第101話・婚約破棄から始まるとある未来の惨劇
「マリア、お前との婚約を破棄する。これは決して覆すことの出来ない決定事項だ。もう既にお前の父親にも我が父である国王にも書類を送ってある」
学園で行われたパーティー会場にて第二王子グリアの婚約者である。否、婚約者であった、マリアに対してそう残酷な言葉を告げた。
そんな第二王子の隣には可愛らしい一人の美少女が抱き着くように寄り添っていた。
その美少女の名前はセッカ、とある伯爵家の令嬢であり、未来を予知するかのような行動の数々、慈愛に溢れた性格、たった一人で魔物の軍勢を相手に出来る程の準英雄クラスの実力、そして非常に美しい容姿を持ち民からは聖女と讃えられている偉大な女性である。
少なくともその功績は王都にも轟いており、地位自体も伯爵家の令嬢と普通に高い、王子の婚約者としての格は充分に足りている女性であった。
また、セッカのおかげで伯爵家の領地経営に商会経営が非常に上手くいっており。伯爵家自体の持つ影響力もそれに沿って大きくなり。公爵家に迫るとは言わないもの下手な伯爵家とは比べ物にならない程の力を持っている。
そんな聖女と呼ばれる人格的にも優れた彼女が何故か第二王子の側にいる。
あの悪名高き第二王子の傍にいる。側にいてまるで恋人のように振舞い、第二王子がまともな頭を持っていればしないであろう婚約破棄という愚かな手を打たせている。
そう第二王子を破滅の道へと向かわせているのだ。
学園にて行われたパーティーであり、その場にいるのはほぼ全員学生という身分ではあるが、しかし、ほぼ全員が将来家を継ぐ貴族であり、皆、それ相応の教育を受けて来たしっかりと頭が回り計算も出来る者である。
そんな政治的にも大きな意味を持つパーティーである。
そんな場所で第二王子が婚約破棄をしたのだ。
だからこの状況について、件の伯爵家の令嬢が聖女と呼ばれる令嬢が今現在は中立派として存在しているが清廉潔白であり正義と忠義を重んじ、貴族の血よりも能力が大切だと述べる実力主義派、少なくとも第一王子か第二王子のどちらを選ぶとなったらば、確実に第一王子を選ぶという情報は少しでも情報収集能力があれば知っている。
知って理解出来て、その後の計画を理解出来るし分かってしまう。
つまりどういうことかというとこれは罠であるのだ。
第二王子を唆してわざと婚約破棄をさせて、その影響力を落とすと共に、適当に第二王子の母親に邪魔されたとか理由をつけて、第二王子の元を去る。
結果として第二王子は貴重な公爵家の後ろ盾を無くすと共に身勝手に婚約破棄をしたということで罰を受ける。
第一王子は強力な伯爵家と公爵家を味方につける。
第二王子派閥は大幅に弱体化して第一王子派閥が大幅に強化される。
つまりこれは第一王子派閥からの策略なのだ。
まだ第二王子派閥の方が優勢であったが、この手が決まったことにより、その優位性はこの計画が上手くいけば一気にクリアさせる。
それだけ大きな手であり、一切の冗談抜きでこの王位継承戦において完璧なる決定打となる一手であった。
だけどそれは思わぬ形で簡単にあっけなく崩れ去って、事態はより混沌を極めていく。
――――――――――――――――
時は遡るのではなく。そのまま進む。大きく進む。ひたすら進んだ。
それはあり得たかもしれない。否。もしも原作通りに進んでいたならば起こっていた。とある未来の地獄のような話である。
それは婚約破棄から始まった。
今とは違い治癒能力には優れているものの人格は頭の中お花畑というのが相応しい無駄に優しいだけの少女が第二王子に恋をした。そして第二王子もその少女に恋をした。激しく恋をして愛した。
そしてそれは皮肉にも第二王子を優しく強い人間に変えてしまった上で、それに耐えきれなかったとある女性、否、第一王子の婚約者であるマリアの嫉妬・嫌がらせが引き起こした悲劇にして喜劇にして誰も幸せになれない物語の幕開けの合図となった。
婚約破棄から始まったあの悲劇。
誰も想像出来なかった。誰も予想出来なかった残酷で、ある意味正反対ここに極まりの悲劇にして惨劇にして喜劇的な第三者からゲーム的に見れば面白いなで終わる。
ふざけた話。
簡単に凄く簡単に言えば、マリアは婚約破棄されたことにより色々あったが第一王子派閥が王位継承戦に勝利して、第一王子が王となり。そのせいで国が滅んだ。
否、国を滅ぼした。
たった二人の手によって国は滅んだ。マリアは高笑いを上げながら国を滅ぼした。
自分の生まれた国を滅ぼした。
まず。婚約破棄により、第二王子派閥の一部貴族が離反し、第一王子派閥が強くなり、マリアの実家の公爵家も第二王子派閥についた。(この時繋がりを強める為にマリアと第一王子が婚約を結んでいます)
それにより第一王子が王位継承戦に勝利した。
それが地獄の始まりであった。
第一王子、否、国王が乱心したのだ。
いや乱心というよりも、もっと分かりやすくいえば闇落ちしたのだ。
貴族という生き物の醜さに人間という生き物の醜さ残酷さ。
そして世界の不条理に晒されて。
王というのは清廉潔白でやっていけるような職ではない。時には悪事に目を瞑りながら、自らの手で無実の民を犠牲にする手段を取らなければいきない。
それが王である。
ましてや、それが人口1千万を超える大国であるならばなおさらだ。
それが第一王子には出来なかったし、耐えられなかった。第一王子は国王の器ではなかったのだ。
でもやらなければならなかったし。やらないことにより更なる犠牲が生まれもした。
それに気が付けない程第一王子は馬鹿ではない。でも出来なかった。
恐れて怖くなって出来ずに逃げた。
その結果気が付けば内乱が起きていた。
当たり前の話であった。第一王子派閥はほとんどが悪しき行いを嫌い清廉潔白を主とする貴族である。
そんな貴族が民を見捨てて一人逃げた王を許すか?
