第91話・貴族の坊ちゃんってのは愚かですね
「おい。そこのお前、俺の妾にしてやろう」
俺とイトが楽しく会話をしていたら。
いきなり不愉快な声が聞こえる。
その声を発したら愚か者を見ると、10歳くらいのクソガキがナナに向かって指をさしてそう言っていた。因みにそのクソガキの隣には執事っぽい人と騎士っぽい人が2人いたので。多分貴族か大商会の息子だと思う?
「グレン様、二度と喋れないように舌を切りますか?」
「いや。イト、それだと生温い。存在から消滅させようか」
俺もイトもことナナに対しては非常に過保護であった。といってもあくまで言っただけ、まだ消滅はさせないけどね。ただナナに危害を加えた瞬間に消滅は確定となるけど。
「妾って何なの?」
純粋無垢なナナは心底不思議そうにそう首をかしげる。
「ようはその人の女になるってことだよ」
「女?じゃあ無理なの。ナナはご主人様の女なの」
おそらく意味を理解していないのだろう。嬉しそうにほほ笑みながら俺に抱き着いてくる。
ただ、ナナ。いろんな意味でアウトだ。
周りの客の目線も痛いして、愚かな発言をしたクソガキも顔を真っ赤にしてるぞ。
「グレン様?何をしてるのですか?」
「おい。タンマ。イト何でお前キレてるんだよ。別に勘違いだから」
ヤバいイトのヘイトが俺に向いて来た。
「おい。そこのお前。今すぐその女を寄越せ。俺を誰だと心得る。俺はこの国の伯爵家の次男であるぞ」
伯爵家の次男ね。一応この国の王族であり、今現在表向きはこの国最強の天魔であるイトと騎士団長であり天魔のカレーヌを妻にしてる。世界最強の天魔の俺にそれを言うか?
「ハア。お付きの人。その伯爵家とやら、御取り潰しは覚悟しろよ。やめて欲しかったら当主に今すぐそのクソガキを廃嫡させるか一生幽閉させろ」
消滅させようかと思ったが、流石に貴族の息子を消滅させたら事後処理が面倒なのでまだ話の分かりそうな執事っぽい人にそう伝える。
「おい。何をふざけたことを言ってるのだ。おい。俺の騎士。そいつらを捕らえろ」
二人の騎士が俺の向かってくる。
「これは雇い主の命、悪く思うなよ」
「それはこっちの台詞だな。怠惰になれ」
「ああ、面倒だな」
「そうだな面倒だな」
二人の騎士は床にへたり込んでグウタラしだす。
「おい。何をしてる動けよ」
「ああ。面倒だな」
「本当に面倒だな」
「おい。何が面倒だ。ふざけるな。さっさと動け働け」
「あ~面倒だな」「そうだな面倒だ」
そのまま二人の騎士は眠くなったのか寝だす。
流石俺の怠惰だな。効果は抜群だ。
「さてと。おい。そこのクソガキ、俺が誰だか分かってるのか?」
「は?知らねえよ」
「そのお姿、そしてそちらの女性はまさか、・・・大変申し訳ございませんでした」
執事がようやく俺とイトの正体に気が付き華麗に土下座をする。
「おい。何をしているのだ。伯爵家の執事が土下座など」
「坊ちゃま。今すぐこのお方に謝りなさい」
土下座した状態で顔だけあげて鬼気迫る様子で怒鳴る執事。
「おい。どうしたんだよ急に。そんな怖い顔をして」
普段自分に従ってる執事がいきなり鬼のような形相で土下座をしろだなんて怒鳴るもんだから、不安がるクソガキ。
流石にことに重大さが理解したかな。さて。まあこの状況は中々に目立って他の客が注目するし、面倒だけど幻覚魔法をかけて周りからは見えないようにするか。
「坊ちゃま。このお方は我が国で今一番力を持っていると言っても過言ではない第五王子様とその奥様であらせられる【剣舞の天魔】イト様でございますよ」
「え。あの・・・、嘘だ。そんな訳がない」
それはまあ信じたくないよな。現実逃避したくなるよな。だって自分たちが喧嘩を売った相手が国王陛下よりも実質的に上の立場にいる存在なんだから。でも真実なんだような。
