第88話・血の契約と借金と救い

 従妹に連れられてついた家は別にボロ屋とかではない普通の2階建ての一軒家だった。


 立地もさして悪くなく。この家と土地の権利だけで余裕で借金を返せるレベルじゃないかと思う。


 うん勝手なイメージで借金してる=ボロ屋に住んでるってのがあったわ。


 いやなんか申し訳ないな。


 それに落ち着いて考えれば従妹は血魔法を英雄クラスで使え、更にいくつかの力を持ってる感じの化け物強い存在何だから、最悪借金、それも金貨100枚程度ならば簡単に踏み倒せるだろう。

 それこそもし彼女に無理やりお金を払わせようとするなら。戦闘能力の高い英雄クラスの化け物を2人以上。ないし天魔を引っ張ってこないと駄目だからな。


 いやうん。誰が出来るねん。少なくともこんな少女に借金を背負わせるようなちゃちな組織がそんな化け物引っ張ってこれるわけがないな。


「ただいま。お母さん」

 俺が色々と考えていると、鍵を開けてドアを開ける従妹。


「さあ、えっとお兄ちゃんも入って」

 俺のことをなんて呼ぶのか迷ってお兄ちゃん呼びする従妹。


 そういえば名前教えてなかったな。いやまあ互いに名前知らないけど。

 いや別に名前分かるやん。


 鑑定


 俺は名前を鑑定しようとした。しかし名前は黒塗りになって一切見えなかった。

 まるで俺の認知が歪まされているようだ。


 何かしらの能力か?

 いや違う。まさかこれは名前がお母さんと同じだからなのか?だから俺が真希にかけてもらった認知の力が働いたのか?


