第82話・ナナお帰り
イトと一緒にご飯を食べ終わり、魔王殺しの英雄譚を読んでいた時だった。
ナナから念話が来る。
【もうそろそろ帰るなの】
【おう。気を付けて帰れよ】
【分かったなの】
その会話をした数十秒後。
「ただいまなの」
ナナが帰ってきた。
うん早すぎるよ。
もう本当に滅茶苦茶に速すぎるよ。これは流石ナナと言えばいいのか。何というかだな。
まあ、光移動を使ってると思うから。つまり光の速度で帰ってくるってことだ。確かにそれはまあ早いわな。それはそうだ。
「ああ。お帰りナナ。どう楽しかったかい?」
「うん。楽しかったなの」
「それは良かった」
「それで。ご主人様ナナ学園に通いたいなの」
学園か。
これは多分友達も学園に通うことになったんだろうな。洗脳入って子供の為に人生を捧げることとなった司祭とシスターが運営する孤児院だからな。まあそれはそうだよなって話だな。
それに今の聖教国はセリカがトップに立ってるから、これからドンドン国が発展する方向に育ってくだろう。
そうなると子供の育成というのはかなり重要なものの一つとなってくるから、力を入れるだろうし。
それにナナも子供らしく学園に通うってのは俺にとっても嬉しい話だ。
うん。学園いいんじゃないかな。
「もちろんいいとも」
「ありがとうなの」
「それで聖教国の所にある学園に通うのかい?」
「はいなの。マリちゃんと一緒の学校に行くなの」
「そうかそうか。それは楽しそうでええな」
「そうなの。とても楽しそうなの」
「え?じゃあどういう感じになる。寮に入るの?それともここから通うの?」
「う~ん。どうしようか悩んでるなの」
「まあ。そうだよな。普通は寮に入るってのは通いやすくする為、でもナナには光移動があるから、距離なんてのはあってないようなものだからな」
「そうなの。ご主人様とイトお姉ちゃんがいるここもいいなの。でも寮でマリちゃんと一緒に過ごすのも良いなの。悩むなの」
確かにそうだよな。
まあ、でもこればっかりはナナに決めてもらうしかないな。俺が口出すようなことじゃない。
「ナナが思うように決めな。まあでも寮に行きたくなったら行けばいいし、ここにいたかったら居ればいいよ」
「ありがとうなの。ご主人様」
「どういたしまして。俺としてはナナの幸せが一番だからな」
「じゃあ。両方を選ぶなの」
「両方?」
「はいなの。寮も行ってマリちゃんと一緒に過ごしてご主人様に会いたくなったら光移動でここに来るなの」
言われてみればそれが一番理想的だな。
ナナだったら光移動で一瞬で移動できるわけだし。
「そうか。ナナがそう決めたのならそれでいくか」
「ありがとうなの。じゃあ、早速このことをマリちゃんに伝えてくるなの」
そう言ってナナは光移動でマリちゃんの所に向かった。
「ナナが幸せそうで俺としても嬉しい限りだな」
「そうですね。私としても嬉しいですよ」
台所で洗い物をしていたイトがそう言って俺に微笑んでくる。
「そうだな。そういえばナナには俺がイトとカレーヌと結婚をした件伝えったっけ?」
「えっと。多分言ってないと思います」
「あ。やっぱり。じゃあ帰ってきたら教えてあげるか」
「そうですね。まあ多分ナナちゃんは喜んで祝福をしてくると思いますよ」
「ああ。そうだな。俺もそう思うよ」
「にしてナナが学園に通うですか。フフフ。私も通ってみたかったな・・・」
そういえばイトは幼い頃に両親を殺されて。それから復讐の為に傭兵団で過ごしていたな。
確かに学園に通うなんてのはないな。
といっても俺も学園に通ってないけど。いやまあ本来ならば通わなければならないし、一応通っているということになっていて俺の席はあるらしいが。面倒くさがって一度も行ってないけど。
「そうか。じゃあ通うか?イトが望めば多分通えると思うぞ」
年齢考えたらアレだけど。天魔になった影響で20代前半にしか見えないから正体隠せば多分行ける。