もはや少し哀れに思えて来たよ。
「おい。執事選べ。伯爵家を潰すか、そのクソガキを廃嫡ないし幽閉するか?」
「今すぐ廃嫡をさせます」
「おい。何を言ってるんだ。おい、一体どういうことだよ」
このクソガキも廃嫡ってるなと焦るわな。それはそうだ。
「廃嫡・・・そんなの俺は、俺は。うえええええええん」
急に泣き出すクソガキ。ヤベエめちゃくちゃ腹立つな。ナナにした失礼な態度をした上で気に食わなければすぐに騎士を使って人を襲わせといて、いざ自分が不利になれば泣く。
これだから甘やかされて育ったクソガキは嫌いだ。本当に面倒だ。消滅させてやろうか。
「ねえねえ。ご主人様、流石に可哀想じゃないなの?」
俺の天使が慈悲深過ぎることを言いだす。
「ナナそれは駄目だ。こういうクソガキは一回地獄を見ないとな。それにナナも見れるだろうからこのクソガキの魂を見てみな、灰色と紫が混じった汚い色をしてるだろ。こういうのは将来人に迷惑をかけるだけかける害悪にしかならないからな。排除した方がこの国為になる」
灰色はまだ殺人等の大きな罪は犯してないが、それ以外の軽犯罪はしてるという証であり、紫は性根がずる賢くて腐ってるって感じ。
ようは上辺だけの謝罪して、すぐに罪を犯す屑ってことだな。
「確かにそうだね・・・でも私の浄化の力を使えば」
「確かにそうだな。ナナは優しいな。でもナナは本当にそれを望むか?」
俺としてはなんかそれは甘えな気がするんだよな、別に屑でも俺に危害を加えてなかったらいいけど、こいつは俺にナナに危害を加えようとした。なのに浄化されていい奴になって幸せになったりしたら、それは何か凄く腹が立つ。
「え?えっと、別にどうでもいいかな?ナナには何の関係もないし」
「そうか別にどうでもいいか、じゃあそれでいい。というわけだから、執事よ。後はしっかりやれよ、じゃなかったら潰すぞ。ついでに怠惰解除」
「俺は一体・・・」「何故ここで寝てたんだ」
怠惰が解除されたので騎士二人は目を覚ます。
「おい。そこの騎士、そのクソガキ連れて失せろ。後の説明は執事から聞け」
「は?何故俺がお前なんかに命令されなくちゃならないんだ」
「いいからやれ」
魔力を出して威圧してやる。
「は。はい。もちろんでございます」
騎士二人は敬礼をして泣いているクソガキを持ち上げて、執事と共に逃げるように去っていった。
「さて、これで一件落着だな」
「そうですね。でも少しグレン様らしくないですね?」
「どうしたイト?別に俺らしいだろ?」
「いえ。普段のグレン様だったら、面倒と言って記憶を消滅させて終わらしていてたかなって」
「ああ。確かにそうかもな。ただ俺の大切なナナに手を出そうとしたんだ、罰を与えようと思ってな?」
「罰ですか。フフフ。なるほど相変わらずグレン様はグレン様でした?」
「そうか?」
「はい家族思いの優しいいつも通りのグレン様です」
「家族思いか。そうか?あんまりそうは思えんけどな?」
「ご主人様はナナとイトお姉ちゃんの事好き?」
「それはもちろん好きだよ」
「じゃあ、ご主人様は家族思いなの。だって好きだからなの」
無邪気な笑顔でそう言われたが。確かにと納得した。好きってのはその人の為に何かをしてあげたい、その人を守りたいって思いもあるからな。
「確かにそうだな。ありがとうナナ」
「どういたしましてなの」
「さて。じゃあナナちゃん、文房具を選ぶのを再開しようか。せっかくだし私も一緒に選んであげる」
「ありがとうなの、イトお姉ちゃん」
俺はイトとナナが楽しそうに文房具を選ぶのを見ながら幻覚魔法を解除するのだった。
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