第85話・三人でお買い物・土下座編

「グレン様良い本は買えましたか?」

 本屋から出て少し歩いたところで俺とナナはイトと合流をした。それから暫くの間楽しく三人で会話をしていた時。イトが思い出したかのように俺にそう質問をしてくる。


「ああ。買えたよ。かなり良い本が買えたよ。イトは?」

 まあ。少し面倒事があったが、それは別に伝える必要はないか。どうせ今から分かることだし。後わざわざ伝えるのも面倒だ。


「はい。私も幾つか欲しかったレシピ本を買えました。これでより美味しい料理をグレン様に作りますね」


「お。それは楽しみだね」


「お料理なら、ナナも手伝うなの」


「あら。じゃあ一緒に作ろうね。ナナちゃん」


「はいなの」


 楽しそうに会話をする二人を見れ俺もなんだか幸せな気分になる。


「あ、それでグレン様、私たちの後をつけている愚か者共をどうしましょうか?」

 やっぱりイトは気が付いてたか。

 まあでもそれは気が付くわな当たり前だ。かなり雑な尾行だからな。


「ナナが処理するなの。浄化魔法・心浄化」

 ナナの心浄化は俺達を尾行していた連中の心を浄化させ。真人間という言葉ですら表せない超真人間になる。


「「「大変申し訳ございませんでした」」」


 超真人間になったので俺たちの前に姿を現して皆が土下座をする。


 うん。ナナの力強すぎるな。

 まあ天魔だし。それはそうか。

 つか周りの通行人がぎょっとしてるな。一応幻覚魔法をかけて見えないようにするか。まあある程度のレベルを持った人には効かないけど、多分大丈夫だろ。


「それで、グレン様こいつらは何なのですか?」


「ああ。それはまあ今から説明されると思うよ」


 俺の言葉通りに、ナナによって超真人間に変えられたストーカー達は俺達に全ての事情を喋りだす。


「私たちは裏ギルドの人間です。この度はとある老紳士から依頼を受けて皆様の後をつけておりました」


「私たちの依頼は尾行と位置情報の報告だけですが。私たち以外の裏ギルドのメンバーも招集されていたので。おそらくは人気のない所に別動隊を使い誘導した後、危害を加える予定だと思います」


「あのう?グレン様、何で?グレン様が尾行されてるのですか?」


 イトの疑問に対して。俺も疑問に思った。

 何故?ここまでするのかと。


 少なくともこの二人がさっき本屋でトラブルを起こした老紳士もとい執事の手の者だというのは確実だ。

 でもたかたが本一冊に裏ギルドの何人、いや何十人と雇って取り返そうとするか?

 それはもちろん貴重な本ではあるが、そこまでの労力に見合う物かという言われれば違うぞ。


「えっと。なんかグレン様が本屋で中古本を巡っておじいちゃんとトラブルを起こしてたなの」

 俺が考え事をしているのを見て、気が利くナナがイトにかなり大雑把な説明をしてくれる。


「説明ありがとうナナちゃん。それにしても中古本を巡ってトラブルですか?・・・え?もしかしてその中古本の中に何か危険な書類とか挟まってたり、実は中身が裏帳簿だったりしませんか?」


 イトに言われて。確かにその可能性は高そうと思う。

 実際俺はまだその本の中身を開いてないわけなのだから。

 というわけで異空間から取り出して本を開く。


 中身は俺の読みたかった本ではなく。イトの言う通りの危険な書類というか、第二王子派閥の国家転覆をはかろうとしている貴族や商会の一覧から、その弱みに国家転覆計画、果ては新たなる天魔であるイトとカレーヌを味方に引き入れる計画や、俺を始末する計画に国王を暗殺するという大胆な計画まで乗っていた。


「あ~これは凄くヤバいですね」


 俺の傍に来て本を除きイトも俺と同じ感想を抱く。


「ナナにも見せて欲しいなの」


「いや、ナナには少し早いかな」

 流石にこんなヤバい代物をナナには見せれない。

 教育的に悪い気がしてしょうがない。


「分かったなの。じゃあ見ないなの」


 ナナが物分かりが良い子で良かった。


「で、この書類どうしますか?グレン様?」


「そうだな。・・・・・・・取り敢えず父上に渡すか。後は一応念の為にこの貴族共にネズミ眷属を付けておくか」


「私もそれが良いと思います」


「ねえねえ。ご主人様、今ご主人様を狙ってる屑どもはどうするなの?」

 ナナに言われて気配察知を行うと裏ギルドの連中だろう奴らがいる。


 おそらくだが尾行につけていたこいつらがいきなり超真人間になって土下座して全部ペラペラ喋りだしたから慌てて来たって感じかな?

