第122話・復讐~憎悪と悪意と殺意を込めて~ 前編


 俺の目の前でクソ野郎もとい俺の父親、それでいてこの国の王をしている愚者がゲッソリとした顔で正座している。


「それで、クソ野郎、俺が何故、お前をボコボコにしたか分かるか?」


「えっと、今私の横で失禁をしている私の愚かな息子のせいでございましょうか」

 どうやらクソ野郎はマリアンヌの件で俺がブちぎれていると勘違いしているようだ。

 まあ、もちろんマリアンヌの件に対して思うことがないと言えば嘘になるが、ぶっちゃけ。そっちはそこまで気にしていない。

 という訳で不正解だったので俺はクソ野郎の顔面を殴る。なお、何度も移動するのは面倒なので固定魔法をかけてクソ野郎は正座状態から動けないようにしている。

 万能の力は超絶便利だわ。

 そしてすぐさまナナがその傷を治癒する。


「はい。不正解。という訳でもう一回聞こうか?俺が何故、お前をボコボコにしたか分かるか?」

 我ながら鬼みたいなことをしていると思う。

 ただまあ、父上じゃなかった、このクソ野郎の行いを思えば妥当な所だろう。それに殺していない上に傷もつけないという慈悲もかけてるしな。


「えっと。その、えっと。すみません。少し考えさせてください」

 なんかふざけた答えが聞こえた。

 うん。舐めてますね。


「ご~~~」

 俺は敢えて5カウントを始める。


「よ~ん~」


「さ~ん~」


「に~い~」


「あ。分かりました。もしかして私がイト殿と一緒に貴方様を将軍として派遣してあの件を怒っていらっしゃるのでしょうか」

 違う。

 それは別に怒ってない。気にもしてない。何ならイトが【幻覚の天魔】に復讐する機会を与えてくれたから、感謝してるくらいだよ。

 という訳で俺がぶん殴ってナナが魔法で傷を治す。


「不正解。次だ次。よ~ん~」

 今度は4カウントだ。

 間違えるごとにカウントを減らしていきましょうか。

 え?カウントがゼロになったらどうするのかって?もう一度フルボッコにしてから5カウントしなおしだな。

 我ながら鬼より鬼、というかもはや悪魔の所業とさして変わりないな。まあいっか。気にするのも面倒だし。


「さ~、「ちょちょっと、待ってください。グ、グレン様、もう少しお時間を。考えるお時間を頂きたい」お前は馬鹿か」


 少しふざけた戯言が聞こえたので俺は蹴った。

 ナナはすぐにその傷を治す。


「死にます。これ以上は死んでしまいます。グレン様お慈悲を」

 痛みで口調も人格も変わってる気がするクソ野郎、流石の俺も可哀想だと思えてきたが、まあ、そう思うのが面倒になったのでやめてカウントを始める。


「さ~ん~」


「に~い~」


「い~ち~~~」


「ゼロ」


 ドゴン

 思いっ切り蹴飛ばす。

 俺の力が強すぎたのか、固定魔法が解けて壁にぶつかる。


「ご主人様、それ以上の威力でやると即死して死んでしまうかもなの」

 ナナがそう言いながらクソ野郎を魔法で完璧な状態へと回復させる。


「ああ。ごめんごめんナナ。ありがとう」


「まあご主人様が殺したいと思ったら殺せばいいなの」


「いや。流石に殺しはしないよ。うっかり殺してしまったらその時は、まあその時だけど」

 

