第78話・将軍が眷属になったよ。やったね!

「なあ?配下ってどういうことだ?」


「そのまんまの意味だ。俺の直感が貴方様に、第五王子様に仕えろと言っているのだ。だから俺を部下にしてくれ」


 ちょっと何を言ってるのか分からないのだが?


 え?直感がそう言ってるって?は?マジで何を言ってるのか分からないのだが?


「いや。マジでそんなこと言われても困るんだが。大体仕えるべき主を直感で判断するなよ」


 まあ、俺はよく直感で判断するから滅茶苦茶人の事棚に上げてるけど。あげ過ぎて棚の上で寝てるくらいあげてるけど。


「自慢じゃないが。俺は今まで直感に頼って生きて来た。俺は周りから指揮能力に優れていると言われてるが断じて違う。俺の指揮能力自体は平凡だ。せいぜい一流ぐらいがいい所だ。だけどその時々自分の直感に従って動くことで成功を収めてるだけだ」


 余りにも曇りのない眼で堂々とそう言われた。

 一応念の為に噓感知を使うが本当と出る。


 つまり本当にそういうことなのだ。そして一つ疑問が浮かぶ。これ直感が英雄クラスじゃね?


「それと。俺は英雄クラスに強いとヤマダ王国において最も天魔に近い男と言われてるが。俺はそこまで強くない。ただ戦いの最中に自分の直感に従って体を動かしてるだけだ。技術だけならせいぜい準英雄クラスがいい所だ」


 当たり前だがこれも本当と出た。

 俺の中に疑問が確信に変わった。


 うん。多分これワンチャン【直感の天魔】とかに覚醒できるような素質を持ってるやん。


 いや~なるほど、まさかまさかですな。

 でもまあ納得は出来るかな。にしてもここまで直感に優れてるし、ヤマダ王国においても最も天魔に近い男ってのはある意味当たってるな。


「なるほどね。じゃあ俺がお前の忠誠を貰ってメリットは何がある?」


 人間当たり前だがメリットが動かなきゃダメだ。それが恩義だったり同情や哀れみだったりしても。結局は自己満足だったり承認欲求だったりが、まあ一応俺の中でディスラー将軍を配下にする。いや眷属にした時に手に入るメリットは5つほど思い浮かんだけどね。


 正味眷属にしてもいいと思ってる。


 ただデメリットもいくつかあるけどね。だから少しまだ悩んでるって感じだ。


「メリットか。それは俺ではなく第五王子様の方が分かっているのでは?」


「ハハハ、確かにそうだな。それも直感か?」


「ああ、直感だ」


「いいね。いいね。そこまで強い直感って、もうそれは未来予測に近いレベルだな。いやこれが天魔になればもはや未来予測か。オッケー、じゃあ、お前は俺に永遠の忠誠を誓えるか?」


 俺は天魔レベルのかなり強い殺気を充ててみる。

 正味、これに耐えられないようだったらそれまで、精神力が弱いということだ、眷属にする価値はない。だけどこれに耐えてその上で俺に忠誠を誓えるというのならば眷属にしようではないか。

 俺のグウタラ生活の為にもな。使える手駒はいくつあっても困らない。


「く。う~~~~~~。ハッ」


 俺の殺気に一瞬よろめき倒れ掛かったがそれを自力で持ち直し立ち上がった。

 特に気絶とかもせず、漏らしもしてないし血も出てない。


 今から戦闘となっても充分に対応出来そうだな。


「うん。どうやら精神力はかなり強いようだね」


「天上天下唯我独尊」


 いきなりディスラー将軍が跪き俺に向かってそう呟いた。


 しっかし天上天下唯我独尊ってどういう意味だ?この読書家の俺でも始めて聞いたぞ。


「今、第五王子様のお力の一端を感じ、理解しました。この世界において第五王子様が最強であり。何者にも負けない王の中の王。最強の中の最強。天魔の中の天魔でございます」


