第113話・外伝・悪女の娘と憑依者の魂 ~そして世界は【嫉妬の天魔】を生む


 この物語は68話の【嫉妬の天魔】にてちらっと出て来た現在の【嫉妬の天魔】の物語であり。次の物語に大きく関わってくる少女の話となります。

 一応本編とはそこまで関係ないですし、読まなくても問題はないので読み飛ばして貰っても大丈夫です。


――――――――――――――――


 とある有名ゲーム【乙女ゲームと呼ばないで】内のソルティー国には5つの公爵家が存在する。


 その中の一つショウユ家には有名なクエストが存在している。


 そのクエストの名前は【悪女の娘に救済を】である。


 複雑でかなりの難易度と様々なルート、そして重たすぎる過去辺を持っており、全てのルートを攻略するのに10時間かかるという中々に凄いクエストである。


 そのクエストの内容を簡単に説明するとこんな感じだ。


 10年前。


 とある公爵家当主は伯爵家の娘と政略結婚をしました。


 政略結婚とはいえ、イケメンで能力のあった公爵家当主に対して伯爵家の娘は惚れ、夫に尽くすようになりました。


 夫もそれを受け入れて。二人は幸せに暮らしていました。


 だけど。そんなある日、悲劇は訪れます。


 公爵家当主がとある男爵家の娘に一目惚れをしたのです。


 その娘は女神と間違われるほどの美貌と全てを許し慈悲の心をかける聖女のような大きな器を持ち。皆からは文字通り聖女と呼ばれていました。


 そして公爵家当主はその娘に惚れ込み、自分の妻に隠しもせずに堂々とアプローチをかけ始めました。


 最初は嫌がってたその娘は段々と公爵家当主に惚れていきました。


 そしてそれを良く思わなかった、妻は様々な嫌がらせを行います。

 だけどそれは全て空回りし、逆に公爵家当主を怒らせる結果となります。

 そうして起こった公爵家当主こそ夫は過激な思想を持ち、自分の妻に罰を与えようとしました、しかし聖女のような心を持ち実際に周りから聖女と呼ばれる娘はそれを全て許しました。


 でも、逆にそれが妻の心を逆なでします。

 そしてある時、自らの手でその娘を殺そうとナイフを懐に忍ばせて襲い掛かりました。


 幸いなことにすぐさま護衛の者に取り押さえられましたが、この事件をきっかけに妻としての身分をはく奪されてとある塔の一室に閉じ込められるようになりました。


 そして皆から彼女はこう呼ばれるようになります。


 聖女を殺そうとした最悪の女。


 そう悪女と。


 だけど何の因果か神のいたずらか、悪女の彼女のお腹には小さな命が宿っていました。


 相手はもちろん公爵家当主。


 愛する夫の血を引く子供ということで産み落とされた彼女は悪女の血を引く子供として同じように塔に閉じ込められて生活を送りました。


 使用人から侮蔑と暴言に軽蔑を兵士からは暴力を受けながら成長していきました。狭い狭い塔の中、文字通り地獄のような環境でその赤子は育ちました。


 しかし6歳の時に母親が謎の急死を遂げて孤児院に入れられることとなります。


 そこでも悪女の娘ということで虐待を受けながら育ち。そのまま奴隷として売られ、最初は運の良いことに老夫婦に引き取られて12歳まで元気よく育ちますが、老夫婦が亡くなり、その息子と名乗る人物が財産を全て強奪、書類上ではその娘に遺産が相続される手筈となっていたが。それも裁判官に金を握らせてもみ消し。また奴隷として売られる。


 そこで15歳まで様々な場所を転々として人間の愚かさと醜さを嫌というほど知り、更なる地獄のような経験を積み、全てに絶望した彼女を幸せにするというクエストです。


 因みにそんな悪女の娘である彼女の名前はスペイン語で聖女を表すサンでありました。何とも皮肉が効いている話です。


 そんなこのクエストのルートは主に4つ存在します。


 一つ目は皆殺しルート。

 悪女の娘・サンと共に今まで自分を虐げて来た、奴隷商はもちろんのこと今まで自分が苦しんできたのに助けなかった町の人や腐った貴族に兵士、そして老夫婦から資産を奪った屑まで、もちろん孤児院の人も皆殺しにした上で、公爵家当主を殺して聖女も殺して使用人も殺す。