「いや何を言ってるんですかグレン様。私の年齢もそうですし。学園に行ったところで私は何を学ぶんですか?」
「勉強とか?戦闘面はむしろ教える側だろうけど」
まあ第一王子と第二王子の剣術指導を行ってるしな。
そう考えると教師としての格は滅茶苦茶に高いやん。
「確かにそうですね。じゃあ臨時教師でもしてみましょうかしら?」
多分イトは冗談まじりで言った気がするが俺はそれを悪くないと思った。
多少面倒には感じるが、イトが臨時教師する日だけは俺も学園に行って、学園という雰囲気を体験してみたいかな。
本でよく学園出てくるから、多少は興味はあったんだよな。
「いいんじゃないか?」
「え?いいんですか?」
「ああ。まあそういう経験をしてもいいだろう」
「じゃあ。やってみましょうかね」
「いいと思うよ。まあ多分イトの方から父上に話をすれば秒でオッケー貰えると思うし」
「確かにそうですね。じゃあそうしてみましょうかね?」
「ああ。日にちが決まったら教えてくれ。せっかくだしその日は俺も行くわ」
「それは張り切らないと駄目ですね」
「いや。そんな張り切らなくてもいいよ。面倒だし」
「フフフ。相変わらずグレン様ですね」
「そうだな」
「戻ってきたなの」
俺とイトとの話が良い感じになってからナナが戻ってくる。
「お帰りナナ」
「ただいまなの」
「お帰りナナちゃん」
「イトお姉ちゃんただいまなの」
「それで、マリちゃんとの話はついた?」
「うん。しっかりと話したなの」
「そうか。それでいつ頃学園に通うつもり?」
「えっと。多分1週間後くらいなの」
1週間とは思った以上に早いな。
今現在聖教国はセリカによって、上層部はほとんどが洗脳もしくは殺され、一人の天魔が行方不明というかなり大変な状況に追い込まれてるから、相当バタバタしてると思うけどな。
まあほぼ全部俺のせいだけど。
「そうか。じゃあ学園が始まるまでに制服やら筆記用具に教科書やら。諸々の準備をしないとな」
「はいなの。準備するなの」
「よしよし。じゃあ明日にでも一緒に買い物に行くか」
「明日ついでに本屋にも行きたいなの」
「そういえば本屋一緒に行くって約束をしていたな。ああ、もちろんいいとも一緒に行こうか」
「では。明日は私も用事はありませんのでご一緒させてもいいですか?」
「当たり前だろイト」
「ありがとうございます。グレン様」
「あ。そういえばナナに一個伝えないといけないことがあったな。俺、イトとカレーヌと結婚したから」
イトと話してて思い出したので。一応ナナに結婚報告をする。
「そうだったなの。おめでとうございますなの」
嬉しそうに手をパチパチさせて祝福してくれるナナ。
滅茶苦茶に可愛い。
ただ。思った以上に軽い反応で流された感じがして少しびっくりだ。いや、もしくは案外俺がイトとカレーヌと結婚するというのを予想していたのかもな。
何だかんだでナナは賢いからな。
「ナナが祝福してくれて嬉しいよ」
「私も嬉しいです」
俺とイトでナナの頭を撫でる。
それを嬉しそうに目を細めてくれるナナを見ていると。ふと顔をあげて俺とイトで目を合わせると、可愛いナナを見て頬を緩ませてる互いの顔に何となく笑いがこみ上げてくるのだった。
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少しでも面白いと思って頂けましたらハートやポイントを入れていただけると嬉しい限りです。
補足説明
光ってもっと早いやろ、ナナ遅すぎん?
答え・一応私の中で光の速度まで一秒もかからずに一気に加速するっていうイメージがわかなかったので、最初数秒ないし10秒程は加速にかかる時間と最後着地する為に減速する時間を考えてこういう時間設定にしました。
といっても本当に数秒、数十秒の差なので特に一切関係はないですが。wwwwwww。
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