第80話・交渉と脅迫と【詐欺の天魔】
「どうもお久しぶりでございます。グレン様。そしてこの度はご結婚おめでとうございます。どうぞこちらは御祝儀でございます」
【商人の天魔】から白金貨が詰まった大きな袋を渡される。因みには白金貨は一枚で金貨100枚分。普通は国家間の取引や商人同士の取引でしか使わないように非常に高価な貨幣だ。
それがおそらく100枚ほど入ってる袋。まあめちゃくちゃな大金だ。
まあでも、お金はあって困るものではないのでありがたく頂戴する。
「どうもありがとね。さて、じゃあ今から本題を言うわ。ディスラー将軍の所の商会をこの国一番の商会にしろ」
「と申されますと」
「そのまんまだ。ディスラー将軍分かるよな?」
「はい。もちろんでございます」
「そいつの所にある商会をこの国一番の商会にしろ」
「えっとですね。私は商人でございます。流石にそれは私に対してメリットが少なすぎるのでは」
「いや。安心しろ。メリットならある。俺がお前の所の商会を乗っ取らないでやるよ。後は俺がその商会に作る情報屋での最優先権を与えてやる」
「それは凄く魅力的な提案ですね」
「そうだろ。さて。じゃあ今すぐ選べ俺に協力をするか死ぬか」
・・・・・・・・・・
しばらく沈黙が流れる。多分諸々考えてるんだと思う。
まあ、実際我ながら中々に酷いとは思うわ。だってまごうことなき脅迫だもん。脅迫以外の何物でもない。
まあただこの世界強いが正義なんだよな。
そして【商人の天魔】はこの提案に乗る以外の選択肢がない。
だって断る=詰みであり。今この場で世界最強の天魔である俺によって殺されてもおかしくないのだから、おそらく、逃げることも命乞いも出来ずに一瞬で。それが分からない馬鹿ではない。まあまず断らないだろう。
「お断りします」
俺の予想とは違う答えが返ってきた。
かなりの驚きだ。まさか断られるとわ。でも何故だ?ここで断るっていう選択をするほどこいつは馬鹿ではないと思うが。
だって自分の命がかかってるんだぞ。
【旦那様。もしかしたら【商人の天魔】の後ろに何かしらの巨大な勢力が付いてるというのはあり得ますか?】
カレーヌが何かを察知したのか俺に念話で伝えてくる。
【どうした?多分ないと思うがあったとしても、それは英雄連盟っていう、天魔連盟をパクって作った弱い組織だけかな?】
【そうですか。ですがおかしいのです。彼が一滴も汗をかいていないです。そして心拍数も至って普通であり顔色すらも変わってないのです。・・・旦那様、試しに強めの殺気を放ってくれませんか】
【殺気か?いいよ】
俺はカレーヌに何かしらの考えがあるのだろうと思い殺気を放つ。
もちろんかなり強い殺気だ。少なくとも天魔ですら俺に跪くレベルの本気一歩手前の殺気だ。
だけど【商人の天魔】はその殺気を食らっても一切微動だにしなかった。
なるほど。これで確定した。こいつは【商人の天魔】じゃない。多分別の何かだ。
だって俺の殺気だ。それも本気一歩手前の殺気だ。それを戦闘型ではない【商人の天魔】が耐えた?そんなことあるわけがない。
あり得ない。もしそれを耐えれるようだったら、今すぐ戦闘型の天魔に覚醒しろって話だ。
【旦那様もしかしたら人形かもしれません】
【人形?それってどういうことだ?】
【えっとですね。【人形の天魔】の仕業だと思います】
【【人形の天魔】か?ああ。なるほど。何となく理解したよ】
・【人形の天魔】それはありとあらゆる人形を生み出して操る天魔であり、性別・本名・容姿・年齢全てが秘密に包まれた謎の天魔。
俺も一応ネズミ眷属に探らせはしてるけど、
まだ俺もその正体は分かっていない。
だけどなるほど【商人の天魔】側に付き人形作成にいそしんでいたというのならば納得だ。
【それと旦那様、もしかしたら【回避の天魔】も【商人の天魔】陣営についているかもしれません】
【あ~、なるほど確かに言われてみればついてそうだな。いやついててもおかしくない。そう考えると【商人の天魔】は【人形の天魔】と【回避の天魔】を仲間にした。だから俺と敵対しても最悪逃げれると思ってるかな?俺の性格を考えて最後は面倒がって手を出してこないと踏んでるって訳か】
【多分そうだと思います】
【なるほど。なるほど】
「おい。【商人の天魔】いや人形さんよう。あまりふざけたこをするなよ。俺は面倒くさがっても俺の眷属がどれだけいるか知らないだろ。あまりふざけるようだったら、聖教国と俺にその他。【剣舞の天魔】・【察知の天魔】・【忠光の天魔】に更にもう一人天魔が敵に回るぞ」
俺はそう言うと同時に消滅の力を使って目の前にいる人形の四肢を消滅させる。
もちろん人形なので血も出ずにそのままソファーに倒れる。
「・・・まさか。聖教国を支配した謎の天魔とは貴方様のことですか?」
人形だから表情の変化はない筈なのにそこは恐怖の表情が明確に見て取れた。
「まあ。そうだよ。当たり前じゃないか?」
「そうでしたか。どうやら私は読み違えたようですね。私としたことが騙されてらしくないミスをしました」
【商人の天魔】は一応世界一の商人であり今まで様々な交渉を行ってきた相当な切れ者だ。そんな存在を騙すって。不可能に近いぞ。どういうことだ?