 いやでも幻覚魔法をかけてるから、そうじゃないだろうな?あ、もしかして定期連絡でもしてた感じか?それで定期連絡が途絶えたんで事情が変わったと集まったとか?

 もしくは元々全員で包囲した上で最後人気の少ない所で始末する計画だったとか?う~ん分かんね。まあいいや考えても面倒だし。

 取り敢えず全員サクッと簡単に怠惰にさせよ。それが一番楽だ。


「怠惰の権能発動・永遠に殺意よ怠惰となれ。永遠に戦うのが怠惰となれ」

 その瞬間俺たちを狙っていた裏ギルドの連中は全員怠惰となる。


 一応殺意と戦う意欲を怠惰にさせたから。多分これから誰かに殺意を抱くことも出来ないだろうし、戦おうという意欲も怠惰となり湧かなくなると思う。

 少なくとも裏ギルドは廃業だろうな。


 因みに存在そのものを消滅させても良かったが、何となく良心が痛むからやめておいた。

 まあ、こいつらは雇われただけの存在だからな。俺も別にそこまで鬼じゃない。


「さて。本を渡してください」

 俺の目の前に件の老紳士もとい執事が現れた。


 まあうん。こいつ今の状況を理解してないのかな?いや理解してないんだろうな。本当に馬鹿だな。


「ハア、馬鹿だね」

「うん。馬鹿なの」

「確かに馬鹿ですね」


 俺、イト、ナナと考えが一致する。


「馬鹿ですか?ハハハ、馬鹿なのは貴方達の方ですよ。今貴方達の周りを私の手の者が包囲しております。痛い目を見たくなかったら渡した方が身のためですよ」

 滅茶苦茶に勝ち誇ってるけど。うん。全員今怠惰になってその場でぐったりしてるんだよな。


 大体こいつ尾行をしてた二人が土下座してるのに違和感を抱かないのか?馬鹿なのか?あ。幻覚魔法かけてたから気が付いてないのか。

 にしても、こんな行動をとるってことは。元々は人気のない所で始末するつもりだったけど。護衛とかいなかったので全員集めて脅し奪い取るって計画に変更したって感じか。

 まあ俺とナナとイトっていう。弱そうな男に少女に美女っていう組み合わせだからな。そう考えるのも無理はないか。


「なあ。あんた。護衛がいないから侮ってるのか知らんが。俺たちを害そうと思うなら神でも連れてこいよ。それが出来ないなら主の所戻って罪を自白させな」

 まあ、下級神程度だったら多分滅ぼせると思うけど。


「何をふざけたことを言ってるのですか。さあ、早く本を渡しなさい」


 うん。馬鹿だね。一応俺なりの優しさを持っての警告だったのが。それを秒でふいにしたな。


「ハア。ナナ超真人間にしろ」


「分かったなの。浄化魔法・心浄化」


 ナナが魔法を放った効果は抜群だ。


 ダダン


 執事が超真人間になった。


「私はなんて愚かなことを。誠に申し訳ございませんでした」

 華麗に土下座をかます。


「ああ。そういうのはいいから。取り敢えず今までやってきた全ての罪を王城に行ってゲロって来い」


「はい。もちろんでございます」

 執事はそのまま王城に走っていった。


「さて。次の店に行くか」

「はいなの」

「そうですね。グレン様」


―――――――――――――――――――――


 補足説明

 今回出て来た超真人間にされてしまった執事さんは。第二王子派閥のとある伯爵家の執事であり、その伯爵家当主が自室にて本の中身と入れ替えるようにしてバレないように保管していた重要な書類を誤ってとあるメイドが掃除の際に家の中にある図書室に戻し。そしてそれを司書の人が本の数が増えたからということで売るという不幸が重なった結果、本屋に売られることとなった重要な書類を取り戻しにいった感じです。


 因みに本来ならば本屋さん側で本の中身を確認するのですが。その司書の人がかなりの量の本を売りに出したため確認漏れしたという設定です。


 不幸に不幸が重なった結果主人公の元に辿り着いてしまったとという訳です。


――――――――――――――――――


なんとなく土曜日なのでもう一話更新します。


気が向いたらハート、星を頂けると嬉しいです。


――――――――――――――――――


【現実世界にできたダンジョンで気が付いたら最強の死霊神になっていた戦闘狂の話】という作品含め様々な作品を書いております。

もしよろしければそちらもチェックして頂けると嬉しいです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る