許すわけがない。
もしもそこに王の悪しく部分を引き受ける優秀な頭脳と残酷さ冷徹さを持った家臣がいれば話は変わったであろう。
しかし、その家臣となれるかもしれなかった人物は全員が第二王子派閥に所属しており、そして国王の手により、処刑されるか追放処分という重い罪を背負わされて残っていなかった。
だから結局全ては自業自得であった。
悪しき所から目を背けて、禍根を残さない為に貴族を処刑させて追放させた第一王子の否、国王の自業自得であった。
そして国王は闇落ちした。
じゃあ、やってやろうと全てを悪に染めてやろうと。
自分は国王として自分の好きなように生きて好きなようにしてやろうと。
それから闇落ちした国王は自分の好きなように生きた。
暴食をして女に溺れて、国庫を私用で使いだして、気に食わない奴は処刑した。
そんな国王を諫めようとした当時王妃であり正妻であったマリアは乱心した国王によって国家反逆罪で捕まり、歪んだ国王の手により拷問を受けた。
かつては愛した国王、否、優しく誠実で民を思い、民を愛した第一王子。されど今は歪み闇に落ちてしまった狂王。
第一王子として国を憂いていた姿は何処にもなかった。欠片もなかった。
今あるのは闇と欲望に呑まれた醜い喋る肉の塊。
そして運命とは悍ましく恐ろしいもので、当時マリアの腹には一つの命が宿っていた。
相手はもちろんかつて愛した国王。
されど国王による拷問でお腹の子は死ぬ。死んでしまった。あっけなく簡単にその命は失われてしまった。
冷たい牢獄の石の床の上にてマリアは絶望に呑まれて、心を病み、そのまま自ら命を断とうとした。
全てに絶望して全てを破壊したくて、自分の愚かさを憎んであの狂王となった第一王子を愛してしまった支援してしまった自分を憎んで恨んで吐いて、泣いて、発狂して絶叫した。
それしかし出来なかった。
もうどうしようもならなかった。
だって時は戻せないのだから。
そしてマリアはひたすらに壁に頭を打ち付けてもうそろそろで死ねるとなった時にマリアの前にとある可愛らしい双子が現れた。
その双子は可愛らしくこう言った。
「「ねえ?復讐したい?」」
と。
心も体もズタボロで、ぐちゃぐちゃだったマリアは少し考えて答えた。
笑いながら答えた。
全てを笑いながら濁った眼で答えた。
「当たり前でしょ。ぐちゃぐちゃに全てをぐちゃぐちゃにして殺してやりたいわ、破壊したいわ、蹂躙したいわ、潰したいわ、全て全て無に返してやりたいわ」
双子は笑う。
愉快者として愉快犯としてこの世界において最強に連なる存在として愉快に笑う。
「「いい選択だよ。じゃあ君を彼の元に送ってあげよう転移」」
そしてマリアは転移した。
――――――――――――
新しいヒロインです。
書いてて思ったが主人公のハーレムメンバーの過去編重すぎる。
イトは【幻覚の天魔】によって村を滅ぼされて、冤罪で捕まって処刑されかけてる。
ナナは勇者として必死に努力したが裏切られて力を奪われてて殺されかける。
セリカは洗脳されて、意識だけは残ってるがずっと自分の体を見知らぬ誰かに操られ続ける。
カレーヌは重くなさそうに見えて、一応【乙女ゲームと呼ばないで】の世界においては、闇落ちした狂王に無理やり犯されて殺されたり。
ヤマダ王国滅亡時にグレンの消滅で何もしてないのにいきなり消滅させられたり、 第一王子が闇落ちしたから国から聖教国に逃げたが、そのままセリカもとい聖教国の上層部に目をつけられて洗脳されたり。その後【復讐の天魔】となったナナにデストロイされたり。
結構悲惨なルートが多い。
で新しいヒロインのマリアはかつては愛した第一王子に拷問されてお腹に宿った子供を失ってっていうね。うん胸糞ですな。
まあ、あくまでありえたらばの未来。
この物語ではグレンが全部綺麗に解決するからオールオッケー。
流石主人公。
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補足説明
なお第一王子狂王闇落ちルートでは高確率で【探知の天魔】は魔物の森の魔物暴走で死にます。
理由は兵力不足。
普段であれば王都から充分な支援が送られるが、闇落ちルートではそれがなく。それでも民を守るために奮闘した結果、魔物の圧倒的な物量に押しつぶされて死亡って感じです。
【探知の天魔】は単体性能はそこまで高くないですからね。軍となって初めて真価を発揮するのです。
めちゃくちゃどうでもいいかもだけど、学園パーティーは朝から始まってます。
ついでに言えば、まだ朝です。
朝からやって昼休憩挟みつつ、様々な催し物もしてとかなり豪華にやります。
腐っても大国。そんな大国の貴族のご子息、ご令嬢たちが行うパーティー、中には王族も参加していると。
それはまあ、それくらい豪華かつ盛大になりますね。
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