第109話・共通の趣味を持ってると話ってめちゃくちゃ弾むよね


「やっぱり魔王殺しの英雄譚は面白いな」

 グレンはマリアと一緒に自室にて魔王殺しの英雄譚の二周目をしながらそう呟く。


「そうですね確かに魔王殺しの英雄譚は面白いですね。それにしてもグレン様の好みって変わらないですね」


「どうしたマリア?好みが変わらないって?」


「いえ、私が回帰する前もその本を読んでいたので」


「あ、マジで。なるほどねそれは確かに好みが変わってないな」


「そうですね。今の様に楽しそうに読んでいましたよ」


「そうかそう。ん?というか待て、確かマリアって回帰してるんだよな?未来の記憶を保持してるんだよな?」


「はい」


「だよな。じゃあ、この魔王殺しの英雄譚の続きとか読んでたりする?今、主人公が仲間全員の犠牲の元、満身創痍ながらも魔王の元まで辿り着くっていう絶体絶命の所で終わってるのだけど。いやもう続きが気になって、朝と昼と夜しか眠れないんだけど」


「ああ。今はそこまでしか行ってないんですか、一応そこから魔王と主人公は死闘の末、主人公は右目と左足に右腕、両耳と口の中の歯と内臓の半分程を失いながらも、何とか勝利します」


「いや、思いの外死闘してるな」


「はい。この戦いのシーン、全部で5万文字ありました」


「5万文字、それは何というか凄いな。もはや作者馬鹿だろ」


「確かにそうかもですね」


「それで、続きは?」


「あ、はい。それから魔王を倒した主人公ですが、体はボロボロ、勇者の力も戦いの際にほとんど使って残りカス、もう死ぬってなった時に思い出したのは今までの仲間との思い出でした。それが走馬灯のように主人公の頭に流れます。具体的には1万文字程」


「それは熱い展開だね。いや待て1万文字って走馬灯かなり長いな」


「いや全部のストーリーを振り返ってたのでそこまで長くは感じませんでした。普通に凄く良い展開でした」


「なるほど。それは面白そうだな。しかし、今までってなると、やっぱり最初の村での魔物暴走・四天王襲来での幼馴染二人と父親の死、村は全滅生き残ったのは自分のみという、あの地獄のような展開からか」


「はい。あれは心に来ましたよ」


「そんで次の展開となると冒険者となって一緒に冒険をすることになった、主人公の初めての相手であり互いに想いあったセリアの死か」


「あれは、辛かったです。セリアちゃんのおかげでようやく主人公が立ち直れたと思ったのに」


「そんで、師匠の死と学園での友人、そしていけない関係になった先生が魔族に洗脳されて敵に回って最終的に自らの手で殺すという、あの中々にストレスかかる展開かな」


「はい。最後死ぬ瞬間に洗脳が解けて学友達が「死にたくない」と叫ぶ中、先生だけが「愛してる」っていうのが、なんかもう呪いでしたね」


「ああ、確かに、主人公には死んだとはいえセリアという大切な人がいたからな。まあ、下半身で先生といけない関係になった主人公が屑かもだけど」


「ハハハ。それ言ったらお終いですよ。まあ思春期の男子何ですから許してあげてくださいよ」


「そんで、学園が終わったらもう一回冒険者編行って、仲良くなったドラゴンニュートのゴリアが人間に殺されるアレか」


「ゴリアは優しいドラゴンでしたからね。主人公との約束を守って人間を殺さないようにした結果・・・っていうのが、なんとも言えない気持ちになりますね」


「確かにゴリアは魔王殺しの英雄譚の中でも屈指の優しいキャラだわ」


「それで、その後にゴリアの死体から新しい装備を拵えてこれからもゴリアは俺と一緒だってシーンは正直恐怖でしたね」


「まあ、友人の死体を身に纏うって感じだからな。確かに恐怖だな。まあ、俺はそこら辺は気にせんかったよ。面倒だし」


「師匠は少々の矛盾点とか嫌なシーンは全部、面倒で流す人でしたね」


「まあな。その方が本は楽しく読める。まあ、それでゴリアの後は王国編からの将軍の特攻劇だな」


「あれは私泣きましたよ」


「確かに、かなり感動したわ。まあ将軍が余りにもカッコ良すぎて影が薄くなってるが、一応主人公とかなり仲良くなった姫様もそこで死んでるけどな」


「それは蛇足ですよ。正直将軍がカッコ良すぎました」


「まあ、確かにな。そんで将軍特攻劇終わった後、勇者パーティー結成編行くんだよな」


「ああ、あそこは珍しくストレス展開ないですからね。賢者の塔・コロシアム・新聖教会に盗賊ギルドから、それぞれ賢者と剣王と聖女と盗賊王を引き抜いて勇者パーティーを結成させましたね」


「ああ、だけど魔王城に行くまでに全員死ぬんだよな」


「まあ、そうですね。アレは酷かったですよ。魔物の肉が硬くて不味くて、しかも魔物によっては幻覚作用とかあって、途中、盗賊王が幻覚に囚われて殺してくれって懇願するのを実は恋仲になってた聖女が必死に治癒魔法で治そうとするけど、それまでの戦闘で魔力はすっからかんで効果はなくて、そうして幻覚によって発狂して仲間に襲い掛かろうとした所を剣王が止めて、一瞬、本当に一瞬だけ正気に戻った盗賊王が剣王に一言「殺してくれ」そう呟いて。その想いを受け取って消えない罪と業を一生背負う覚悟で剣王が盗賊王を殺すって、あのシーンは本当にえぐかったですね」


「ああ。本当にアレはえぐかった」


「で、その後に聖女が、何故殺したと発狂して、そのまま自ら人知れずに死を選ぶ。しかも死体はいきなり現れた四天王の一人であり愉快犯の魔族によって玩具にされてぐちゃぐちゃの状態で登場。剣王は盗賊王を殺した業に心をやられて、一人発狂しながらその愉快犯の魔族に突撃して相打ちに」


「で、最終的に賢者と主人公である勇者二人だけで魔王城に辿り着く」


「でも、待ち受けるのは恐ろしいトラップの数々に強力な魔物と魔族」


「ひたすらに足掻いて戦って戦って戦って足掻いて、そんな中最後の四天王戦で賢者は殺される」


「「そしてようやく、魔王城の前に辿り着く主人公」」

 二人の声が綺麗に重なる。


「何というか、今まで面倒くさがってそういうのはいらないの思ってたけど中々にこうして同じ趣味を持った人と語り合うのは楽しいものだな。」


「フフフ。未来の師匠も全く同じことを言ってましたよ」


「ハハハ。そうか。そうか。それは俺らしいな」


「そうですね。師匠らしいですね」


「それで、走馬灯のように思い出に浸った後どうなったんだ」


「えっと、そこから主人公はもう一度立ち上がるんです。自分が今こうして魔王を倒したのは皆のおかげだ、それに報いる為にも自分は生きなければならないと。立派に生きて天国に行って皆に最高の人生だったと笑ってあげるんだと。そう言って」


「おお。それは胸熱だな。なるほど走馬灯によって、皆の事を思い出した。だからこそ生きなければならないか。いいね実にいいね」


「そうして立ち上がった主人公は自分の傷を治せるものを探す為に、ボロボロの体を引きずりながら魔王城の後ろにあった部屋の扉を開けます」


「ほう。そういえば魔王と勇者が対峙する最後の挿絵に扉があったな。なるほどあれは伏線になってたのか」


「はい。そういうことですね。それで話を戻しますが扉を開けた先にはただひたすらに広がる真っ白な空間に何万、何十万、何百万という人の魔物の魔族の死体が何かの規則性を持つように並んでました」


「うわ。それは予想外の展開来たな。それで、それで、どうなるの?」


「その空間の中心の一つのシンプルな木でできた机と椅子。そしてその奥には大きな魔方陣が二つありました」


「ほお。面白くなってきたな」


「主人公はその机に近づくと、引き出しがあることに気が付きます。その引き出しを開けるとそこれには魔王の日記がありました」


「魔王の日記。うおおお。魔王が死んでから魔王の日記が出るか、魔王が何を思い、何をしたかったのか。ようやく今までの伏線が回収されるのか」


「そうですね。一応、日記の内容を最初から説明をするとかなり長くなるので要約して話しますが良いですか?」


「ああ。もちろんいいとも」


「日記の最初には魔王が元々小さいけど平和な村に住んでいて幸せだったというところからは始まります。そんな中いきなり現れた人間によって将来を誓いあっていた女の子の魔族が攫われて奴隷にされて村は滅ぼされるっている中々に重たい話が書きなぐったように書かれてました」


「ほお、魔王にも魔王なりの理由があるって感じか。それでそれでどうなったの?」


「えっと、そこから魔王は幼馴染を取り戻す為に必死に努力をして強くなるっていう内容で進みます。そして幸か不幸か魔王には神が与えたと言ってもいいレベルの才能がありました。最強の才能と血の滲むような努力の果てにたったの3年で世界最強クラスの力を手に入れた魔王はとある魔法理論を生み出します」


「魔法理論?てことは理論上だけ生み出したって感じか」


「そういうことです。その魔法の名前は時空魔法・回帰。そう記憶を保持した状態で過去に戻る魔法です」


「ほお。なるほど。そう来るか」


――――――――――――――


というわけで今回は主人公がマリアと仲良くなる回です。


――――――――――――――


少しでも面白いと思っていただけましたら星やハートをいただけると幸いです。

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