 血に濡れまくるルート。


 このルートでは最後にサンが山のような屍の上で高笑いを上げながら、「ありがとう」って言ってナイフで自ら命を絶つという滅茶苦茶に後味の悪い終わり方をする。

 だけど一定以上の人気があり。この4つのルートの中では3番目に人気のルート。


 因みにステータスカンストレベル(天魔クラス)の力がないとこのルートは見れない為やりこみ必須。


 二つ目は乗っ取りルート。

 血筋として公爵家当の血は流れているので彼女の魅力と教養のステータスを一定ラインまで上昇させた上で、貴族達の開いてるパーティーに自分の友人として招待。

 そして彼女が公爵家当主の長女であり、公爵家当主の手によって奴隷として売られたいたことを噂として流す。


 その後、血統確認を魔法で行われて。しっかりと公爵家当主の血が流れていると証明されたら、様々な裏工作をして彼女が公爵家当主となれるように陰で動く。


 時には軽い悪事に触れつつも、他の候補者を蹴落とし、最後現在公爵家当主でありサンの父親を暗殺もしくは洗脳・説得して公爵家を乗っ取るというルート。


 このルートでは最後公爵家当主として激務に追われながらも幸せそうな彼女の姿が見れる為二番目に人気のルート。


 三つ目は無関心ルート。


 復讐とか乗っ取りとか考えずにただただ幸せを追い求めて彼女が幸せとなれるように操作キャラを使って色々と動くルート。


 ルートによっては操作キャラが男の場合は結婚出来たり、一人パン屋さんで働いたり、花屋さんで働いたり、特訓させてそこそこの力をつけさせて冒険者にさせたり。学園に一緒に通ったり、パーティーメンバーにして一緒に魔王に挑んでみたり。


 かなり様々な形で彼女を幸せにすることが出来るルート。

 一番人気のあるルートであり多様性のあるルート。


 最後の4つ目はその場で救うルート。

 ネット民からは皮肉と嫌味を込めてパトルートと呼ばれている。


 内容は凄くシンプル。


 奴隷として売られているところを救い出した後。ある程度会話を進めていくと選択肢によって「私を今すぐ楽にして」という選択肢が出る。

 そして選択肢を進めると「私は死んだお母様に会いたいの」という言葉と「それに私のおじいちゃんとおばあちゃんにもね」と言ってこちらを潤んだ目でじっと見つめてくる。


 そして剣を抜くと「一思いにね」

 そう言って優しい笑みを浮かべる。


 そのまま剣で心臓を突き刺して殺すと最後、あのパトラッシュのように小さな天使達が彼女の周りに現れてそのまま白い靄のような魂だけが宙に浮き、最後幸せそうな笑みを浮かべて亡くなってる彼女のカットが出てクエストクリアとなる。

 この最後の様子からパトルートと呼ばれている。


 一番人気がないが、報酬面で言えば会話だけで終わり、かなりの経験値が得られる凄く美味しいクエストという何とも言えない後味の悪さを感じるクエスト。


 因みに獲得経験値がめちゃくちゃ多いからRTAにて多用されているというのはある意味ご愛嬌である。


 以上これが彼女の主なルートであり。

 そして今から始まる物語の主人公の彼女が送るはずだった未来・世界線の一つである。


 さあ、ではもしも悪女の娘の幼少期にゲームプレイ者の女性が憑依したらどうなるか。


 彼女はサンは何を選択してどう生きて、そしてどういう結末を迎えるのか。


そして待ち受ける運命とは一体何なのか。


 それは神のみぞ知る。


――――――――――――――――――


読んでいただきありがとうございます。

少しでも面白いと思っていただけましたら星やハートを頂けると嬉しい限りです。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る