせられるだろう。多分。この約束を守れるならカレーヌが騎士団長に戻るように頼んであげるよ」
「分かった。約束しよう。絶対にカレーヌ殿が長期間拘束されるような仕事は振らないようにする」
「オッケー。じゃあ、頼んでみるわ」
早速念話を使ってカレーヌに連絡を取る。
【カレーヌ、今大丈夫?】
【はい。大丈夫ですよ。旦那様】
【早速で悪いけど、騎士団長に戻ってくれない?いやあ、父上に土下座して頼まれちゃってさ、その代わりに長期間拘束されるような仕事は絶対に頼まれないようにしたから】
【かしこまりました。旦那様がそれを望まれるのならば、私カレーヌは喜んで騎士団長に戻りましょう】
【おお。ありがとう】
【その代わり、一つ頼みがあります】
【お?どうした?】
【私も旦那様の部屋に本格的に住んでもよろしいでしょうか。幸い、昨日旦那様が空間魔法をかけてくださったおかげで部屋は広くなりましたし】
【あ~なるほどね、じゃあ、そうだな丁度今父上いるし、隣の部屋を開けて貰ってカレーヌの部屋にするか、そんで適当に壁に穴開けてドアを作りますか】
【あ、ありがとうございます。旦那様】
「という訳で父上、カレーヌからオッケー貰えました。その代わりに俺の部屋の隣がカレーヌの部屋になりました」
「おおよそ何となく理解出来た。分かった、今すぐに両隣の部屋と向かいの部屋3つを確保しよう」
「お、流石父上、相変わらず優秀ですね」
「ああ。隣はカレーヌ殿、次にイト殿、そして向かいの部屋はナナ殿用の部屋、そして残り2つは来客用で、いいか?」
「はい。大丈夫です。いや~ぶっちゃけそこまで要求するつもりはなかったですが、貰えるものはありがたく貰いますわ」
「その代わり、何かあった時には儂を助けてくれよ」
「まあ、出来る範囲かつ私がそんな面倒に思わなければ助けますよ」
「ありがとうグレン。では儂はそろそろ仕事に戻る。1日ほどで部屋は使えるようにしておくから安心するのじゃ」
「オッケー」
父上は仕事に戻っていた。
俺はそのなんとも言えない哀愁漂う父上背中を見ながら、父上、どっかのタイミングで発狂して全部投げ捨てて傭兵になりそうやなって思ったが、まあそれをしたら俺が意地でも連れ戻すから、無意味なことだな、なんて中々に鬼なことを考えていた。
まあでも、カレーヌが騎士団長に戻ったし、多少はストレスも減るやろ。知らんけど。
あ、そういえばこの国の王って誰になるっけ?
第一王子と第二王子はまあ絶対に無理だろうし。
俺もやるつもりはないし、となると、・・・・・・・誰だ?
第三王子か?う~ん。まあいいや、俺知らね。ぶっちゃけ王子じゃなくて王女が王位継承をしても一切問題はないと思ってるしね。
まあ、なんとかなるやろ。知らんけど。
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面白いと思って頂けたら嬉しい限りです。
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