「分かったなの」

 俺とナナの会話を聞き、それはもう目に見えるくらい顔が真っ青になるクソ野郎。

 それと同時に本当に命の危険にさらされて走馬灯でも見て、何かに気が付いたのか。いきなりさっき自分が書類仕事をしていた書斎まで走り出す。

 俺はとある可能性が頭に思いついたので待つことにする。


 30秒程でクソ野郎が一冊のノートを持って来て帰ってきた。


「グレン様、こちらのノートにはグレン様のお母様に対して嫌がらせを行った貴族及びメイドの名前と、お母様暗殺計画を立てて実際に実行を起こさせた真の黒幕とその詳細、そして誰が本当にグレン様のお母様に害を与えようとして誰がそれを止めようとしたか、どこの貴族家がグレン様のお母様にどのような行いをしてどのような扱いをしたか、また、その他、幼少期のグレン様を利用しようと考えて近づいた貴族等々。私が事情を話しましてディスラー殿とカレーヌ殿に力を借りつつ、全力で調べあげた情報が全て記載してあるノートとなっております。

 どうぞお納めくださいませ。

 それと私が過去に行ってしまった失敗、グレン様のお母様に対して暗殺される危険性があったのにも関わらずに護衛をつけなかったということに対しましては心の底よりお詫び申し上げます。

 大変申し訳ございませんでした。償いきれないとは分かっております。許してくれだなんて虫の良いことは口が裂けても言えません。全ては私の力不足と思慮が足りなかったゆえに起きたことです。本当に申し訳ございません」


 クソ野郎、いや父上の土下座を見た。

 なんかこう、俺の父上に対する怒りの溜飲のようなものは、父上の謝罪&土下座で思った以上になくなった。

 それにお母さんも何も父上を殺したいほど憎んでたわけじゃないし。今の父上の姿を見たらきっと流石に可哀想に思えて精神に治癒魔法をかけつつメンタルケアをするだろうな。

 うん。ぶっちゃけ俺やり過ぎた。まあいっか、復讐なんてのはやり過ぎなくらいが丁度いいしな。


「父上のことは許すよ。まあ、何だ。俺も正直やり過ぎた。という訳だから、お母さんの件はこれでなし。全部水に流そう。父上はいつも通り国王の仕事頑張ってくれ。俺のグウタラ生活の為にな」


「グレン様ありがとうございます」


「あ~、グレン様ってのはやめてくれ。なんかむずがゆい、前のようにグレンでいいぞ」


「・・・分かった。ありがとう。グレン」


「ああ。という訳だから今からこのノートに書いてある本当に復讐をしなければならない屑どもを皆殺し、もしくは。死んだ方がマシと思えるような地獄を見せてくる。後始末は俺の眷属貸すけど、任せていいか?」


「ああ。大丈夫だ。いずれこうなるだろとう思って多少の根回しはもう既に済ませてある」


「あ。そうなの。流石父上、人間としては終わってるけど、相変わらず国王としては優秀だね」


「あ、ありがとう」


「まあ、という訳だから。ナナいくぞ。今からが本当の復讐の始まりだ」


 かくしてこの瞬間に数多の貴族の死が確定した。


――――――――――――――――

補足説明

1・何で国王は事前にグレンのお母様に害した貴族を纏めてるノートを用意してたの?

 グレンが天魔であるという事実が描かれた手紙を読んだ後、もしもの備えとして用意をしてました。人間としては屑だけど、国王としては優秀なのが国王様ですから。


2・何で1のノート作りにカレーヌとディスラーが協力していて、それをグレンに伝えていないの。

 二人共明確ではないもののグレンの過去を大雑把に知っています。

 なので、国王から説明を受けてグレンの為にと協力しました。

 また、グレンは過去と向き合うのに対して消極的な姿勢を見せていた為、無理にグレンに対して嫌な過去を思い出させてもと思い、二人共秘密にしてました。

 本当に出来た眷属ですね。


3・何で国王は1のノート作ってるのに、グレンに拷問?されてる時にすぐに答えが出てこなかったの?

 ボコボコにされ過ぎてて意識が半分飛んでたからです。

 南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏


4・最後、国王の口調変わってない?

 ボコボコにされた結果、素が出てる。


――――――――――――――


 という訳で次回、本格的な復讐となります。

 多分、残酷な描写になってしまうと思うので苦手な人は読まない方がいいかもしれません。

 残酷な描写かけかけって思う方は星を入れて下さると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る