 ・・・・・・・・・


 まあいいや。変に考えても面倒だ。うん忘れよう。


「あのう。お兄ちゃん?中に入らないの?」


「ああ。すまんすまん」

 すっかり考え込んでいた。反省反省。


「あら、お帰り。○○○。その男の子は始めて見るわね。もしかして○○○の彼氏かしら。今日はお赤飯ね」

 そうおっとりとした感じで喋る40代くらいの女性。

 何処か、いやかなり俺の過去の記憶にあるお母さんに似ている女性。


 会った瞬間に理解できる。


 ああ。この人は俺のお母さんの姉妹だと。

 血魔法を使って確認したらお母さんと2歳違いの妹と出た。つまり俺の叔母さんという訳だ。


「ちょっと。お母さんそういうのじゃないよ。そもそもこの人は私の親戚。死んだ叔母さんの息子よ」


「え?・・・・・・。確かに何処かお姉ちゃんに似てるわ。・・・本当に本当にお姉ちゃんの一人息子なの・・・」

 どこか感極まったようにそういわれる。

 まあでも確かに感動の再開だもんな。一応俺は死んだお姉ちゃんの一人息子に当たるわけだからな。

 それは感極まるわな。

 しかしこれはどういう反応を取ればいいか悩むな。


「えっと。グレンです。どうも初めましてですね」

 何となく自己紹介する。


「ええ。そうね。ええ。本当にそうね。・・・・・・」


 ・・・・・・・・・・


 何となく話題がなく気まずい沈黙が走る。

 超絶気まずい。


「あ。そうだ。お母さん、何とお兄ちゃんの力でお母さんの病気を治せるらしいの」


 気まずい沈黙を打ち破ってくれる従妹。いやはやありがたい。


「実はそうだなんだ。ちょっと待っててね今すぐ過大魔力症を治すから」


 気まずさを誤魔化すように俺は叔母さんの肩に手を置いてまずは体を一通り鑑定する。


 結果・驚愕した。

 恐ろしい程の魔力が叔母さんの体の中に渦巻いていたからだ。

 少なくとも魔術を扱う天魔に匹敵するレベルの魔力。


 こんな魔力を天魔に至ってない人の身で宿す。それがどれだけ辛く苦しい事か。


 少なくとも今現在でも体はその莫大な魔力に押されて全身が張り裂けるような痛みが走っていると思う。

 というかこれを吸収の魔石で対処してただ?何を馬鹿なことを言う。


 もしこれを吸収するだけの魔石ってなったならば一体どれだけの量が必要になる。それこそ金貨10枚分程度なら気休め程度にしかならないぞ。


 普通だったら確実に死んでいるはずだ。でも生きている。


 あれ?今気が付いたのだが魂容量が大きいぞ。少なくとも普通の人の倍って。


 あ。そういえばお母さんって異世界人だったような。


 う。頭が痛い。


 止めよう。あまりお母さんのことは思い出さないようにしよう。これは触れてはいけないことだ。


 でも、そう考えるとこの二人も異世界人ってことだよな?俺の従妹の方はよく分からないが、まあ魂容量はある程度遺伝するからな。


 まあいいや取り敢えず吸力の呪いを使うか。


「吸力の呪い・魔力」


 パリン


 俺の力はいともたやすく無効化された。


 まただ、さっき従妹に消滅の力を使おうとした時と同じようにって、あれ?まさかまさか?


「ねえねえ、お兄ちゃんお母さんは大丈夫なの?」


「風魔法・風刃」

 俺はとある予想に基づいて魔法を従妹に向けて放つ。


 パリン


 だけどそれは俺が魔法を放とうとした瞬間に割れた。


「ああ。やっぱりか」


「やっぱりって、どういうこと?」

 俺が何したのか気が付いてないのか不思議そうにする従妹。


「いや。何、ようは俺制約を自分にかけてたんだよ。俺の膨大だった力でお母さんを傷つけないように。血魔法と契約魔法を組み合わせてお母さんに危害を加えないという血の契約をしてた。で、血の契約なんで、そのお母さんの血を含んでる二人に俺は危害が加えられなかったって話だ」


「えっと、よく分からないけど。その血の契約?ってのを破棄すればお母さんを治療出来るってこと?」


「ああ。そういうことだ。血の契約破棄・そしてもう一度、吸力の呪い・魔力」


 そうして今度こそ俺は叔母さんに呪いをかけて叔母さんの体を蝕む強大な魔力を吸収していく。

 ぐんぐんぐんぐん吸収していく。


 俺の体に大量の魔力が流れ込んでくる。普通ならば吸力の呪いで吸い取った魔力なんかは拒絶反応を起こす可能性があって意外と死の危険があるヤバい行為なのだが。

 血縁関係を持つ場合はその拒否反応はほとんど起きない。


 というわけでスムーズに魔力を吸収し自分の体になじませていく。


 ―――――――――――――――――――――

 10分後

 ―――――――――――――――――――――


 大体叔母さんの魔力の9割程を吸収してようやく一息つく。


「これで多分もう苦しくはない筈ですよ」


「ええ。苦しくないわ。あれだけあった痛みが嘘みたいに消えてなくなったわ」

 叔母さんは目に涙を浮かべる。


 まああれだけの苦痛に耐えて、そしてそれがようやく解放されたんだ。それは嬉しいだろうな。俺としても嬉しい限りだ。


「それは良かったです。一応叔母さんの体に耐えれる量まで魔力を残したので魔法は自体はまだまだ英雄クラスで使えると思いますよ」


「まだ魔法は使えるのね。ありがとう。そこまで配慮してくれて」


「いえいえ。当たり前のことをしたまでです。さて。じゃあここに借金用の白金貨1枚置いておくので。私は戻りますね」


「え?借金って一体どういうことですか?」


「え?」


「あ・・・その・・・」


 あ、ヤバい、これ多分借金のこと母親に隠してた感じだな。つか考えてみれば当たり前だな。いやはやこれは俺の配慮が足りて・・・・・、いや借金する方が悪いか。まあ面倒だし帰ろ。後はどうとでもなるやろ。


 バタン


「おい。お前ら少し金が要りようでな。借金の白金貨10枚返して貰いに来たぞ」


 帰ろうとした瞬間に明らかにガラの悪いごろつきが3人程押し入ってくれる。

 つか借金の額10倍に増えてるやん。明らかにヤバい所から借りてるやん。

 これは何というか実に面倒だ。


 さてどうしょうかな。


 ――――――――――――――――――


 この話にして小説家になろう様に投稿している分まで追いつきました。

 こっからはカクヨム先行配信でやっていこうと思います。

 これからもこの小説をどうかよろしくお願いします。

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