「騙された?え?誰に?」
「はい。おそらく【詐欺の天魔】にです」
「【詐欺の天魔】初めて聞いたな」
「私も初めて聞きました」
カレーヌも初めて聞くらしい、まあ俺は初めて聞いた時点で。それはそうだって話だな。
「それもそうだと思います。何故ならつい1か月程前に覚醒した私の部下なのですから」
「なるほど。あれ?でも1か月前やったら俺と出会ってないか」
「はい。その時はまだ私は彼の事を疑っていました」
「ほう。疑ってたね。まあ【詐欺の天魔】やもんなそれは疑うわな」
「ですが、元々私の部下の中で一番優秀で信用出来たので、気が付いたら信用するようになって、更に【回避の天魔】・【人形の天魔】という二人の天魔を見つけ出してこちらの陣営に引き込んだので。これは信用出来るなと」
「あ~。なるほどね。でも実際はいいように操られてたってわけか。因みにその根拠は?」
「根拠ですか。明確なのはないですか。少なくとも私に対して彼は嘘をついていますし、都合の良い情報のみを与えていました」
「それはなんだ?」
「まず一つ目は貴方様が私に敵対心を持ってるという嘘です。二つ目は謎の天魔によって聖教国が乗っ取られ、そして聖教国がその謎の天魔によってより豊かな国になるように運営されてるという情報です」
「一つ目はともかく。二つ目はなるほどだ。ようは俺は面倒くさがるから、聖教国には関わってないと思ったのか」
「はい。その通りでございます」
「なるほど。で?今からどうする?協力してくれるなら【詐欺の天魔】を殺してやるけど?ついでに聖教国での独占権もあげるよ」
「それは私にとってメリットしかない素晴らしい提案ですね」
「まあな。でも別に追加でお前にして欲しいことはないし、そういうのを考えるのも面倒だし。これでいいんだよ」
「そうですか。・・・・・・分かりました。ではお願いします」
「ああ。請け負った」
「あのう。旦那様、言いにくいのですが不可能じゃないでしょうか?」
「どうしたカレーヌいきなりそんなことを言い出して」
「だって。【詐欺の天魔】の元には【回避の天魔】がいるのでしょ。そんなもの逃げられるに決まってますよ」
「ああ、確かに言われてみたらそうだな。というわけで【詐欺の天魔】を殺すってのは無理だ」
俺のその言葉に慌てる【商人の天魔】。
まあ、人形なんだけど。
「じゃあ。私はどうすればいいのですか?」
「知らん」
「そ、そんなこと言われましても。ここままじゃあ私は殺される・・・・・・あれ?」
俺もとある事実に気が付く。多分カレーヌも気が付いてると思う。
「違和感に気が付いただろ。そうだよ。別に今のままでいいと思うよ。少なくともお前が殺されることはないと思う」
「そうですね。確かに自分で言うのもアレですが一応、化け物といって差し支えない再生能力と魔力・身体能力に各種技能に状態異常無効の力を持っていますから」
「だろ。そんなお前を殺すってなったら、戦闘型の天魔を連れてこなければならない。そんなの無理だろ」
「そうですね。それに【人形の天魔】の方はこちら側に寝返らせることも可能ですし」
「そうか。まあというわけで頑張れ。あ、ディスラー将軍の商会を一番にするの忘れるなよ」
「はい。もちろんでございます。では私は元の体に戻らせていただきます」
「何かあったらネズミ眷属に伝えろよ。俺は面倒だから行かなくても眷属を派遣してやるから」
「それは凄くありがたいです。ではまた」
そうして元の体に戻ってた瞬間に人形も灰になって消えた。
「さて。これで放置しておけばディスラー将軍の所の商会がこの国の経済を牛耳るだろうな。にしても【詐欺の天魔】かなんか凄く面倒そうなのが来たな。まあ面倒だったら殺せばいいか」
――――――――――――――――――
補足説明
ようは【人形の天魔】の作った人形に【商人の天魔】が買った幽体離脱のスキルで入ったって形です。
なお元の肉体は不動鉄壁という一切動かなくなる代わりに防御力が跳ね上がるスキルを使って守られてます。
因みにわざわざ人形で来た理由は敵対心を抱かれてると【詐欺の天魔】から教えてもらってたから下手に行って自分が殺されるのを防ぐためです。
―――――――――――――――――――
週刊総合43位にいたので嬉しくてもう一話投稿。
やっぱり人気が出ると嬉しくなって投稿しようって思いになるわ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます