第105話・目が覚めたら愚兄の婚約者とメイドであり【剣舞の天魔】が隣で寝ていたのだが、いやどういうこと?
目が覚めたら愚兄の婚約者と俺のメイドであり【剣舞の天魔】であり俺の愛する人であるイトが隣で寝ていた。
・・・・・・・・・・
「は?」
驚きの声が漏れる。
二人はさっき見た時と変わらずすやすやと心地の良い寝息を立てながら幸せそうに寝ている。
・・・・・・・・・
「は?いやえ?これはどういうこと?」
もちろん俺の疑問に答えは返ってこない。
「取り敢えずイトは100歩譲って分かるし、俺の隣で寝ていても問題は特にない。ただ、もう一人の方は不味いだろ。確か愚兄の婚約者であり公爵令嬢だよな?完璧にアウトだろ」
「イト。起きろ。何がどうなってこういうことになっている」
俺はイトの体をゆするが完璧に寝入っており気が付かない。
「イトは天魔だし。最悪寝なくてもそこまで問題ないんだけどな。というか【剣舞の天魔】という戦闘型の天魔だから感覚も相応に強化されててゆすれば起きると思うのだが。一体どれだけ安心して心を許しきっているんだよ。いやまあ世界最強の天魔である俺の隣だしな、それはそうか」
・・・・・・・・・・
イトも愚兄の婚約者も爆睡を決め込んでいる。簡単に起きる様子ではない。
「ハア。面倒だし、二度寝するか」
諸々と考えるのが億劫になった俺は全部を投げ捨ててもう一回布団に潜って根守に付いた。
――――――――――――
「グレン様、起きてください」
「ああ。イトか。おはよう」
「はい。おはようございます。グレン様」
「それで、何で愚兄の婚約者が俺の隣で寝ていた?というか何で今、俺のズボンを愚兄の婚約者が手をかけている?意味が分からないのだが」
そのまんまの意味であり、言葉通り文字通り、愚兄の婚約者がグレンのアレをアレする為にズボンを下ろそうとしていた。
「えっと。師匠と一緒になりたいかなって」
「は?」
グレンの思考は軽くパンクした。一応世界最強の天魔だが、英雄レベルの知能を持っているが、パンクした。
それだけ今の状況と言葉の意味が分からなかったからだ。
少なくともグレンには自分が愚兄の婚約者から師匠と呼ばれる覚えもなければ、好意を持たれる覚えもない、果てはこの暴挙をイトが許し、なんなら推奨しているのがマジで意味が分からなかったのだ。
「おい。イト。一から説明してくれ」
「グレン様、私からではなくマリアから聞くのが一番だと思います」
「マリア?ああ、そういえばマリアって名前だったな。分かった。じゃあマリアよ。俺に説明をしてくれ」
「はい。師匠。実は・・・・・・・・・・・・・・・・・」
マリアは話した。
全てを話した。
自分が回帰者であること、回帰した後めちゃくちゃやったこと、グレンによって救われたこと元【闇染の天魔】であったこと。第一王子が狂王になること。
全部を話した。
「なるほど。・・・・・・・納得はした。ただ幾つか気になる点がある、いいか?」
「はい。私が知ってることであれば何でもお教えします」
「じゃあまず。父上は現国王は何処にいった?少なくともこんな事態になる前に自らの手で第一王子を殺す人だと思うが」
これは確信を持って言い切れる事実であった。
今の国王は国の為ならば自分の息子さえも捨て駒に使える合理性を持ち、冷徹で冷酷な判断を即決できるだけの精神力があった。本人も準英雄クラスの実力を持っており罪を犯した貴族の首を自らの手で刎ねた話は有名である。
そんな国王もとい父上が第一王子の暴挙を許すとは到底思えなかったのだ。
「国王様は傭兵になって殺されました」
「は?え?どういうこと?」
「そのまんまの意味です。国王様は第一王子に王位を譲った後、嬉々として傭兵となり、戦いに明け暮れ、最終的に戦争に出ていた【雷鳴の天魔】に殺されました」
「なるほど。それは何というか、ある意味父上らしいな。父上は隠していつもりだろうけどかなりの戦闘狂だからな。一応納得はした。じゃあ次【探知の天魔】は何故第一王子を殺さなかった」
「おそらくこの国を見限っていたのでしょう。もちろん第一王子が王位に就くのを支持したというのに負い目を感じていたというのはあると思います。ですがそれ以上にもうこの国に未来はないと感じて独立した方が自分の為、ひいては自分の領民の為になると思っていたのでしょう」
「なるほど。納得した。じゃあこれで最後の質問だ。マリア、お前はこれからどうしたい?」
「これから・・・ですか」
「ああ、そうだ。今現在のマリアの立場は非常に微妙なものだ。少なくともまだ罪を犯していない第一王子に対して行った暴力行為に学園パーティーで出してしまった闇の波動、投獄とかはないだろうが尋問はあると思うし、周りからは確実に距離を置かれるし、ヤバい奴もしくは呪われた奴だと思われるだろう。その上で問う。これからどうしたい?」
少なくとも俺はマリアには兄上もとい第一王子を拷問にかけて殺す権利はあると思っている。未来の行動であり、まだ第一王子が何も罪を犯していないとしても、これからそれだけの罪を犯す可能性があり、第一王子によってマリアは心身共にぐちゃぐちゃに破壊されている。
だから復讐してもいいと思うし、今のマリアにはそれだけの力がある。天魔には至れないだろうが数週間ほどで準英雄クラスまでの力は簡単に取り戻せるだろうからな。
そして俺はマリアがどんな選択をとってもそれを肯定するつもりでいる。
マリアはそれだけ辛い目にあっているし、イトもマリアを認めているのだから。
「私は、私は師匠の妾になりたいです」
マリアは大声で俺の想像のはるか斜め上を行く回答をした。
「は?え?」
イトが俺の方を見てニヤニヤしている。
これは、もしかしなくても嵌められた?イトやりやがった。唆しやがったな。
「グレン様。私は賛成ですよ。妾じゃなくてグレン様の第三メイドという形ですけど」
第三メイドという名前の妾ねえ。いやはや何というか。ハア。
「分かった。じゃあマリアを俺の第三メイドにするよ。ただし妾うんぬんは一旦パスだ」
「あ、ありがとうございます。師匠」
「フフフ。ありがとうございますね。グレン様」
マリアとイトは二人して嬉しそうに手を絡ませ合っている。ハア、そういえば俺のベットでマリアとイトが寝ている時点で二人が繋がっているというのに気が付くべきだったな。
これは俺の失態だ。
まあいっか別に指摘する方が面倒くさい。
「というわけでイト、責任持って父上にこのことを伝えてこい、必要だったらカレーヌとディスラー将軍の力を使ってもいい」
「分かりました。グレン様。今日中にでもマリアをグレン様の第三メイドとして認めて差し上げましょう」
「ああ。よろしく頼んだ」
「じゃあ。マリア、グレン様のお世話よろしくね」
そう言ってイトは部屋を出る。
俺とマリアは二人っきりになる。
少し気まずいな。さて、今からどうしようか。
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