第90話・パパ

「ああ。ナナ凄く可愛いよ」


「フフフ、ご主人様に褒められて嬉しいなの」

 黄色を基調にひらひらでフリフリ、フリルがたくさんついた非常に可愛いらしい服を身に纏い笑顔を振りまくナナ。

 うん非常に癒されますね。ナナはやっぱり天使だな。


「そうかそうか。それは良かった」

 ナナの頭をナデナデしてあげると嬉しそうに目を細めてくれる。なんかこう猫見たいやな。ヤバい一日中ナデナデ出来そう。


「ゴホン、グレン様。買った服を異空間に仕舞ってくれませんか?」


「ああ。ごめんイト。すっかり忘れてたよ」

 目の前にそれこそ山の様に何十いや百着以上積み重なっている服を片っ端から異空間に入れていく。


「にしても中々に豪快な買い物をしたな。結構お金かかったやろ」


「いえ。全部合わせてもせいぜい白金貨1枚程度です。思った以上に安かったです」

 ※白金貨一枚で金貨100枚、金貨1枚約10万円換算。白金貨=1千万円


「それは思ったよりも安いのか?いや、う~ん。普通にそこそこいい値段な気はするが。まあ別にお金に困ってないからいっか。気にするのも面倒やし」


「ねえねえ。ご主人様、イトお姉ちゃん、次は何処に行くなの?」

 俺の服の袖を引っ張ってそう質問してくるナナ。

 ヤバい。流石に可愛すぎませんか?


「次は文房具店だよ。ナナが勉強する為に必要な筆記用具を買おうね」


「うん。分かったなの。買うなの」

 元気よく手を挙げて返事してくる。

 非常に微笑ましいわ。

 

 そうしてまた仲良く三人で手を繋いで文房具店まで歩きました。


 といっても文房具店はかなり近場にあり、大体5分程で到着した。


 一応選んだ文房具店は金持ちコーナーの近くにある、この付近どころか、この国で最も品揃えが良く最も大きい文房具店だ。

 ただ、そもそも論として文房具店自体の需要が少なく、店の数も少ないから俺が御用達にしている本屋の半分程度の大きさしかないけど。 


「いらっしゃいませ」

 店に入ると若い女性の店員が笑顔で挨拶をしてくる。


「いらっしゃいませなの」

 元気よく挨拶するナナ。うん可愛い。


「フフフ。可愛いですね。娘さんの文房具を揃えに来たのですか?」

 娘さんって、まあそう見えるわな。

 まあでも別に否定するのも面倒だし。ある意味ナナは娘のようなものだしいっか。


「はい、娘が学園に通うのでその為の文房具一式を揃えてあげようと思いましてね」


「そうですか。では子供用の文房具売り場にご案内しますね」


「お願いします」


【ねえねえ。ご主人様、ナナはご主人様の娘じゃないなの】

 店員さんについて行ってる途中、ナナから念話が来る。


【ああ。ごめんね。ナナ嫌だった?】

 殺されてしまったナナの本当の両親のことを考えてしまう。

 俺はナナの親代わりでいたいと思うけど、でも本当の親ではないし、年的にも兄と妹の方がしっくりと来る関係だ。それなのに俺がナナの親と言ったのはナナを傷つけてしまったのかもしれない。そう思った。


【そんなことはないなの。ご主人様がお父さんだったら嬉しいなの。だからこれからもよろしくなの】


【ナナ・・・、ありがとうナナ】


【いいなの。パパ】


「グハ」


 俺はナナの余りの破壊力につい吐血をしてしまう。


「だ、大丈夫ですか。お客様」

 店員さんが俺を心配する。


 ただ、今の俺とナナの念話は俺の眷属であるイトには自由に聞くことが出来るので、俺の様子をみて何とも言えない生暖かい目を向けてくる。


「大丈夫ですか?パパ」

 イトが俺の背中をさすりながらそう呟く。

 こいつ煽ってやがる。


「大丈夫ですよ。ちょっと娘が愛らしくて吐血しただけです。浄化魔法・完全浄化。これで血は綺麗に片付きました。さて案内を続けてください」


「あ。はい。お客様がそうおっしゃるのなら」

 俺の事を心配しつつもしっかりと案内を続けてくれる店員さん。うんありがたいわ。もしここで治癒院行ってくださいとかなったら記憶を消すはめにはってたよ。面倒くさい。


 1分後


「では。ごゆっくりどうぞ」

 案内を終えた店員さんは一礼して去っていった。


 何となく気が向いたので店員さんに幸運上昇という魔法を無詠唱でかけてあげた。これで今日一日だけだが店員さんに幸運が訪れるだろう。

 まあ、俺なりのお礼ってやつだな。

 別にさして手間でもないしね。


「さて。じゃあこの中からナナの好きなのを選ぶんだぞ」


「分かったなの」


「フフフ。パパですか」

 いつの間にか俺の隣にいたイトがそうちゃかしてくる。


「おい。やめろってイト。にしもてどうしたんだ?」


「いえ。ただ私はママになりたいなって」

 自分のお腹をさするイト。

 うん。だからそれは継承権問題的に駄目って言ったよな?

 ただ、今のナナを見てると、有りかなと思ってしまう自分がいるな。

 怠惰でグウタラな俺は何処に行ったのやらやら。


「ハア。そうだな王位継承権が終わって。ナナが独り立ちしたら、いいかもな。どうせ俺もイトもこの先何百年、いや何千年と一緒にいる訳だからな」

 俺もイトも天魔であり寿命という枠組みから逸脱している存在だからな。

 

「そうですね。なんか想像が出来ませんね。何千年も一緒にいるとか」


「当たり前だろ。俺だって想像が出来ないよ」


「でも、私とグレン様とカレーヌにナナに後はセリカがいて、周りにはたくさんの子供たちがいる。そんな素晴らしい未来があるかもですね」


「え~。それは素晴らしいか?そんなに大人数ってのは凄く面倒そうなんだが。せめて子供は一人にしてくれ」


「フフフ。相変わらずグレン様ですね。じゃあまずは一人ずつ愛情たっぷり込めて育ててあげませんか?」


「おい。たんま。イト勝手に子供を作る前提で話が進んでいるぞ。今はまだ無理だ」


「今はまだ、ですか?」


「ああ。今はまだ。だ」

 そう。いつか俺が子供のいる生活を面倒だと感じなくなり、そして過去のあのトラウマと決別出来た時。そう。その時は・・・・・・


 良いかもしれないな。

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