第98話・ナナの楽しい学園生活?
「【復讐の天魔】ナナ、あんたが何でここにいるのよ~~~~~~~~」
新しく教室に入った一人の少女がいきなりそう叫んだ。
「何を言ってるなの?ナナは【復讐の天魔】じゃないなの」
少女の言葉をナナはバッサリと切り捨てる。
「いやいやその姿に私のスキル強者探知が圧倒的格上って警告を鳴らしてるし、絶対に【復讐の天魔】でしょ」
「何を言ってるのかよく分からないなの?」
本当にイマイチよく分かっていない天然なナナ。(ナナにはマリとの思い出は蘇ったけど。そこから自分が【復讐の天魔】に至り魔王と手を組んで虐殺をした記憶は思い出していない)
「絶対に嘘よ。・・・・・・いや、もしかしてバタフライエフェクト?あの時私があの行動をとったから、それともアレか、いやもしかしたら他にも転生者がいてその影響とか?」
一人考え込む少女。その様子を見て周りの子供達は心底不思議そうに思いながら。あ、ヤバい人だと考えた。
それはそうだという話だ。いきなり今日初めて会うであろうクラスメートを【復讐の天魔】とかいう謎の存在として決めつけた上で、いきなりブツブツと呟き始めたのだから。
これをヤバい人として言わずなんという?
「大丈夫なの?」
心優しいナナは一人でぶつぶつと考え込んでいる少女に近づいて優しく手を差し伸べる。
ナナは凄く優しかった。それこそ天使と見間違うレベルで優しかったのだ。
「あ、ありがとう。大丈夫だわ。それとごめんね」
そっとナナの手を掴み縋るように頭を下げる。
「どうして謝るなの?」
「いや、さっきいきなり【復讐の天魔】だなんて叫んでしまったから」
「別に気にしなくていいなの。だから顔をあげるなの」
「・・・・・・ありがとう」
「名前はなんていうのなの?」
「名前、あ、自己紹介がまだだってね。私の名前はクレセリア フウカ。フウカって呼んでね」
「分かったなの。フウカちゃんよろしくなの」
ナナは貴族の名前なんてほとんど知らない為、一切気にしなかったが。一部の貴族出のクラスメートはその少女の地位に気が付いてしまった。
クレセリア・・・それは聖教国の建国に大きく貢献した家の一つであり、聖教国からは公爵の地位と家紋そのものに聖教会からも名誉司教の地位が与えられている。
非常に大きな影響力を持った家であった。
そして今現在王家との繋がりを強化する為に第一王子とクレセリア家の長女(17歳)の婚約が発表されたばかりである。
つまりこの少女は未来の王の后の妹であり。聖教国にて大きな力を持ったクレセリア家の娘ということだ。
「なんか。少し不思議な気分だな」
少女。否、フウカはあの【復讐の天魔】、全てを恨み魔王と共に人類を虐殺していた化け物が自分の目の前で天使のような微笑みを浮かべてうな自分と友達になろうとしている。これを不思議な気分になるなというのは無理な話だろう。
「どうしたなの?」
「いや。ごめん。こっちの話。えっとこれからよろしくね?」
「よろしくなの」
ナナは天使のような笑顔で応じる。
「か、か、可愛い~~~~~。いやもう無理。可愛すぎる。何でなのなの言ってるの?え?可愛すぎんか?そんでほっぺぷにぷに柔らかい。可愛すぎる。いやもう本当に可愛すぎる」
フウカは可愛いものが大好きだった。
そしてなのなの言いながら天使の笑みを浮かべてくるナナに、フウカの可愛さメーターは振り切った。
欲望のままにナナに抱き着いてほっべをすりすりし始める。
「くすぐったいなの」
少し嫌そうにしつつも、それでも心優しいナナはさして抵抗しない。
少し嫌そうに見せた表情がフウカの心に突き刺さった。
一言でいえばめちゃくちゃ可愛かったのだ。
少しだけただでさえぷにぷにもちもちの柔らかいほっぺを膨らませて、フウカの方が身長が高かったため、軽い上目遣いかつ、本人は睨みつけているつもりだが、じっとその可愛らしい目で顔を見つめてくるナナ。