 熱量が凄いな。いきなり敬語になったし。

 まあでも俺に忠誠を誓ってくれそうな状態にはなったな。


「じゃあ。俺に永遠の忠誠を誓えるか?誓えるのならばお前を天魔にしてやろう」


「ありがとうございます。この私ディスラー・カルマ。貴方様に永遠の忠誠を誓いましょう」


 深々と頭を下げて跪く。

 一応念の為に噓感知を使ったが。しっかりと真実とでる。


「じゃあ手を出せ」


「はい」


「薄皮消滅」


 俺はディスラー将軍の手に上に血を数滴垂らす。


「これを舐めろ。そうしたらお前は新しい天魔となる」


 ・・・・・・・


 一瞬疑ったが、すぐに直感でこれが真実だと理解したのか。手のひらにある血を舐める。


 そしてディスラー将軍は覚醒した。


「これが天魔ですか」


「ああ。そうだな。多分1週間以内に真希。いや天魔連盟創設者が来て二つ名を授けると思うから。それまでに俺の後ろ盾になるってのと、俺にちょっかいをかけようとする貴族共の牽制頼んだぞ」


「分かりました。第五王子様。ではそのように」


「あ。そうだ。治癒魔法・完全治癒」


 俺はディスラー将軍を完全治癒させてあげる。

 何でかって言うと、多分ディスラー将軍は俺がイトとカレーヌと結婚したという報告を念話で聞いて自分の直感に従ってすぐにワイバーンに乗って寝ずにここまで来ただろうからな。


 多分かなり疲労がたまっていると思う。


「ありがとうございます。よく私が疲れていると分かりましたね?」


「まあ。俺も多少直感が働くからな。あ、そうだ。それとお前にやって欲しいことがまだいくつかあった」


「何でございましょうか?」


「まずお前の所の商会をこの国一番の商会にしてやるよ。そして裏から経済的にこの国を支配しろ」


「お言葉ですが。それには【商人の天魔】がいますので難しいかと」


「いや、それは俺の方で話を付けて協力関係を結ばさせるから大丈夫だ」


「なんと。あの【商人の天魔】とも知り合いでしたか。流石でございます」


「まあね。後、情報屋をしろ」


「情報屋ですか?」


「ああ。情報屋だ。この世界は情報が大切だと思うんだよな。そしてお前が築き上げた人脈・伝手・そして後々ネズミ眷属に説明させるが、俺の作ったネズミ眷属情報網を使えばかなり精度の高い情報屋が出来ると思ったわけだ」


「なるほど。分かりました戻ったら妻と話し合いをさせていただきます」


「妻?ああ、そういえばかなりの人数と結婚してたな?ああ。なるほど、理解したわ。ようは直感で才能があると思った女性と結婚してるってことか」


「はい。その通りでございます。ですので。自慢ではありませんが我が妻は全員何かしらの秀でた才能を持っており、様々な分野で活躍を遂げております」


「なるほどね。まあいいや。じゃあそういう訳だからよろしく頼んだよ」


「分かりました。では私はこれで失礼します」


「ああ。じゃあな」


「はい。では」

 ディスラー将軍は応接室から出た。


 これで、俺は新しくディスラー将軍という素晴らしい駒が手に入ったわけだ。

 こうなってくると。裏からこの国を支配して、俺はグウタラ生活を続けるという面白いルートが実現出来そうだな。


 うん。それはそれで素晴らしくいいな。楽でいい。


 でも、何だろうな、最近意外と面倒に感じなくなる時があるんだよな。


 そう具体的には真希の手によって悪魔の書を通じてベリアルの力を俺が取り込んだ時から。

 これはあくまで仮説だけど、怠惰の力が相対的に弱くなって余り怠惰じゃなくなってるのかもな。


 少なくとも本で読む限りは歴代の怠惰の力の保有者は本当にどうしようもないくらい怠惰でグウタラで一歩も動こうとせずに自分の好きなことをするか睡眠を取ってる存在らしいからな。


 俺みたいに面倒、面倒いいつも眷属を作ったり自分で料理を作ったりしてる方がおかしいな。


 まあいっか。そういうのを考えるのも面倒だし。楽に気にせずいきましょう。


 今が幸せなんだから、それでいいじゃないか。


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