第81話・日常こそ至極
【商人の天魔】との諸々が終わった後はいつもの様に部屋に戻ってグウタラゴロゴロ布団の上で惰眠を貪っていた。
「さて。今からどうしようかな。まあさっき読んでた魔王殺しの英雄譚でも読むか」
そう結論を出すと俺は異空間から本を取り出して読み始める。
そのまま俺は本の世界にのめり込んでいく。
・・・・・・・・・
「グレン様。昼ご飯を用意しましたので机の上に置いておきますね」
俺がゴロゴロしながら本を読んでいたらイトにそう言われる。
「いつもありがとうね。イト」
「いえいえそれが私の仕事ですから」
そう言ってイトは部屋の掃除をし始める。
基本的に俺は動かないけど生活してたらごみやほこりは溜まるものである。ただイトがそれを全部綺麗に片付けてくれる。
おかげで俺はいつも綺麗な部屋で過ごせる訳だ。
本当にイト様々だわ。
そうしてイトを眺めていたら、ふと、とあることに気が付く。それはイトがメイド服姿だということだ。
一応俺はイトと結婚した、まあ半ば無理やりだけど、それでも結婚した。なのにいつもと変わらないメイド服だ。
妻にメイド服を着せる夫って中々に変態なんじゃ。それに一応イトって天魔だし。天魔にメイド服を着せるとか異常以外の何物でもないな。
・・・・・・・・・
うん。まあいっか。別にさして気にすることじゃない。そういうのを考える方が面倒だ。
それにイトには何だかんだでメイド服が似合っているからな。
まあ俺が見慣れているからというのはあるかもしれないが。
「そんなに私を見つめてどうしたのですかグレン様」
「うん。いやなんだ。イトはメイド服が似合ってるなと」
「フフフ。そう言ってもらえると嬉しいです」
「さて。じゃあ俺はイトの作ってくれたご飯を頂きますか」
「じゃあ。私も一緒に昼食を取りますかね」
「おう。ええで」
俺はそう言って椅子に座る。
「ありがとうございます」
イトが台所に置いてあった自分の分の昼ご飯を机の上に運んでから俺の向かいに座る。
「こうして二人っきりで一緒にご飯を食べるの久しぶりですね」
「まあ。確かにそうかもな。ここ最近はナナがいたからね」
「そうですね。あ、グレン様せっかくですし、あ~んでもしましょうか?」
「いや。いいよ別に面倒くさい」
「そうですか。じゃあグレン様、私にあ~んしてください」
「いやだよ面倒くさい」
「フフフ。そう言うと思ってました。相変わらずグレン様ですね」
やけに嬉しそうにほほ笑むイト。
今のやり取り楽しいか?という軽い疑問に襲われるも。何となく、俺も頬が緩む。
楽しいと思えて来た。
特に負担も面倒事もなく。ストレスを一切感じない。
そう日常という言葉が凄くしっくり来るそんな感じ。
「日常っていいな」
「確かにそうですね。何だかんだですっとグレン様と一緒にいますからね」
「ああ。そうだな」
ふと。イトと初めてあった日のことを思い出す。
全てに絶望し、自分に嫌悪し、理不尽な処刑という運命を受け入れ一人殻にこもっていたイトを。
それが今や俺の妻となって、天魔となり、復讐も完遂させ、笑顔で俺の身の回り世話をしてくれるようになっている。
「ハハハ。人生ってのは何が起こるか分からないものだな。まさか俺がイトと結婚するとはな」
「まあ。確かに言われてみたらそうですね。私もまさかあの男の子と結婚するとは思ってませんでした」
「そうだな。いやにしても、確かに言われてみればあの時の俺は。というか出会った時は6歳のショタだからな。うん。これで結婚するってなったらイトはショタ好きということじゃないか」
「あ。やっぱりバレてましたか」
・・・・・・・・・
「は?」
「いや。私はショタが好きですよ」
・・・・・・
「は?え?いやマジかよ。まあうん今更な気はするけど、そうだったんだね」
「まあはい。といってもそこまで重度じゃないですよ。精々お世話したいとか依存させたいと思うくらいです。手とかは出しませんよ」
「あ~。なるほどね。それなら良いかもね。いやにしてもお世話に依存って俺じゃないか」
「そうですね。だからグレン様は私の癖てきにも最高でしたよ」
「おうそうか」
「因みに私がこの癖を抱えた理由は父によって殺された弟とグレン様を重ね始めた辺りから目覚めました」
「いや。何その重たい目覚め方、え?もう少し優しい目覚め方しろって。なんかこう、なんだかなぁって感じだよ」
「ハハハ。まあいいんじゃないですか。今はこうしてグレン様と結婚して私としては凄く幸せですし」
「あらそう、それは嬉しいことを言ってくれるね」
ふと俺はイトがショタ好きというのが間違ってるんじゃないかなと思った。
ようはイトは多分罪悪感を感じてるんだと思う。そしてその償いをしてるのだと思う。
イトの過去は一応全て知っている。
だからイトの弟が父親に殺されたのもその経緯も知っている。
そして最後に父親が残した呪いのような言葉も。
だからようはイトは父親に託され、殺された弟と俺を重ねて、俺をお世話することでその約束を果たそうとしたのだろう。
でもその結論に至りたくなかった。だって弟は殺されていて、その罪悪感への贖罪・償いに俺を利用したということになるのだから。
因みに何故そう思ったかというと、俺は今までイトが俺以外のショタに興奮してるのを見たこともないし聞いたこともないのだから。
もし本当にそうならばガッツリ行動を起こしているだろう。
少なくとも俺の性格的にそれをしてても、別にさして何も言わないだろうし、イトもそれを理解してるのだから。
まあ、だからといってそれをイトに言おうとかも思わないし、俺の胸にとどめるけどね。
「どうしたのですかグレン様?」
「いや。別に何でもないよ。さてじゃあご飯を頂こうかな」
「はい。どうぞ召し上がって下さい」
そうして俺はイトと一緒に楽しく幸せに昼ご飯を食べました。
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面白いと思って頂けたら嬉しい限りです。
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