100点としかいいようがなかった。
「か。可愛すぎる。何でこんなに可愛いの?」
「ちょっと。あんた、ナナちゃんが嫌がってるでしょ」
「そうよ。嫌がってるでしょ。ナナちゃん大丈夫?」
マリとカレンがナナの元に近づいてナナに抱き着いてすりすりしているフウカを止める。
「ナナちゃん大丈夫?」
「大丈夫なの。マリちゃん」
「それは良かった。にしてもあんたフウカだが、クレセリアだか知らないけど。ナナちゃんにいきなり何をするの。私怒るわよ」
マリの静かな怒りの声が教室に響く。
「いいよマリちゃん。別に怒ってないから?」
「え?でもナナちゃん、この子明らかにおかしいわよ。それにナナちゃんをいきなり【復讐の天魔】って言ったり、ナナちゃんに抱き着いたり、余りにも失礼よ。ナナちゃんこういうのはもっと怒るべきだわ」
「でも、別にそれだけなの。ナナを殺そうとしたり。マリちゃんを殺そうとしたりしたわけじゃないなの。悪気があったわけじゃないし。気にしないなの」
ナナは勇者としている間に味わってしまった地獄のような日々に加えて裏切られて文字通り力も家族も地位も名誉も目的すらも全てを失ったという壮絶な過去を持っている。
そんなナナにとってみればこの程度のことは簡単に流せる軽い出来事だった。
「ナナちゃんは悪意に慣れ過ぎてるよ。こういうのはもっとビシッと言った方がいいよ」
マリはナナの手を取る。
「えっと。ナナさん。ごめんなさい」
フウカは流石に不味いと考えて慌てて頭を下げた。
「別に気にしていないなの」
「ナナさん・・・ありがとう。本当にありがとう」
「いいなの」
結局全てを許して天使のような笑みを浮かべるナナ。
ナナは非常に心が広かったのだ。
「ハア。全くナナちゃんらしいわ。でもナナちゃんがそれでいいなら。私もそれでいいわ。ナナちゃんの意思が一番大切だからね」
少しため息交じりだがナナの意見を尊重するマリ。
「ありがとうなの」
「ねえ。クレセリアって、もしかしてスタートスの領地を統治してなかったけ?」
全てが丸く収まったかのように見えた時、カレンがそう呟いた。
そしてその呟きは更なる波紋と地獄絵図を生み出すことになるとはまだ誰も知らなかった。
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当たり前ですがフウカは転生者です。
一応設定としては【乙女ゲームと呼ばないで】においては恥ずかしがり屋で内気な病弱少女という設定です。本編には元々はそこまで関りはありませんでした。(あくまでそこまでであり一応関わるルートがないわけではない。復讐ルートだけど)
なのにゲームの知識を活かして体を鍛えて魔力を高めて、一流クラスの力を持った活発で自由奔放な少女になり、本編にがっつり干渉する典型的なライトノベル主人公になりました。
めでたしめでたし
流石に適当過ぎたので補足説明
元々の転生前の年齢は17歳の女子高生であり。可愛いものに目がない性格、可愛いウサギを追いかけてて信号のない横断歩道をうっかり渡ってスピード違反をしてたバイクにはねられて死亡。
一応可愛いものが好きという思いをひたすらに突き付めれば天魔に至るだけの精神力を手に入れることは出来る。大分中毒レベルで可愛いものが好きな異常者(誉め言葉)。
普段の性格は優しくて活発で自由奔放で、少し家族に迷惑をかけることはあっても。ちゃんと「ありがとう」も「ごめんなさい」も言える少女。
可愛いものが好き過ぎるという欠点があるけど。
(次の話でもう少し詳しく設定書きます )
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少しでも面白いと思っていただけましたら嬉しい限りです
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