第95話・ナナの楽しい学園生活 3

 ナナ、マリ、カレンの仲良し三人組は教室に入る。

 教室内では8人程が先について座っていた。


「えっと席は名前順だわ」

 黒板に貼ってあった座席表を見てマリがそう呟く。


「そうみたいだね。あ、全員バラバラになっちゃったね」


「そうなの。でも席に座らないとだし座るなの」


「そうだわね」「そうだね」

 三人は少し名残惜しく思いつつも、またいつでも喋れると考えながら、それぞれ自分の席に座る。


「やあ。こんにちは。後ろの席としてこれからよろしくね」

 ナナが座ると後ろの席の男の子が声をかける。

 容姿は銀髪の短髪、目は赤色でその姿はかの有名なバンパイアを連想させる、身長は120センチほどのショタであった。

 といっても年齢10歳と考えれば非常に平均的ではあるが。


「よろしくなの。ナナの名前はナナなの。君は?」


「自己紹介がまだだったね。僕の名前はダウェル。ただのダウェルだ。よろしくね」

 ダウェルはナナに握手を求める様に右手を出す。

 不自然にただのというのを強調していたが、ナナはダウェルの魂を見てカレン程ではないが普通にキレイだったので特に気にすることはなかった。


「ダウェル君よろしくなの」

 二人は握手を交わす。


「えっとナナちゃんって呼んでもいいよね?」


「いいなの」


「じゃあ。ナナちゃん。ナナちゃんは得意な魔法とかある?因みに僕は風魔法が得意なんだ」


「ナナは光魔法が得意なの。一応他の魔法も使えるなの、でもやっぱり光魔法が一番得意なの」


「へえ。光魔法が得意なんだ。凄いね。光魔法って言ったらあの聖騎士が使うかなり強い魔法じゃないか」

 聖騎士・・・それは聖教国に仕える聖なる騎士のことである。全員が光魔法もしくは神聖魔法を扱うことが出来、対闇属性の相手に対して絶大的な力を誇る戦闘集団。

 他国にまでその名を轟かせており、聖騎士はというのは聖教国の国民にとって憧れの職種の一つである。


「聖騎士?ああ、あの役立たずの肉壁なの」

 ナナは聖騎士に何度も会ったことがあり、何度も聖騎士の命を助けている。

 理由は簡単、聖騎士が弱かったのだ。いや聖騎士は決して弱くはない、全員が超一流以上の力を持った集団なのだから。

 ただ四天王との戦いや魔王軍との集団戦闘の際は超一流程度の実力は役立たずでしかなかったのだ。

 それもその筈、四天王は全員天魔に少し及ばない、ないし匹敵する程の力を持ち、魔王軍の中には準英雄クラス、英雄クラスの化け物が多々存在して、そしてその化け物が明確な悪意と殺意を持って、集団で襲い掛かってくるのだ。超一流程度の実力ならば蹂躙されるのは当たり前の話であろう。

 そしてその度に勇者として洗脳されているナナはその聖騎士を助けることとなる。そんなのが多々繰り返されるので、非常に煩わしく感じていたのだ。


 それはまあ役立たずの肉壁と称するわけである。


「ちょっと、ナナちゃん。そんなことを言ったら不味いよ。聖騎士を熱狂的に支持するファンも多いんだし、その人たちに聞かれたら冗談抜きで襲われるよ」

 いつの世界にも熱狂的なファンはいるもの。その中でも聖騎士のファンはかなり熱狂的かつレベルが高く。


 特に聖騎士ファンクラブ【影守】の会長は英雄クラスの実力を持ち天魔に覚醒する素質も持っている化け物であった。

 今まで聖騎士を排斥しようとした貴族や、聖騎士に対して恨みを抱いている存在を人知れず処理している。もはや聖騎士よりも聖騎士の仕事をしている、ただただヤベエ奴なのだ。

 そしてこの話は一定以上の地位を持った貴族にとって常識であり。貴族の家の息子は聖騎士よりも聖騎士のファンである【影守】の会長の方が危険であり敵に回してはいかないと教わるのだ。何とも皮肉が効いてる限りである。


「襲われる?ハハハ、大丈夫なの。ナナを襲える存在なんてほとんどいないなの」

 ナナは自信たっぷりでそう言い切った。


 それもその筈ナナは天魔であるのだから、この時点でナナを襲ってナナを害すことの出来る存在など100もいないということが証明される。

 更に言えば世界最強の天魔であるグレンの眷属であり天魔連盟創設者である真希ともグレン繋がりで交流がある。

 そんな不可侵略の最強二人に保護されているナナを害するなど実質不可能であった。

 それこそもしもナナを襲って害することが出来る存在となったらば、グレンと肩を並べるレベルの化け物の中の化け物となるのだから。そんな化け物の中の化け物がわざわざナナを襲うなど到底考えられるものではなかった。


「いや。どこからその自信来てるの。僕びっくりだよ」


「そう?ナナは本当のことしか言ってないなの」


「本当のことって、じゃあもしも英雄クラスの力を持った存在が襲い掛かってきたらどうするの?」

 ダウェルは少し嫌味を込めてそういった。

 何故なら10歳程度の子供が英雄クラスの存在に襲われたら常識的に考えれば一切抵抗できずに蹂躙されるのは1+1=2と同じレベルの常識なのだから。


「英雄クラス程度の雑魚だったら普通に殺すなの。光線で首と心臓に当てて焼いて切断すれば簡単に死ぬなの」


「いや。首と心臓を焼いたらそれは基本どの生物も死ぬだろって、いや。英雄クラスを雑魚って。ナナちゃんあまりそういう発言も止めた方が良いよ」


「そうなの?」


「そうだよ」


「でも、事実なの」


「事実って。ハア。まあいっか。何はともあれこれからよろしくな」

 ダウェルはナナを説得するのをあきらめた。ダウェルとしてはナナに対して親切心で言ってるつもりではあったが。正に盛大な余計なお世話というものである。

 それに落ち着いて考えれば10歳の子供、別にわざわざそんな子供の言葉に目くじらを立てるような人もいないだろうという話だ。


「うん。よろしくなの」

 再度二人は握手を交わす。

 因みに今のところのナナとしてはダウェル君の評価を心配性のツッコミやさん、だけど魂はそこそこキレイだし仲良くしても損はないかなという感じの評価で落ち着いていた。


 ガラガラ


 教室のドアが開き一人の少女が入ってくる。


 そして開口一番。


「【復讐の天魔】ナナ、あんたが何でここにいるのよ~~~~~~~~」

 新しく教室に入った一人の少女がいきなりそう叫んだ。


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