第94話・ナナの楽しい学園生活 2
「私はこの学園の名誉校長になった。聖女セリカです。どうぞ皆様よろしくお願いします」
「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」
今話題の聖女が入学式の初っ端いきなりサプライズで登場して名誉校長になるということで生徒の盛り上がりが最高潮になる。
「さて、皆様。私は聖女ですが。敢えて断言しましょう。この世界は力が全てです。力がなければ無力です。それは例えば魔物暴走だったり、盗賊だったり、悪徳領主だったり。もしも力があれば全てを打ち破って自分の最良の未来を手に入れることが出来ます。でも力がなければ奪われて、踏みにじまれて、惨めな思いをします。最悪の未来が待ち受けています。皆様の中には同じような経験をしたことがある人はいると思います」
聖女の声は非常によく通った。
そしてその言葉は非常に強い意志と意味を持っていた。
「だから皆様は強くなりなさい。この学園で学び、学友と切磋琢磨して強くなりなさい。強くなって強くなって、そして民を助け、悪を滅ぼす正義になりなさい。この力が全ての世界で、力なき奪われる者に救いの手を差し伸べるのです。私一人では力は足りません。ですが皆様が力をつけて。私と同じ志を持ってくれれば、きっとこの国は、いえこの世界は少し良い世界になるでしょう。私のお話は以上です」
聖女は一礼して壇上から降りた。
「「「「「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」」」」」」」」」
さっきとは非にならないくらいの大きな歓声が上がる。
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
パチパチパチパチ
そして生徒も先生も拍手をする。
それだけ今の聖女の演説は良いものであり人の心を揺さぶる力があったのだ
さて。種明かしをすれば洗脳である。
演説をしながら洗脳の力を行使してその場にいた全員に今の話を感激して心に強く残るように洗脳したのだ。
洗脳にかからなかったのは同じく天魔であるナナ一人であった。
その後、他の先生方の話が始まり終わり、特に何事もなく入学式は終わった。
―――――――――――――――
入学式が終わった後に行われたのはクラス分けであった。
クラスは全部で10クラス。
特に成績優秀者どうこうでの仕分けはされておらず。一クラス20人に分けられていた。
ナナ、マリ、カレンの三人でクラス発表を確認したら、三人とも同じクラスで会った。
無邪気に喜ぶ三人、一応三人が同じクラスになる確率で言えば、1000分の1。
普通ならばかなりの奇跡というわけで、本当に凄いことなのだが。もちろんそんなわけはない。
まず最初にこの学校の支配者はセリカであり、セリカはナナを妹のように大切に思っている。当然のようにナナを気遣ってとマリを同じクラスにしていた。
ただカレンのことはもちろん知らなかったので同じクラスにはしてなかった。
しかしネズミ眷属からカレンという子が仲良しになったと知り、入学式での演説を終わらせてからすぐさまクラス分けを改ざんして同じクラスになるように調整した。
というわけで三人は仲良く同じクラスになりました。
そんなことを知らない三人はクラス分けを見て無邪気に喜びの声をあげながら手を繋いで喜ぶ。
それを一匹のネズミ眷属が見届けながら、眷属化により得た知識と知性を使いその光景を嬉しそうに目を細めてみると愛する主に報告する為に念話をしたのだった。
――――――――――――――――――
ナナ、マリ、カレンの三人で仲良く歩いてクラスに向かう。
「どんなクラスが楽しみだね?」
歩きながらカレンがそういう。
「確かに楽しみですわ。確か先生の名前はアドリュー・セレスリアでしたっけ?」
クラス分けの際に上に表示されていた先生の名前を思い出してそういうマリ。
「確かそれであってるなの」
「セレスリア先生。なんか凄いイケメンそうな先生だね」
「イケメンと言えば、今日最初に私たちに声をかけてくれた先生、イケメンでしたわね」
「ああ。分かる。確かにイケメンだった」
「スラっとしたイケメンで髪も綺麗でカッコよかった」
「その気持ちわかりますわよカレン。確かに髪が綺麗でしたね」
「きっとしっかり手入れしてるんだろうな。私はそういうの今まで出来なかったからな」
当たり前の話、孤児院に髪の手入れようにと異世界人が作った高価なシャンプー・リンスと呼ばれる液体が置いてあるわけがなかった。
「私も出来ませんでしたわ。だからこそ憧れてしまうのですわ」
「ねえ。そう考えるとナナちゃんの髪綺麗じゃない?」
カレンがナナの髪の近づきナナの髪を掬いあげる。
「うわ。凄いすべすべ、どんな手入れをしてるの?びっくり」
「手入れなんてしてないなの?」
「ええ。羨ましい」「確かに羨ましいわ。あれ?でも昔はそんなすべすべじゃなかったよね?」
マリが昔の記憶、正確に言えば自分が殺されてしまった世界線の記憶を思い出して。その時のナナの髪は自分と同じように痛んでいたはずだよなと思うそう質問する。
「ああ。多分ナナが天魔になったからなの」
ナナは何てことでもないように、家で猫飼ってるのくらいの軽い感覚で爆弾発言をした。
「あ。やっぱりそれか。いいな天魔。羨ましいわ」
マリは猫飼ってるの羨ましいっていうくらいの軽い感じでそんなことを言いだす。
マリの中ではナナが天魔だというのはもはや常識であったのだ。
「ちょっと待って。え?ナナちゃんが天魔って、え?天魔ってあの天魔?」
天魔それはこの世界に100もいない最強の存在、たった一人で一つの国に匹敵する化け物の中の化け物。最強の中の最強。
そんな天魔が自分と同い年にしか見えない、いや自分より少し幼さすら感じる少女だったのだ。驚くなという方が無理なものだ。
「うん。天魔なの。ちょっと待っててね、カレンちゃんは魂が綺麗だし、証拠を見せてあげるなの」
ナナはカレンだけを対象にして普段は隠している認知の力を解放した。
その瞬間カレンは理解させられた。
【忠光の天魔】という存在を。
「本当なのね・・・。一応聞くけどナナちゃんって何歳?」
天魔というのに至ってることからナナの年齢を疑うのは当然のことであった。
「えっと、多分10歳くらいなの?」
ナナは勇者として戦わされていた際の記憶が洗脳されていたのもあり非常に曖昧であり、更にずっと戦いを続けていた副作用か、それとも洗脳の影響か、どちらにせよ昔の記憶も少々曖昧であり。自分の誕生日を忘れてしまっていたのである。
「多分って、でも嘘つく理由もないし。じゃあ同い年ってこと?」
余りにも迷いのない綺麗な目でナナがそう言う物だからカレンはナナの言葉を信じることにした。
「はいなの。あ。ナナが天魔だからって特に気にしなくても大丈夫だから。これからもよろしくなの」
「まあ。確かにそうだね。マリちゃんも気にしてなかったし。これからもよろしくね、ナナちゃん」
カレンは余り深く物事を考えるのをやめた。
実際ナナと非常の中の良さそうなマリは明らかに普通の人であり、そんな二人が仲良くやれているんだ。自分が仲良くやって問題などあるわけがない。それにカレンは純粋にまだ短い時間しか一緒にいないが明るいナナのことが好きになっていたのだ。
「はいなの」
二人は硬い握手を交わした。
「ナナちゃん、カレンちゃん。私を忘れないで下さいわ」
マリは二人の握手していない方の手をそれぞれ握る。
「これで皆仲良しですわ」
「フフフ。確かにそうだね」
「そうなの」
三人は幸せ一杯の雰囲気をこれでもかと辺りに漂わせるのだった。
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